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徹底ネタバレ解説!『神様ゲーム』あらすじから結末まで!

神様ゲーム (講談社文庫)

 

神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか、謎の転校生・鈴木太郎が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか。神様シリーズ第一作。

【「BOOK」データベースより】

 

『神様』シリーズの一作目となる本書。

可愛らしい表紙とは裏腹に、結末はけっこう後味が悪いです。

 

心理的にもそうですが、事件の真相が明確にされず、結論は読者に委ねられます。

おそらく本書の情報だけでは、確定できないようにうまいバランスで構成されています。

 

人によっては納得いかないこともありますが、僕はけっこう楽しめました。

理不尽というか、麻耶さんらしさがよく出ていたと思います。

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。


 

 

 

 

猫殺し

 

芳雄は十歳の誕生日を迎えたばかりの小学生ですが、いつも誕生日ケーキのロウソクが一本だけ吹き消せないことにモヤモヤしていました。

そんな彼の住む街では、四匹の猫が立て続けに起こる事件が起きていて、四匹目の猫は芳雄のクラスメイトで片思いの相手、ミチルの可愛がる野良猫のハイジでした。

 

芳雄は警察官である父親に捜査の進捗を聞きますが、父親は担当ではないため、あまり把握していません。

 

 

同級生は神様

 

ある日、芳雄はトイレ掃除の当番でクラスメイトの鈴木太郎と一緒になります。

特徴がなく、無口な鈴木ですが、突然、自分が神様だと言い出します。

 

芳雄は当然疑い、鈴木は誰も知るはずのない宇宙のことを話しますが、芳雄にはそれが正しいのか分からないので判断のしようがありません。

そこで身近なことについていくつか質問すると、鈴木からすぐ答えが帰ってきます。

 

今年赴任してきた若い女性教師が、同じ小学校の既婚の男性教師と不倫していること。

芳雄は三十六歳の時、飛行機事故で亡くなること。

 

それから、芳雄は両親の本当の子どもではないこと。

鈴木がいうには、芳雄の本当の誕生日は七月二十五日ということです。

 

芳雄にはどれも信じられませんが、一方で、毎年ロウソクが一本消え残るのは、まだ誕生日を迎えていないからではないかとも考えます。

結論は出ず、最後に猫殺しの犯人について聞きます。

 

すると、鈴木は秋屋甲斐という大学生が犯人だと言いますが、芳雄はその人物のことを知りませんでした。

 

 

猫殺しの犯人

 

芳雄が住む浜田町には『神降山の鬼婆屋敷』と呼ばれる誰も住まない一軒家が山奥にあり、誰も近寄ろうとしません。

入口には番号錠がつけられていますが、芳雄の友人である俊也が偶然開けることに成功し、以後、そこは芳雄たちが結成した『浜田探偵団』の本部となります。

 

芳雄、俊也の他に、同じく浜田町に住む孝志、ミチル、聡美の計五人がメンバーです。

放課後、本部に集まると、話題は猫殺し事件になります。

 

五人は犯人らしき不審人物の目撃情報を口々にしますが、そこで芳雄は鈴木に言われたことを思い出します。

神様に聞いた、とも言えないので、クラスメイトが見たということで秋屋の名前を出すと、他の四人はすっかり彼が犯人だと思い込みます。

 

さらに、聡美の従兄がアパートを経営していて、そこに問題行動が多くて困っている大学生がいて、その大学生の名前が秋屋だと判明。

そこで孝志は、不審人物を目撃した同級生の敏史に秋屋を見せ、一致するか確認しようと提案。

 

かくして五人は敏史を連れて聡美の従兄、光一のアパートをたずね、事情を説明。

秋屋の帰宅を待つことに。

 

そこに秋屋が帰宅し、敏史は顔を確認しますが、はっきり覚えていないから同じ人物か分からないと煮えきりません。

光一は、そもそもなぜ秋屋を疑うのかと疑問を口にしますが、すぐにあることに気が付きます。

 

これまでに殺害後にされた四匹の猫は、特徴的な格好で発見されていて、それぞれがアルファベットを現していました。

繋げると『AKIY』となり、秋屋が自分の犯行だと示すためにわざと残したと推理。

 

もちろんこれだけの物証で秋屋が犯人だと決めつけるわけにはいきませんが、今度は孝志がハイジの形見である鈴を思い出します。

これを光一がアパート前で拾ったことにして、今の推理を警察に伝えて秋屋が怪しいと思わせられないかと。

 

真実のでっち上げということもあり、光一は難色を示しますが、今回の事件で一番心を痛めているミチルのお願いもあり、これを了承。

一方、自分から言い出したこととはいえ、芳雄には疑問が残るのでした。


 

 

ケンカと永遠の別れ

 

芳雄は学校に登校すると、鈴木に秋屋のことについてさらに聞きます。

動機などを聞いても真偽は分かりませんが、鈴木はさらに芳雄たちの間で話題のアニメ『ダビレンジャー』の今後の展開を披露します。

 

芳雄は秋屋の犯行を非難し、罰を求めます。

すると、鈴木は天誅を下してもいいと提案。

 

芳雄はもし、来週になっても犯人が捕まらなければ、天誅を下してほしいとお願いし、鈴木はこれを了承します。

放課後、芳雄の親友である英樹は、探偵団の様子から猫殺し事件に進展があったことを察し、詳細を芳雄に聞きますが、芳雄は探偵団以外の人間に漏らすことは出来ないとこれを拒否。

 

その態度に英樹は怒り、以後、口をきいてくれなくなってしまいます。

そして、その週の木曜日、英樹はダビレンジャーのスペシャルTシャツを着て登校します。

 

それは応募でしか手に入らない限定品で、みんなからの注目を集めます。

また、その日はミチルが欠席でしたが、両親が共働きの彼女が学校をサボることは珍しくありませんでした。

 

放課後、家に帰った芳雄のもとに孝志から電話が入り、本部に来るよう言われます。

俊也が英樹を見つけ、本部の場所がバレた可能性があるのだといいます。

 

本部前に着くと、孝志と俊也が待っていました。

俊也は本部に向かう県道を下りてくる同い年くらいの人物を見つけ、顔こそ見ていませんが、ダビレンジャーのスペシャルTシャツを来ていたことから英樹で間違いないといいます。

 

さらに本部の入口の番号錠は外れ、脇には英樹の手提げカバンが立て掛けられてありました。

俊也はこれを発見してから、孝志が来るまでここを離れておらず、また他の道はないため、俊也がここに戻ってきたとは考えられません。

 

鬼婆でも見つけて、怖くなってカバンを置いて逃げたのか。

理由が分かりません。

 

そこに聡美とミチルが合流。

予想通り、ミチルはサボりでした。

 

なかに入って開かずの間を調べますが、誰もいません。

もう誰も隠れていないのではと思った瞬間、孝志は裏口の掛け金が外側から掛かっているのを見つけます。

 

外側の掛け金は外側からしか掛けることが出来ません。

さらに裏庭の残り三方向は塀で囲われ、大人でも侵入することは出来ません。

 

つまり、裏庭には誰かがいることになります。

一同は最初、探偵団に入りたいとしつこかった上級生の須之内ではと疑い、それから秋屋が潜んでいるのではと推測。

 

それなら、英樹が逃げ出したことにも説明がつきます。

五人は決心し、ドアに体当たりをすると掛け金が外れ、開きます。

 

しかし、裏庭には誰もいません。

一方、重石が乗せてあった古井戸の蓋が下を向けて伏せられていて、古井戸の中が見えます。

 

そこには、水面から顔を出す英樹の死体がありました。

一同はミチルの悲鳴を契機に本部の外まで逃げ出します。

 

警察に知らせようとしますが、ミチルが芳雄の父親が警察官であることを思い出し、知っている人に話した方が話が通じるということで、芳雄は父親に電話をかけます。

芳雄が事情を説明すると、英樹が本当に死んでいるのかもう一度確認するよう指示されます。

 

改めて古井戸に向かうと、孝志が英樹の脈を確認しますが、やはりすでに死んでいました。

本部の前に戻ると、そのことを父親に伝え、数分してから父親が到着。

 

改めて状況を確認します。

古井戸から英樹を引き上げると、彼は学校で見たのと同じ、ダビレンジャーのスペシャルTシャツを着ていました。

 

裏庭には物置があり、犯人が隠れていないかと父親が見ますが、床には埃が積もっていて、人が隠れた痕跡はありません。

つまり犯人は消えたことになり、そうすると英樹が自分で井戸に落ち、頭を打って死んだという可能性も出てきます。

 

また父親は俊也に対し、英樹を目撃したことが勘違い、もしくは本部にたどり着く別の道があり、やはり英樹が俊也より先に本部に着いたのではと指摘。

結局、鑑識の捜査を待つしかありません。

 

 

調査

 

事件の数日後、英樹の敵討ちを決めた芳雄は孝志の家を訪れます。

そこにはミチルと聡美もいて、芳雄は調査をしたいことを伝えますが、孝志は危険だと反対します。

 

その時、ミチルだけが協力してくれると言ってくれ、二人はもう一度本部に向かいます。

物置を調べますが、鑑識の足跡などで犯人の痕跡を見つけることはできません。

 

一方、椅子を置いてそこに乗れば痕跡が残らないのではと試しますが、スペース的に出来そうにありません。

裏庭に戻ると、芳雄は違和感に気が付きます。

 

英樹の死体発見時、井戸の蓋は底を上にして地面に伏せてありましたが、今は逆に底が地面についています。

芳雄は蓋を逆にしてみると、出来た隙間に隠れられることが分かりました。

 

しかし、隙間は狭いため、巨体の孝志がギリギリで、大人はまず隠れられません。

そうなると、もしここに隠れらていたなら、犯人は子どもということになります。


 

 

天誅

 

一学期の終業式の日、芳雄は英樹殺害について鈴木に聞きます。

すると、やはり英樹は自分で井戸に落ちたのではなく、別の場所で殺害され、井戸に投げ込まれたのだといいます。

 

そして、犯人は子ども。

しかし、須之内は違うといいます。

 

そこで芳雄は秋屋の代わりに、その犯人に天誅を下してほしいと依頼。

すると放課後、ミチルと聡美が校舎から出てくる時、校舎の天辺にある大時計の長針が外れて落下し、下にいたミチルを貫きます。

 

本当に天誅が下り、犯人はミチルということになります。

芳雄はミチルが死ぬのを見て、意識を失うのでした。

 

 

真相と結末

 

芳雄が病院で目を覚ますと、心配そうに母親が見つめていました。

時計の長針が外れたのは事故で、業者の点検が手抜きだったのではと大騒ぎになっています。

 

しかし、芳雄は知っています。

あれは天誅だったのだと。

 

芳雄は母親に、自分は両親の本当の子どもなのかと聞きます。

母親は本当の子どもだといいますが、怒った顔には狼狽が見られ、やはり鈴木がいうように、芳雄は両親の子どもではないことが分かります。

 

そうすると、やはりミチルが英樹を殺害した犯人だということになります。

しかし、ミチルが英樹を殺害する動機が見当たりません。

 

翌日、孝志と光一がお見舞いに来てくれ、秋屋が逮捕されたことを教えてくれます。

芳雄は改めて今回の事件の真相について考えると、孝志は気になる点を挙げます。

 

事件の日、英樹は帽子をかぶっていました。

ところが死体発見時、井戸の近くに帽子はありませんでしたが、生死を確認するために戻った時、そこに帽子があったのだといいます。

 

光一の推理はこうです。

死体発見時、英樹は裸で、その後に誰かが服を着せた。

 

つまり、俊也が見掛けた英樹は、彼の服を着た別人だと。

その夜中、ふと芳雄は目を覚まし、事件について考えます。

 

おそらく俊也が目撃したのは、英樹の服を着たミチルです。

ミチルは髪が短く、英樹は男しては髪が長いため、見間違えても仕方ありません。

 

そこからさらに考え、芳雄は真実にたどり着きます。

しかし、気付かなければ良かったと後悔し、再び寝ます。

 

翌朝、ダビレンジャーはなぜか総集編が流れ、そこに鈴木が現れます。

彼がいうには、ダビレンジャーのうち二人が飲酒運転とひき逃げで逮捕されたからだといいます。

 

芳雄は事件について、ミチルの他に共犯者がいると口にすると、鈴木はあっさりと肯定。

すると、芳雄は共犯者にも天誅を下してほしいと依頼し、鈴木もそれを了承します。

 

そして、英樹殺害の動機について聞くと、鈴木は答えてくれます。

エッチの現場を目撃されたからだと。

 

ミチルは日頃から本部で共犯者とエッチなことをしていて、あの日、英樹はその現場を目撃。

逃げますが、ミチルは彼に襲い掛かり、英樹は土間に頭を強打して死亡。

 

さらに頭を打ち付けたことで英樹は鼻血を出し、ミチルの洋服が汚れてしまいます。

そこでミチルは英樹の洋服を着て下山しますが、そこを俊也に目撃されてしまったのです。

 

ミチルは家に戻ると、英樹の短パンの上から長いスカートを履いて誤魔化し、Tシャツも腰に巻き付けてみんなと合流します。

普通であれば、学校にいる時と服が違うことに気が付かれてしまいますが、その日、ミチルは学校をサボっていたため、誰にも気が付かれずに済んだのです。

 

鈴木は芳雄に別れを告げ、もう会うことはありません。

退院すると、芳雄は両親にケーキをねだり、ロウソクも灯してもらいます。

 

今日は、鈴木から教えられた芳雄の本当の誕生日だったからです。

内心で自分の誕生日を祝いながら、芳雄は事件について考えます。

 

あの日、裏口を開けようとした時、最後に入ってきたのはミチルで、彼女はその間にスカートに隠していた英樹の衣服をソファーの裏にでも隠します。

その後、英樹の死体が発見器されると悲鳴を上げて逃げ出し、みんなを裏庭から遠ざけます。

 

その間に裏庭の物置に隠れていた共犯者は英樹を服を受け取り、彼に着せます。

井戸の蓋を開けておいたのは、そちらに注目させて物置を探させないためです。

 

さらにミチルは芳雄の父親に電話するよう提案しますが、これもわざとで、共犯者とは父親のことです。

父親は裏庭で電話に出て、英樹の死体をもう一度確認するよう指示し、服を着ていることを確認させます。

 

またその間は開かずの間に隠れ、芳雄たちが裏庭に入ると脱出。

外から来たように見せかけます。

 

また物置を調べたことに関して、そこには父親の足跡が残されていたため、調べることを口実にその跡を消したかったのです。

そして本部の中に入りますが、これで中から父親の髪の毛などが見つかってもなんの不思議もありません。

 

芳雄は、自分が両親の本当の子どもではないことを思いながら、ロウソクの火を消そうと息を吹き掛けます。

すると、息に流された火が移動し、向かいにいた母親を燃やします。

 

父親が慌てる中、芳雄は思います。

これが天誅であり、神様は間違えないことを。

 

 

考察

 

結末について、文庫版の解説にて森川さんは、鈴木が神様で言っていることが真である場合、推理に組み込むことが出来ると言及。

つまり、そもそも鈴木が神様であるという前提条件が偽だった場合、それまでの推理は覆ることになります。

 

しかし残念ながら、鈴木が神様かどうかについて判断する材料はありません。

後は読者がどう思うかだけです。

 

そこでここでは、二つのパターンそれぞれについて考察したいと思います。

 

 

①鈴木が神様だった場合

 

彼の言っていること、行っていることは正しいということになり、ミチルの共犯者は母親ということになります。

では、母親はどこに隠れていたのか。

 

それは、井戸の蓋の隙間です。

芳雄は、子どもくらいのサイズであれば可能だと証明しています。

 

また序盤で、母親が小さいと言及されているので、有り得ないことではありません。

しかし、孝志ですらギリギリ隠れられるくらいのサイズなので、母親は相当小さいことになります。

 

ただし、この事実を本書にある内容から読み取るのは不可能であり、鈴木が神様であることが真だった場合、初めて成り立ちます。

 

 

②鈴木が神様ではなかった場合

 

これまでの天誅はただの偶然ということで片付き、父親が犯人ということになります。

子どもであれば井戸の蓋に隠れることが出来るため、須之内が共犯者という考え方もありますが、本部の場所は誰にも知られていないということになっています。

 

仮に知っているとしたら、五人がいる時に乗り込んでくるはずで、もしあの日に初めて訪れたなら、ここまでの犯行が出来るだけの余裕はないと考えられます。

また、鈴木が知らないはずのことを知っていたことについても、彼は神様ではないので、どこかで調べてきたと考えるしかありません。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

子どもにも読みやすいような文章から繰り出される不条理な結末。

 

モヤモヤする人もいるかもしれませんが、そこを突き詰めて落とし所をつくるというのも一つのミステリーの楽しみ方だと思うので、この考察が参考になれば幸いです。

 

神様ゲーム (講談社文庫)

神様ゲーム (講談社文庫)