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『人間のように泣いたのか?』ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ)

 

生殖に関する新しい医療技術。キョートで行われる国際会議の席上、ウォーカロン・メーカの連合組織WHITEは、人口増加に資する研究成果を発表しようとしていた。実用化されれば、多くの利権がWHITEにもたらされる。実行委員であるハギリは、発表を阻止するため、武力介入が行われるという情報を得るのだが。すべての生命への慈愛に満ちた予言。知性が導く受容の物語。

【Amazon 商品説明より】

 

Wシリーズの最終巻です。

刊行ペースが早かったせいか完結まであっという間で、なんだか名残惜しい気もします。

 

森さんらしいというか、話の全てが明らかになったわけではありませんが、それでもハギリやウグイの人間らしさが成長しているのが分かり、とても満足のいく内容となりました。

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

国際会議

 

キョートで人工生命と人工知能に関する国際会議が開かれることになり、ハギリは実行委員として奮闘していました。

また、以前に日本であった学会では、バスでの移動中に武装集団に襲われたこともあり、ウグイたち情報局員はより一層警戒して臨みます。

 

今回の会議では、ホワイトの開発チームの一員であるリョウ博士が『子どもが産めるようになる医療処置に関する研究』について発表すると予想され、実用化に向けてウォーカロン・メーカが投資していると予測されます。

前日のレセプションには旧友のシマモトも参加していて、彼もホワイトの発表について知っていました。

 

レセプションの途中、デボラに呼ばれてハギリが外に出ると、コミュータの中で局長のシモダが待っていて、言います。

明日のホワイトの発表は阻止する、と。

 

ハギリはそのセッションの司会を任されているため、知らないふりをしてほしいと事前に頼まれます。

具体的にはメンバーを拘束するということで、ウグイたちには作戦開始五分前まで知らされないのだといいます。

 

ハギリは許可をとり、ウグイにだけ事前に知らせます。

すると、護衛を兼ねてハギリの補佐役であるアカマの交代すると提案し、アカマは当日、何らかの妨害工作によって時間に間に合わないことになります。

 

ハギリは、拘束してもいずれホワイトかフスが発表するのではと疑問に思い、それに対し、イシカワなら発表できる可能性があるとデボラは言います。

 

 

誘拐

 

国際会議当日、アカマは予定通り、遅れることになり、代役をウグイが務めます。

ハギリは緊張しながらその時を待ちますが、打ち合わせの途中で突然、部屋が煙幕で覆われます。

 

ウグイは催眠ガスだといい、二人はそのまま意識を失います、

気がつくと、二人は知らない部屋に閉じこめられていました。

 

やがてドアが開き、姿を現したのは以前と違う体を操るペガサスでした。

部屋を移動し、ペガサスが事情を説明します。

 

ホワイトのメンバーの拘束が目的ですが、それを簡単にしては日本政府の関与を疑われるため、隠れ蓑としてハギリたちを誘拐し、身代金目的だと誤認させようとしていました。

ホワイトが今回開発した技術は偽物のデータに基づいていて、それを流したのはイシカワでした。

 

つまり、前巻でカンナの残したメモリーチップには、有効なデータはなかったことになります。

そして、この不正が正されない間に、フスがイシカワを吸収する可能性が浮上し、将来の失敗をイシカワの責任にされるという演算結果が出たため、今回のような強硬手段に出たのだといいます。

 

数日内には解放されるということで、ハギリたちはしばらく監禁されたままになります。

 

 

 

逃走

 

しかし、ペガサスの話がどうにも信じられず、二人は脱出することにします。

 

地下から地上に出ると、そこはキョートでした。

見つからないようネットを切り、二人はカプセルホテルのような狭い個室に移動します。

 

どうにか情報局に連絡がとれないかと考えていると、ハギリは同じホテルにアカマが泊っていることを知り、声を掛けます。

アカマはハギリたちが行方不明になっていると思っていたので驚き、ハギリの自室でウグイも交えて今後のことを話します。

 

アカマはなぜここにいるのか言いたくないようなので、お互い余計な詮索はしません。

ウグイは現在位置、連絡方法、次の暗号のコードを意味する乱数をアカマに託し、彼の端末から送ってもらうようお願いします。

 

救援を待つ間、二人は出会った頃から今に至るまでのあらゆることを話します。

その中で、ハギリは本能に任せるのではなく、理性や知性で修正していくことこそが人間らしい能力なのだと話し、ウグイは物事をきちんと考える彼の話に感動し、涙を流すのでした。

 

 

戦闘

 

アカマと別れて一時間以上が経った頃、キガタとアネバネが合流。

外から敵が狙っているということで、警戒しながら呼んだコミュータに乗り込もうとします。

 

しかし次の瞬間爆音が鳴り響きます。

それは、飛行体からのレーザーによる攻撃でした。

 

一旦建物の地下に逃げ込みますが、地下でも襲撃にあいます。

ウォーカロンの警官で、敵のトランスファにコントロールされています。

 

それをウグイたちは制圧し、地下のトンネルからさらに移動します。

デボラが助けに入りませんが、トランスファ同士で電子戦が行われているようです。

 

その後、駅に到着し、敵の追跡を振り切って列車に乗り込みます。

ハギリの命を狙っている飛行体は、ドルニエと呼ばれるものでした。

 

このままでは狙われてしまうため、列車のブレーキを作動させて止めると、降りてさらに逃げます。

今度は船で移動し、チューブを目指してリキューに向かいます。

 

道中、この争いの敵は、ホワイトやフスではなく、ヴォッシュが追っている反世界勢力だと推測。

狙いは、これまで数々の人工知能と触れ合い、驚くべき功績を上げてきたハギリの殺害です。

 

その後、バイクで移動すると、リキューに到着。

情報局からはここで食事をとるよう指示があり、四人は席に着きます。

 

そこに現れたのは、オーロラとマガタ・シキでした。

マガタは、ハギリが狙われたのはとばっちりだといいます。

 

そして、オーロラが収拾にあたっていて、まもなく正常化すると。

オーロラいわく、ハギリの突拍子もない行動が、結果としてピンチを脱する決め手となったようです。

 

今回の争いは、AサイドとBサイド(反世界勢力)との争いで、アミラとオーロラは早期に中立を宣言。

Bサイドにはベルベットやクリスティナが加わっていました。

 

デボラはアミラ同様、今回の争いに加わらない協定を結んでいました。

ハギリが狙われたことについて、オーロラとの共著論文が引き金となり、自分たちに多大な損害を与えると反世界勢力は判断したそうです。

 

そのため、情報局には偽装作戦が伝えられ、ホワイトのメンバーを拉致するという作戦としてカモフラージュされていたのでした。

デボラが沈黙していたのは、ハギリとコンタクトをとることでBサイドに誤解を招く恐れがあったからです。

 

オーロラは今回の争いについて、未熟ゆえの子どものやり取りのような争いだといいます。

ハギリは今回の事態についてマガタに聞きますが、彼女は何も予測していなかったといいます。

 

その後、他愛もない話をマガタは楽しみ、先に退席するのでした。

 

 

結末

 

今回の事件を受けて、シモダは責任をとって交替になる可能性が濃厚でした。

またアカマについて、デボラが彼の知り合いを装ってあの建物に誘ったのだといいます。

 

その後、ヴォッシュから連絡が入り、国際会議ではホワイトから予定通りの発表があったこと、そしてそれは織り込み済みで、そこまで衝撃を与えなかったことが分かりました。

そして最後に、ウグイに頼んだよと言いますが、何のことを指しているのかは二人とも分かりませんでした。

 

日常に戻ったハギリですが、今回の一件以降、ウグイに対して恋のような感情を自覚します。

時間があったのでカウンセリングを受けにいくと、先生は同じ症状の患者を紹介しようかと打診します。

 

その相手とは、ウグイでした。

彼女もまた、夜に好きな人のことを考えて眠れないのだといいます。 

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

ここまで人工知能や人工生命といった未来のことを扱ってきて、最後になんとも人間らしい結末が待っていて、思わずにやついてしまいました。

 

どれだけ環境が変わっても、人間はやはり人間なのかもしれません。

 

人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ)

人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ)