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徹底ネタバレ解説!『その女アレックス』あらすじから結末まで!

その女アレックス (文春文庫)

 

おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。

【「BOOK」データベースより】

 

すでに海外では大人気で、満を持して日本語に翻訳された本書。

日本でもいくつもの賞を受賞し、本屋で見かけたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

 

ちなみに本書の受賞歴は以下の通り。

史上初の七冠だそうです。

 

・本屋大賞 翻訳小説部門第一位(本屋大賞)

・週刊文春ミステリーベスト10(文藝春秋)

・このミステリーがすごい!(宝島社)

・「IN☆POCKET」文庫翻訳ミステリー・ベスト10(講談社)

・「ミステリが読みたい!」(早川書房)

・リーヴル・ド・ボッシュ読者大賞(フランス)

・英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞(イギリス)

 

僕は発売から四年が経ち、ようやく手にとることにしたのですが、非常に良いタイミングだったと思います。

というのも、本書はシリーズものなのですが、実は第二作目で、一作目は本書から遅れて日本で発売されたのです。

 

しかも序盤の数十ページで、一作目『悲しみのイレーヌ』の盛大なネタバレが披露されるのです。

作者もまさか二作目から発売されるとは思わなかったでしょう。

 

なので、リアルタイムで読んだ人は本書から『悲しみのイレーヌ』の結末を知ってしまい、せっかくの驚きや感動を半減させてしまったのです。

僕は幸い、購入の段階で気づくことが出来たので、しっかり順番通り読むことが出来ました。

 

これまで数多くのミステリー小説を読んできましたが、本書の衝撃といったら別格でした。

話の行方がいつまでも掴めず、ようやく着地するのかと思いきやもっと大きな問題が立ちはだかり、読者は息つく間もなく物語にのめり込むことになります。

 

一般的な小説よりも一ページに文字が詰め込まれているので、少し読みにくさを感じるかもしれませんが、意外な展開に加えて魅力的な登場人物たちのおかげで、スラスラと読むことが出来ます。

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

監禁

 

非常勤の看護師であるアレックスは自分の魅力を熟知し、それを利用して男を魅了することを楽しんでいました。

ところがある日、夜道で見知らぬ男に殴られ、車でどこかに連れていかれてしまいます。

 

警察もこれに気が付き、カミーユ・ヴェルーヴェンが捜査の指揮をとります。

彼は四年前、妻のイレーヌとまだお腹の中にいた子供を誘拐事件で殺害され、それ以来、誘拐事件からは遠ざかっていました。

 

しかし今回、上司のル・グエンが立ち直る機会としてカミーユを指名し、悪態をつきながらもかつての部下・ルイ、アルマンと共に捜査を始めます。

現場周辺を聞き込みますが、犯人、被害者の特定に繋がる目撃情報は何もなく、捜査は最初から行き詰まります。

 

その頃、アレックスはどこかに閉じ込められていました。

誘拐した男には見覚えがあります。

 

アレックスは服を脱ぐよう指示され、蹂躙されるのかと覚悟します。

ところが男はアレックスを人一人がやっと入る木箱に閉じ込めようとしていました。

 

彼女は一度男の手を逃れて逃走を試みますが、唯一と思われる出口は塞がれていました。

再びアレックスは男に捕えられ、木箱に閉じ込められると、木箱が宙吊りにされます。

 

こんなことをされる覚えのないアレックスはなぜ自分なのかと、男に聞きます。

すると男は『おまえがくたばるのを見たいからだ』と明らかにアレックスを狙った犯行でした。

 

それ以降、男はほとんど部屋にいなくなり、アレックスは次第に衰弱していきます。

いつ殺されるのかという恐怖に耐えながら過ごしているうちに、アレックスは自分を誘拐した男がパスカル・トラリューの父親であることを思い出します。

 

そして、真の恐怖はここからでした。

父親は餌でネズミをおびき寄せると、アレックスを食べさせようと目論みます。

 

アレックスは恐怖と戦いながら、自分に近寄るネズミを退治し、力を振り絞って木箱を破壊。

言う事のきかない体を無理やり動かして自力で脱出します。

 

一方、警察も彼女を連れ去ったバンの持ち主がパスカルの父親・ジャン=ピエール・トラリューだと突き止め、彼の自宅に乗り込みます。

彼は家の中にはいませんでしたが、戻ってきたところを追跡します。

 

バンが止まり、このまま逮捕できると思った瞬間、ジャンは飛び降り自殺をします。

残された携帯には六枚の写真が保存されていて、警察はアレックスがどんな容姿で、どんな窮地に立たされているのかを知ります。

 

 

被害者の正体

 

警察はパスカルが失踪したこと、その前はナタリー・グランジェという女性に夢中だったことを突き止め、この女性がパスカルの失踪に関係し、監禁されている女性だとみて捜査を続けます。

すると失踪していたパスカルの死体が発見されます。

 

彼は何十回も殴られ、喉に高濃度の硫酸を流されていました。

殺害したのはナタリーだと思われ、これまでただの被害者だったアレックスの印象ががらりと変わります。

 

似たような殺人事件が他に二件あり、警察は別の意味でもナタリーを探さなければならず、ついに監禁場所を突き止めます。

ところが、彼女の姿はもうそこにはありませんでした。

 

 

 

連続殺人

 

警察の捜査の結果、ナタリーとは偽名であることが分かります。

またこれまでの三つの殺人と監禁されていた女性が同一人物であることを突き止めますが、そもそも警察は彼女がどこの誰なのかすら知りません。

 

過去の事件を洗って彼女の痕跡を辿りますが、出てくる名前はどれも違うものの偽名で、一向にアレックスに辿り着けません。

一方、脱出したアレックスは一度家に戻って体力の回復を待つと、家を引き払って逃走します。

 

途中、ジャンの死を知り、もう恐れるものはありません。

アレックスは男女問わずこれまでの手口で次々に殺害し、警察はその痕跡を追っていくことになります。

 

しかし、警察は生きたアレックスに辿り着くことはありませんでした。

彼女は目的を達成すると、スイスに行って自分を作り変えようとチューリッヒ行きの航空券を購入し、高飛びするかと思われました。

 

ところが彼女が選んだのは自殺でした。

カミーユたちはすでに亡くなった女性と対面し、ようやく彼女の名前がアレックス・プレヴォだと知ります。

 

 

女の過去

 

警察はアレックスの母親、そして兄のトマ・ヴァスールから彼女について聞きます。

すると、凄まじい彼女の過去が浮かび上がります。

 

警察はアレックスが残した日記をもとに聴取し、トマは認めます。

アレックスは幼い頃からトマにレイプされていました。

 

さらにアレックスの被害者六人は全てトマと関係がありました。

一人を除き、アレックスにその相手をさせていたのです。

 

その一人は女性でしたが、彼女は年下の恋人である被害者の一人にアレックスを紹介し、自分に繋ぎ止めようとしたのです。

しかし、ここで疑問が出てきます。

 

アレックスはどうやって六人の行方を知ることが出来たのか。

警察はトマが彼女に情報を流したのだと考えますが、彼はそれを認めません。

 

一方、母親はこういった事実を知っていたにもかかわらず、見て見ぬふりをしていました。

アレックスはある日、硫酸で生殖器を焼かれた状態で帰ってきますが、病院に行かせて事態の発覚を恐れた准看護師の母親は尿道にだけ応急措置をし、病院に行かずに生きられるようにしました。

 

アレックスが殺人に硫酸を用いたのは、このことが理由になっています。

警察のこれまでの取り調べで、母親やトマの罪は明らかですが、どれも証拠がありません。

 

 

結末

 

そこでカミーユはル・グエンの協力のもと、最終手段に出ます。

アレックスが自殺した日、トマが彼女に呼び出されていたこと、しかし彼女が現れず、宿泊していたホテルにまで足を運んでいたことを突き止め、トマに提示。

 

さらにアレックスは高飛びの準備をしていたことから、自殺ではなく、誰かに殺害されたのだと主張。

警察はその犯人がトマだといい、彼は心底驚きます。

 

さらに彼女の泊まっていたホテルの一室にはトマの指紋、毛髪などが発見され、トマによる犯行だと断定。

しかし、これは冤罪でした。

 

彼はアレックスを殺害などしておらず、ただの自殺です。

しかし、アレックスはこれがトマによる犯行だと誤認されるよう細工をし、警察はそれを知りつつも利用して、トマを逮捕したのです。

 

最後に、この件を担当した判事のヴァスールが『大事なのは真実ではなく正義ですよ』といい、カミーユが頷くのが印象的でした。

彼らは真実を捻じ曲げ、悪であるトマを裁いたのです。

 

彼のこれまでの行いを考えれば、罰を与えられるのは当然です。

しかし、彼がこれから受ける罰は、彼が受けるべきではない罰なのです。

 

このラストは、良くも悪くも印象的でした。

 

またサイドストーリーとして、カミーユは母親の絵を売り払ったはずが、その絵が手元に帰ってきて驚く、というエピソードがあります。

カミーユは、金持ちであるルイが買い戻してくれたのだろうと礼を言いますが、彼は知りませんでした。

 

その後、カミーユはアルマンが吸い殻を寄せ集めて作った煙草を見て、あまりに貧乏な様子から彼が買い戻してくれたのだと知ります。

アルマンはケチで有名ですが、一方でカミーユのことを尊敬し、彼のために大金を惜しまなかったのです。

 

『悲しみのイレーヌ』を読んでいないといまいちピンとこないかもしれませんが、彼らの強い絆がうかがえる素敵なエピソードでした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

結末には賛否両論あると思いますが、二転三転する展開には最後まで驚かされ、新しいミステリーを提示した作品だと思います。

 

映像化の話もあるようなので、今後が楽しみです。

 

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

 

 

次の話はこちら。

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