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徹底ネタバレ解説!『ネクロポリス』あらすじから結末まで!

ネクロポリス 上 (朝日文庫)

 

懐かしい故人と再会できる場所「アナザー・ヒル」。ジュンは文化人類学の研究のために来たが、多くの人々の目的は死者から「血塗れジャック」事件の犯人を聞きだすことだった。ところがジュンの目の前に鳥居に吊るされた死体が現れる。これは何かの警告か。ジュンは犯人捜しに巻き込まれていく―。(上巻)

 

聖地にいる173人全員に殺人容疑が降りかかる。嘘を許さぬ古来の儀式「ガッチ」を経ても犯人は見つからない。途方にくれるジュンの前に、「血塗れジャック」の被害者たちが現れて証言を始めた。真実を知るために、ジュンたちは聖地の地下へ向かうが…。(下巻)

【「BOOK」データベースより】

 

ファンタジー×ミステリー、恩田ワールド全開な作品です。

簡単にいうと、人によって好みが分かれると思います。

 

死者が『お客さん』として現れる場所『アナザー・ヒル』。

お客さんは嘘をつかないため、その証言は裁判の証拠として使えるほどです。

 

またこの時、『血塗れジャック』と名付けられた連続殺人鬼が世間を賑わせていて、多くの人は血塗れジャックに殺害された被害者がお客さんとして現れ、犯人の正体を明かしてくれることを期待していました。

死者が実体をもって現れるという『ファンタジー』と、連続殺人鬼が誰かを推理する『ミステリー』の融合。

 

恩田さんは世界を作るのが上手だなと前から思っていましたが、今回は特にその魅力が発揮されています。

現実にない風習、文化が目の前にあるように感じられ、読者は日本から初めて参加したジュンのように戸惑い、その魅力に次第に惹かれていくのだと思います。

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

アナザー・ヒル

 

物語の舞台となるのは、ファーイースト・ヴィクトリア・アイランド、通称・V.ファー。

一八七〇年代、日本はイギリス統治領となり、前身のヒルズランドが正式にV.ファーになります。

 

第二次世界大戦後、日本は独立しますが、その間に二つの国の文化が混ざり、独自の文化を作り上げていました。

 

東京大学で人類文化学を専攻するジュンイチロウ(以降ジュン)は、親戚という理由で立ち入りを許可され、ヒガン(日本語でいう彼岸)期間中、V.ファーにあるアナザー・ヒルに滞在することになります。

アナザー・ヒルには死者が『お客さん』として実体をもって現れ、訪れる人にはそれぞれ待ち望む人がいます。

 

ジュンは誰に会いたいではなく、この独自の文化に興味があり同行したのでした。

お客さんは嘘をつかず、その証言は裁判の証拠として使えるほどで、お客さんに会った人はその言葉を記録する義務があります。

 

一方、今年のヒガンはいつもと少し違います。

多くの人の関心はある殺人鬼に向けられていました。

 

世間では『血塗れジャック』と呼ばれ、その被害者は五人。

切り裂きジャックと違い、被害者を絞殺した後、わざわざ喉を切り裂いて被害者の体を血で染めることからこう呼ばれています。

 

多くの人は被害者がお客さんとして現れ、血塗れジャックについて証言してくれることを期待していました。

ジュンはオカルトだと信じられずにいましたが、日本とは違う文化に触れることで次第に惹かれていきます。

 

しかし、今年のヒガンはいつもと何かが違っていました。

陸の孤島であるアナザー・ヒルに上陸すると、すぐに一同は異変に気が付きます。

 

運河の入口に鳥居がありますが、なんとそこに全身血塗れの男性がぶらさがっていたのでした。

 

 

境界線上の殺人

 

警察が到着しますが、これまでアナザー・ヒルに警察が介入したことはありません。

死体のぶらさがった鳥居がその境界になっており、内側だとそう簡単に干渉することが出来ません。

 

そこで呼ばれたのが、ラインマンです。

彼らは元々暮らしていた遊牧民と初期の入植者との子孫で、今でも不思議な力を有すると言われ、アナザー・ヒルの中での事件かどうかを判定すると役目を担っています。

 

黒い頭巾のついたマントを羽織った男性のラインマンと黒い大きな犬・クロがやってきて判定し、警察は死体を下ろすと、今分かっていることを明かします。

被害者が死に至った経緯は、血塗れジャックの被害者と酷似していること、そして遺体はちょうど境界線上にあったということです。

 

ラインマンは境界線上でことが起こった時のみ、アナザー・ヒルに入って均衡を保つ義務があるとして、ここに滞在することになります。

一方、警察はアナザー・ヒルに立ち入ることを保留し、代わりにコロンビア大学で社会心理学を研究しているジョナサン・グレイに捜査を一任します。

 

本来であれば自治組織であるユイ(結)の三役が担う役目ですが、第三者による捜査が適任ということでグレイに任されます。

トラブルこそありましたが、今年のヒガンも例年通りに始まるのでした。 

 

 

 

遭遇

 

ヒガンが始まると、みんな静かになります。

お客さんが来やすいよう単独行動が好まれ、特に屋外では会っても必要最低限の会話で済ませないといけないからです。

 

夕方、ジュンは一緒に行動するジミーを中庭で見ましたが、自分の部屋から出てきた彼はずっと寝ていたと証言。

彼には亡くなったとされるテリーという双子の兄がいて、ジュンが見たのはテリーかもしれません。

 

一同は中庭に出ますが、そこで見つけたのは頭が割られて死んでいるリトル・フットという名前の犬でした。

何が起きているか分からず、またテリーとジミーは瓜二つで区別がつかず、ジュンが見たのがどちらなのかはっきりしません。

 

ジミーは違いとして眼鏡をあげ、テリーのは度が入っていないと教えてくれますが、パッと見では分かりません。

そこで合言葉を決め、二人を区別することにしました。

 

その夜、ジュンは部屋にいると、隣に突然、サマンサと名乗る少女が現れます。

彼女の父親はもっと年をとっているけれど、ジュンにそっくりだといい、サマンサはいなくなってしまいます。

 

ジュンは彼女が消えてから、ようやくお客さんだったのだと気が付くのでした。

しかし、この一年間で亡くなった人が掲載されているイヤーブックで確認しても、彼女を見つけることはできませんでした。

 

 

ガッチ

 

翌朝、アナザー・ヒルは騒然としていて、異例となる臨時集会が開かれます。

今朝早く、祈りの城で他殺と思われる死体が発見され、またしても手口が血塗れジャックに酷似しているということで人々の間に動揺が走ります。

 

死体は昨日と同じく、祈りの城の門にぶらさげられていました。

 

またユイの会長・トマスは、警察の介入は阻止したいと言いつつも、犯人をこれ以上野放しにできないということで、ガッチを行うことを決めます。

ガッチとは、ここ四十年は行われていなかった儀式のことをいい、日本の盟神探湯(くがたち)が語源となっています。

 

祈りの城の庭に小さな礼拝堂があり、そこに霊的なものが特に集まるといわれています。

そこには真実の口と呼ばれる手水鉢があり、そこに手を入れた状態で嘘をつくと、アナザー・ヒルの精霊が罰を与え、八つ裂きにされるといわれています。

 

通常であれば子どもは除外されますが、今回はアナザー・ヒルにいる全員が対象です。

決行は今夜ということで、誰もが緊張の中、時間を過ごします。

 

ジュンは一人でいると、クロが何かに警戒していて、そちらに目を向けるとリトル・フットがいました。

リトル・フットはジュンをどこかに案内しようとしていて、ついていくとそこにはジミーがかけているものに酷似した、しかし度の入っていない眼鏡が落ちていました。

 

つまり、テリーのものということになります。

クロに追いついたラインマンは、この眼鏡から邪悪な気配を感じ取っていました。

 

その後、犯人は名乗りを上げることなく、ガッチは予定通り行われます。

ガッチに赴く者は顔を分からないようにする決まりがあり、ジュンは雨合羽を着て臨みます。

 

ジュンが礼拝堂に入るとユイの三役がいて、手水鉢に両手を入れた状態でいくつかの質問を受けます。

すると嘘をついていないにも関わらず、ジュンの体は強く壁にたたきつけられます。

 

殺されると思いますが、途中で見えない力は雨合羽を求めていることに気が付き脱ぐと、雨合羽は爆発して木っ端微塵になります。

そして、血で汚れた軍手が残されました。

 

ジュンではなく、犯人の身に付けていたと思われるこの軍手に反応していたのです。

彼はそんなものをポケットに入れた覚えなどなく、三役もそれが分かるとジュンを解放し、今日のガッチを中止します。

 

ジュンは帰り際、心配する一同に起こったことを説明すると、拾ったものを人のポケットに入れる癖のあるマチアスという少年が入れたのではとの声が上がります。

 

 

見つからない犯人

 

翌日、マチアスに確認すると、確かに彼が入れたものでした。

しかし、彼は自分の家の玄関で拾っただけで、それがどういったものか全く知りませんでした。

 

またマチアスは祈りの城で見つかった死体について、ラインマンが吊るすところを見たと証言。

このことはたちまちの内に人々に伝わり、今夜のガッチでは特例としてラインマンも参加することになります。

 

夜になると、すでにガッチを終えたジュンたちも行方が知りたくて祈りの城に向かいます。

礼拝堂を注目していましたが、昨日のような力がジュンにかかり、気が付くと彼は別の場所にいました。

 

そこはアナザー・ヒルのようでしたが、どこか古めかしいものを感じます。

丘の上には女性が立っていて、それは黒婦人と呼ばれている女性でした。

 

彼女の夫はこれまで五人いて、全員が死亡しています。

人々は彼女が殺害したのではと疑う一方、ヒガンになっても夫は誰一人現れず、誰もが不思議に思っていました。

 

クロが吠えると現実に戻り、ラインマンのガッチは無事終わっていました。

そこに黒婦人が通りかかり、ジュンと目が合います。

 

ジュンは、彼女もまたあの丘に本当にいたのかと思うのでした。

また帰り道、ジュンたちはジミーを見かけますが、眼鏡をかけていないこと、全く知らない笑顔から彼がテリーだと判断。

 

追いかけますが、見失ってしまいます。

結局、全員がガッチをしましたが、犯人は見つかりませんでした。

 

また家に戻ると、ジミーが頭から血を流して倒れていました。

彼はテリーに頭を殴られたといいます。

 

また彼に渡していたテリーの眼鏡は砕けていました。

 

 

向こう

 

翌日、ジュンはグレイに呼ばれて彼の泊まる祈りの城に向かいます。

部外者同士、話に花を咲かせていると、グレイは本題を切り出します。

 

グレイはジュンを連れてきてほしいと黒婦人に頼まれていたのでした。

二人は黒婦人ことメアリ・ウインチェスターに会います。

 

彼女はこれまで一度も亡くなった夫と会っていないことを明かし、それは自分の中に流れる先住民族の血が影響していると教えてくれます。

彼女は不思議な力を有していて、アナザー・ヒルと共鳴し、ジュンが昨日見た丘、『向こう』に行ってしまうのだといいます。

 

また彼女は道が開いた状態で、お客さんは彼女に会おうとしても彼女を通り越し、向こうに行ってしまうのだといいます。

ジュンが思った通り、メアリもまた向こうで彼のことを見ていました。

 

メアリはあの丘を、太古の、始まりの頃のアナザー・ヒルだと説明します。

またアナザー・ヒルとは死者の通過点で、向こうに行く途中の死者をお客さんとして見ることが出来るのだといいます。

 

おそらく、メアリのこれまでの夫は彼女に会おうとして、すでに向こうに行ってしまったのだと思われます。

しかし、今年亡くなった夫であればまだ向こうに行っていないため、会うチャンスがあります。

 

そこでメアリは、ジュンに夫を捕まえ、自分のところまで連れてきてほしいとお願いをします。

一方、メアリは自分の部屋を封印し、夫が自分のもとに来られないようにします。

 

帰り際、ジュンはメアリの話す『向こう』が、十九世紀に書かれた小説『丘の懐に』に登場する場所に似ていることに気が付きます。

当時はただの幻想小説と捉えられていましたが、本当は作者の体験記だったのです。

 

ジュンは『丘の懐に』を読み返し、向こう=ミサーグと書かれている箇所を見つけ、やがてミカドの墓所である御陵(みささぎ)が変化したものであることに気が付きます。

 

 

 

どっち?

 

ここからは下巻。

ジュンはあることをきっかけにジミーのかけている眼鏡に度が入っていないことに気が付生き、ジミーとテリーが入れ替わったのではと疑い、恐怖を覚えます。

 

他の人にこのことを話し、一同は本物のジミーがどこかで倒れているのではと探しにいきます。

すると頭に包帯を巻いたジミーと全く同じ外見の男が走って逃げるのを見つけ、彼は家に入っていきます。

 

家に戻るとジミーが不思議そうに一同を迎え、ちゃんと合言葉にも答えることが出来ました。

では逃げていったのは誰なのか、一同はますますわけが分からなくなってしまいます。

 

そしてその日を最後に、ジミーは姿を消すのでした。

 

 

失踪

 

ジュンのもとを、メアリの五番目の夫、トーマスが訪れます。

彼女の部屋が封印されて入ることが出来ず、ジュンを頼ってきたのでした。

 

祈りの城に向かうとラインマンとクロもいて、城に影がまとわりついていると気にしていました。

そして一同は、影だけが生きたように動いているのを見つけます。

 

それはメアリの部屋に集まっていました。

ジュンはフロントの電話を通じてトーマスを連れてきたことをメアリに伝えますが、彼女は嫌なものが侵入してきそうで怖くて出られないと明かします。

 

一同は彼女の部屋に向かいますが、ドアにはたくさんの影が集まっていて、中からメアリの悲鳴が聞こえます。

斧でドアを破壊して中に入りますが、中は鮮血の海と化し、メアリはどこにもいませんでした。

 

さらに気が付くと、トーマスはいなくなっていました。

そこにグレイが合流し、三人は場所を変えてメアリの行方について話し合います。

 

グレイの推理から、メアリは生きていて、姿をくらませるために一芝居を打った。

そして祈りの城のメイドに扮してトーマスに接触し、向こうに送ったのだろうと三人は考えます。

 

 

戻ってきた被害者

 

ジュンは帰ってこのことを話し、一同は思いついたことを話し合いますが、さらに驚くことが起きます。

これまで姿を現さなかった血塗れジャックの被害者の五人が現れたのです。

 

彼らは血塗れジャックの逮捕に繋がればと、覚えていることを話してくれます。

五人は全員、本の訪問販売のセールスマンに殺害されていましたが、誰も肝心の顔を覚えていませんでした。

 

一同は彼らの話す犯人の人物像からジミーを想像しますが、本当のことは分かりません。

またその夜、家に海の波のようなものが押し寄せ、多くの死者が現れます。

 

彼らは鳥居が壊れているせいで近づけないといい、見ると鳥居は確かに破壊されていました。

彼らはラインマンに月の井戸という言葉を残し、姿を消します。

 

 

月の井戸

 

お客さんが来なくなってしまうかもしれない。

一同は月の井戸を目指します。

 

道中、ジュンはラインマンによく似た女性を見かけます。

彼女は透けていました。

 

すぐに消えてしまいますが、ラインマンの係累であることは明白でした。

一同は月の井戸に着きますが、そこには三役がいて、成人の死体のようなものを井戸に放り込み、何か呪文を唱えていました。

 

三役がいなくなった後、中を確認しようとしますが、引き返してきた三役に気が付かれそうになり、なんとか家まで逃げ帰ります。

ジュンは先ほど見た女性のことをラインマンに話すと、その人は彼の姉であることが判明します。

 

彼女は過去にアナザー・ヒルに行ってそのまま姿を消していました。

さらにジュンたちの親戚で失踪しているケントと同じ日に姿を消していました。

 

 

百物語

 

今年のヒガンはイレギュラーなことが多く、ユイの三役を糾弾するために提灯行列が行われることになりました。

多くの人は三役を非難してやろうと意気込んでいましたが、とある人がお客さんが再び来られるよう何かをするべきだと呼びかけ、ハンドレッド・テールズを行うことになります。

 

日本語でいう百物語のことで、百人が怪談を語ることで願いが叶うのだといいます。

そして翌日の夜、くじで選ばれた百人が次々に怪談を披露します。

 

ところが三人目のマチアスは怪談を用意しておらず、代わりにとガラス壜をみんなに見せます。

中には緑と茶の虹彩を持った、二つの白い眼球が入っていました。

 

ジュンは、ラインマンの姉も彼と同じく緑の茶のオッドアイだと聞いていて、戦慄します。

 

 

グレイの正体

 

ガラス壜について、マチアスは家の隅の納戸から見つけました。

しかし、眼球は二十から三十年前のもので、ラインマンの姉のものではないことが分かりました。

 

その日、ジュンの前にまたしてもサマンサが現れます。

お客さんは来られないはずなのに。

 

ジュンが疑問に思っていると、サマンサはあっちから来たと床を指さします。

そして、父親の名前はジョナサンだといい、ジュンは真実に気が付きます。

 

その夜、食事をとっているとグレイが家を訪れ、ジュンはいいます。

ケント叔父さん、と。

 

彼は死んでおらず、グレイと名前を変えて今日まで生きていたのです。

さらにジュンは、彼がラインマンの姉と関係していることに気が付いていて、ケントは失踪した経緯について説明します。

 

彼は失踪した年、アナザー・ヒルでラインマンの姉・アスナと出会い、恋に落ちます。

二人は一緒になることを反対されると分かっていて、駆け落ちをしました。

 

二人はアメリカに移住すると、サマンサが生まれ、そのまま幸せに暮らすはずでした。

ところがサマンサが生まれ数年が経つと、アスナは里帰りをしたいといい、アスナとサマンサはアナザー・ヒルに行きましたが、そこで姿を消したのでした。

 

ケントにも先祖の力が残っていて、二人が向こうで彷徨っていることを知り、今回、アナザー・ヒルに入ることを決心したのでした。

メアリもまた、同じ場所から帰れなくなっているのではといいます。

 

ケントはみんなの力を借りて二人を連れ戻したいといい、一同のするべきことは決まりました。

しかし、驚くことは他にもありました。

 

その夜、ジュンが目を覚ますとテリーとジミーが彼を見下ろしていました。

彼らこそが血塗れジャックの正体であり、どちらも目が良かったのです。

 

幸い、殺されることはなく、二人は姿を消します。

ジュンは床に血痕を見つけ、その痕を辿っていき、食堂に折り重なった血塗れの死体を見つけます。

 

思わず叫びそうになりますが、ラインマンはいいます。

ここは昨日までいたアナザー・ヒルではなく、あの死体もこの世界で殺された者たちだと。

 

家から外に出ると、外の風景が一変していました。

そこは、ジュンが見た過去の、もしくは異質なアナザー・ヒルでした。

 

しかし、彼らが時間を超えてしまったわけではなく、複数の世界が重なりあっている状態なんだとラインマンはいいます。

ここにはケントも来ていて、舟を調達します。

 

そしてあの丘を目指すために、一度ヒルを出て外から回っていくことにしました。 

 

 

融合

 

道中、今の状態をラインマンは融合と称します。

三人は迂回して祈りの城の礼拝堂に出ます。

 

融合しているのであれば他の人もいるはずだと探しますが、誰の姿もありません。

ジュンはみんな消えてしまったのだと肩を落としますが、二人に励まされ新しく出現した塔に向かいます。

 

途中の祠で、巨大な鳥の遺体を見つけ、ジュンはそれが八咫烏だと気が付きます。

 

塔に着くと、三人は驚愕します。

そこにはアナザー・ヒルにいた人々だけでなく、お客さんまでもが勢揃いしていたのです。

 

メアリとトーマスもいました。

トマスは全てを知っているようで、全員に対して説明を始めます。

 

ユイはここ数年、アナザー・ヒルが変質していることに気が付いて、次期に融合することも予想していました。

しかし、それで何が起きるのかは知りませんでした。

 

現在は道がついた状態だといい、つまり死者が現在、外の世界に出ていける状態にあるのだといいます。

その例として血塗れジャックが挙げられ、彼はこの世に存在しておらず、死者の世界からアナザー・ヒルを通してやって来ていたのでした。

 

つまり、ジミーもテリーもすでに死んでいるのです。

生前、ジミーはテリーを殺害し、そのことをバラされたくなければ協力しろと脅され、テリーは血塗れジャックとして犯罪を重ねます。

 

それはアナザー・ヒルでも同様ですが、ガッチを受けたのはジミーであったため、精霊は反応しなかったのです。

そしてガッチ終了後、テリーはジミーを殺害し、二人ともお客さんになったのでした。

 

鳥居、それから祈りの城に吊るされた死体は、テリーが中世から連れてきた死体で、検視の結果、数百年前の人物であることが判明しています。

ユイは、血塗れジャックがアナザー・ヒルから出ていくことを懸念していたのでした。

 

しかし、融合したことで良いこともありました。

向こうに閉じ込められていたアスナに接触することが出来たのです。

 

ここでケントは、アスナとサマンサと再会。

アスナは通り道をずっと見張っていてくれていたのでした。

 

トマスはいいます。

テリーとジミーは、アスナが追い払ったからこちらに来ることはないと。

 

そして融合は安定し、お客さんが多少現世に来やすくなったくらいで、しばらくはこの状態を維持するだろうと。

アスナはこのまま見張りを続けていかなければいけないため、ケントはサマンサと共にV.ファーに残ることを決断します。

 

またメアリから、あの八咫烏こそが影の正体だと明かされます。

彼女がいなくなったあの時、影は部屋に侵入しましたが、精霊はそれを見逃さず、影を八つ裂きにしていて、部屋にあった血は影のものでした。

 

大騒ぎになるからと八咫烏の死体を見せるわけにはいかず、メアリは死体を引きずって別の部屋に隠れ、三役が死体を処分したのでした。

 

 

結末

 

ようやく平穏を手に入れ、ヒガンの期間も終わりを迎えようとしていた頃。

一同は窓ガラス越しにテリーとジミーの声を聞きます。

 

今は影だけですが、いずれ必ず戻ると宣言し、二人は姿を消します。

一同は戦慄し、しかしアナザー・ヒルは今日もお客さんを待ち続けるのでした。 

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

非常にボリュームのある物語で、ほとんどの部分を省略してしまいました。

 

あの空気感を味わうためにはやはり一読する必要があると思うので、興味を持った方はぜひ自分の目で物語の行く末を確認してください。

 

ネクロポリス 上 (朝日文庫)

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ネクロポリス 下 (朝日文庫)

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