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徹底ネタバレ解説!『十角館の殺人』あらすじから結末まで!

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

【「BOOK」データベースより】

 

綾辻行人さんのデビュー作であり、日本ミステリー史上の傑作の一つにも挙げられるほど高い評価を得ています。

これまでのミステリーの流れを踏襲しつつも、綾辻さん特有の世界観があり、ミステリー好きであればすぐにその虜になってしまうはずです。

 

本書を含めてこの一連の作品は『館シリーズ』と呼ばれ、素人探偵・島田潔と建築家・中村青司が建築に関わった奇妙な建物が登場しますので、本書を気に入ったという人には全て読むことをお勧めします。

また本書はとある一行によってそれまでのことを覆す大どんでん返しが待っていて、最大の見所といえます。

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

プロローグ

 

これから殺人に手を染めようとする犯人による独白。

その人物は復讐のために複数の人間を殺害することを決意する一方、透明のガラス壜に何枚かの紙片を入れ、海に放り投げます。

 

そこには、犯人がこれから計画している事件の全貌が全て書かれています。

その人物は、自分の行いが正しいのかどうかの審判を、母なる海に託すのでした。

 

 

一日目

 

はじめに、この物語は殺人と舞台となる角島、そして本土での調査。

両方の視点から進行していきます。

 

 

大分県にある大学の推理小説研究会のメンバー七人は、旅行で角島にある十角館を訪れます。

十角館はその名前の通り、十角形の形をしていて、家具から食器にいたるまで、あらゆるものが十角形をしている奇妙な館です。

 

彼らがここに訪れた理由、それは過去に起きた事件にありました。

角島にはかつて青屋敷というものが存在し、どちらも中村青司という建築家が携わった建物で、妻の和枝、住み込みの使用人夫婦、そして庭師の五人で暮らしていました。

 

しかし、青屋敷は炎上し、焼け跡から庭師以外の四人の死体が見つかり、大量の睡眠薬が検出されます。

庭師の行方が分からないことから、彼が犯人なのではと思われますが、結局真実は迷宮入り。

 

以来、角島は無人島となりました。

ミステリー好きとして、角島は格好の旅先であり、今回、メンバーの一人であるヴァンの叔父がこの島を管理しているということで許可を取り、訪れたのでした。

 

メンバーは全員日本人ですが、一部のメンバーは代々ミステリー作家の名前を受け継ぐという慣習があり、ヴァンの他にエラリィ、カー、ポウ、ルルウと呼ばれる男性、そしてアガサ、オルツィと呼ばれる女性が島を訪れています。

みんなを誘ったヴァンが一足先に島に上陸し、準備をして待っていましたが、彼は風邪を引いていました。

 

十角館に入ると部屋振りを考えますが、全て同じで外からでは見分けがつかないため、一同は名札を作り、入口に貼って誰の部屋か分かるようにします。

一同は未解決事件の糸口がつかめるのではと嬉々として島を探索しますが、これといった進展はなく、すぐに拍子抜けしてしまいます。

 

一方、オルツィだけは違いました。

彼女が島を訪れた理由、それは死者に対する追悼のためですが、この死者が誰を指すのかはこの時点では分かりません。

 

またアガサに左手の中指につけた指輪を指摘されますが、恋人からもらったものではないといいます。

昼食時、推理小説研究会の会誌の次期編集長となるルルウは、島にいる間にミステリー作品を一つ書き上げてほしいメンバーにお願いし、了承を得ます。

 

その後、特にやることもなく、各々自由な時間を過ごしますが、夕食後、ヴァンは体調不良を理由に早々に部屋に戻り、鍵をかけます。

他のメンバーにも変わったことはなく、夜は更けていきます。

 

 

本土

 

『お前たちが殺した千織は、私の娘だった』

そんな手紙が元推理小説研究会の江南孝明の元に届きます。

 

彼は仲間内ではドイルと呼ばれています。

手紙の入っていた封筒の裏には『中村青司』と書かれていていますが、江南はすぐにはピンときません。

 

この手紙の指す中村千織は、去年の一月に亡くなり、当時は一回生、江南の一級下でした。

江南はこの事件もあり、去年の春に推理小説研究会を辞めています。

 

千織は確かに、推理小説研究会の新年会の三次会で亡くなっています。

急性アルコール中毒から持病の心臓発作が誘発されたことが原因ですが、江南は用があって途中で退席したため、当時の詳しい状況は知りません。

 

彼は千織の葬式に参加しましたが、喪主は青司ではなく彼女の祖父でした。

ここで江南は、ようやく青司が角島で起きた事件の犠牲者であることを思い出します。

 

彼は三次会に居合わせた推理小説研究会のメンバーの家に連絡をしますが、ほとんど留守で、東という人物の母親から角島に向かったことを知ります。

偶然にしては出来すぎているし、悪戯にしてもたちが悪い。

 

そこで江南は調査を開始。

まず千織の祖父宅に連絡を取り、千織の父親が青司であることを確認し、その弟である紅次郎の住所を聞き出すことに成功。

 

好奇心にまかせて紅次郎の家に向かうと、彼は江南を迎え入れてくれます。

またすでに先客がいて、紅次郎の友人で島田潔といいます。

 

江南は二人に事情を話すと、実は紅次郎の元にも青司から手紙が届いていたことが判明。

しかし、紅次郎は青司の死体はこの目で確認したと生存を否定。悪戯だと一蹴します。

 

彼はあの事件のことにもう関わりたくないということで、江南は退席。

一緒に島田もついてきます。

 

二人は喫茶店に入り、手紙の話の続きをします。

島田は暇で、単純に興味を持ったのだといいます。

 

江南はこの手紙に①告発、②脅迫、③角島の事件に再注目させる意図があるのではと推理。

島田は事件の詳細を説明してくれます。

 

やはり警察の見解は、失踪した庭師の吉川が犯人だということです。

しかし、疑問点もいくつか残ります。

 

青司の妻・和枝の左手首か切り取られていたが、なぜ切り取ったのか、またどこへやったのか。

それから逃走経路について、島に一隻しかないモーターボートは入江に残されていたため、犯人は泳いで本土に渡るしかないが、九月下旬の海をわざわざ泳ぐだろうか。

 

また吉川が犯人だとして、動機として考えられるのは二つ。

青司の財産目当てか、もしくは和枝への横恋慕。

 

和枝の殺害を皮切りに殺人が行われますが、最後の青司が殺害されるまでは一日か二日のタイムラグがあります。

また青司はからくり趣味があり、青屋敷や十角館には隠し部屋があると噂されていたため、吉川は青司を最後まで残していたのだと考えられます。

 

ここで島田は千織のことを江南に聞きますが、自分と守須という人物は途中で帰ってしまったため、無茶な飲み方をさせたことしか知りませんでした。

島田はまだ話し足りないようで、二人は夕飯代わりに一杯飲みに行くのでした。

 

 

場面は変わり、江南と同じく、三次会を途中で退席した守須恭一の視点。

彼のもとにも江南のところにきたのと同じ手紙が届いていました。

 

午前零時になると電話が鳴り、相手は江南でした。

彼は島田を連れて守須の家を訪れます。

 

守須は事件について、紅次郎が犯人なのではと疑います。

しかし、彼にはアリバイがあり、事件の夜から翌朝にかけて、島田とずっと一緒でした。

 

守須も推理小説研究会のメンバーが角島に行っていることを知っていますが、彼は悪趣味ということで断ったのでした。

また守須の提案があり、江南と島田は三次会に参加したメンバーの家を全て確認する、また安心院に住む吉川の妻をたずねることにします。

 

守須も誘いますが、国東の磨崖仏の絵を描きに毎日行っていることを理由に断られます。

 

 

 

二日目

 

 

翌朝目覚めると、ホールにあるテーブルに奇妙なプレートが置かれています。

それぞれ『第一の被害者』、『第二の被害者』、『第三の被害者』、『第四の被害者』、『最後の被害者』、『探偵』、『殺人犯人』と書かれています。

 

最初はゲームか何かかと思いますが、誰も置いた覚えはないといいます。

何者かの悪意を感じますが、とりあえず食器棚の空いた抽斗にしまいます。

 

その後、そのことを強く気にする人物はオルツィを除いていません。

またヴァンの体調は思わしくなく、熱もあってどうやら風邪のようです。

 

夜になると、前日同様、ヴァンは部屋に戻ります。

カーはヴァンがプレートを犯人だと疑いますが、一同は彼をかばい、大事にはなりませんでした。

 

 

本土

 

確認できていない分もありますが、三次会に参加したメンバー全員にあの手紙が届いていることを確認した江南。

その後、島田と合流し、安心院に住む吉川の妻・政子のもとをたずねます。

 

島田は手紙のことを話した上で、吉川の生存について聞きますが、政子は連絡がないため、吉川がすでに死んでいると考えています。

また角島での事件についても吉川が犯人でないと信じていました。

 

また当時、青司に財産など残っていなかったため、それが目的の殺人などありえないと断言。

千織について聞くと、彼女は小さい頃、角島に住んでいたこと、さらに青司は彼女のことをあまり可愛がっていなかったことが判明します。

 

政子の家をあとにすると、紅次郎の家に立ち寄りますが、寝てしまったのか彼は出てきませんでした。

あてが外れ、この時点で江南は手紙についてあまり関心を示さなくなっていましたが、島田は政子の話から吉川が犯人ではない可能性が高いと判断。

 

そして、青司と紅次郎が不仲だったこともあり、もし和枝に不義の相手がいるのなら、相手は紅次郎ではないかと推理。

紅次郎は、青司よりも和枝の死にショックを受けていたようです。

 

二人は今日の報告をするために守須の家を訪れます。

すると、守須は実は青司が生きている可能性を提示。

 

青司の死体は燃えていたため、実は本人でない可能性もある。

さらに吉川が姿を消していることになっているが、実は死体が吉川であり、青司が真犯人だったのでは。

 

島田もこの意見を肯定します。

二人は同い年、中肉中背、同じA型のため、誤認された可能性も十分あります。

 

そうなると動機が問題となりますが、島田は、千織が実は青司の娘ではなかった可能性を提示。

本当は紅次郎と和枝の間に出来た娘なのではないかと。

 

紅次郎の家に寄ったのは、探りを入れるためでした。

ところがここで、守須は急に態度を変え、あまり詮索しないほうがいいとこれ以上の捜査を反対し、自分は降りるといいます。

 

江南は彼の態度に疑問を感じつつも、島田に付き添って捜査を続けることにします。

 

 

三日目

 

 

朝、アガサが目を覚ましてホールでタバコを吸っていると、オルツィの部屋の名札の上から『第一の被害者』というプレートが貼られていることに気が付き、悲鳴を上げます。

その声で他のメンバーも起き、オルツィの部屋に入ります。

 

そこには、整えられていましたが、絞殺されたオルツィの死体がベッドに横たえられていました。

また左手首がありませんでした。

 

それはまるで過去の青屋敷での和枝の殺人に見立てているようでした。

ここで医学部のポウが状況を確認します。

 

オルツィは死後四~五時間が経過していて、全員が寝ていてアリバイはありません。

また動機について考えますが、カーがオルツィに告白して振られたことしか思い当たらず、当然、彼もそれを否定。

 

何とかして本土と連絡をとろうと島を捜索しますが、当然船などありません。

また滅多に船は通りかからないため、行きの船が迎えに来るまでこの島は孤立することになります。

 

誰もがこの中に犯人がいるのではと疑心暗鬼になる中、エラリィは外部犯の可能性を提示。

彼は青司が生きていて、この島に隠れていると考えていました。

 

その夜、オルツィの死をあえて話さない六人ですが、問題から目をそらしても仕方ないと人数分のコーヒーをいれ、これからのことを相談。

この頃にはヴァンの体調も戻っていました。

 

ところが、コーヒーを飲んだカーが突然苦しみ出します。

ポウは毒が原因だと考えますが、種類が分からないため対処のしようがなく、夜中、カーは息を引き取ります。

 

ポウはいくつか可能性のある毒物を提示。

また状況からして、コーヒーをいれたアガサにしか犯行は不可能ということになります。

 

しかし、カップをとった順番や全て同じ形をしていることから、どうやってアガサが毒を回避したのかという問題が浮上。

しかし、あえて不利な状況を作り出すのは不自然だと反論も上がり、遅溶性のカプセルを使えば犯行が可能な人物が増えるため、結局、結論は出ません。

 

あらかじめ毒が塗ってあり、カップに何か目印があるのではと調べますが、そういったものは見当たりません。

疑われたことでアガサは神経が参り、部屋に先に戻ります。

 

また一同も部屋に戻り、この日は終わるのでした。

 

 

本土

 

江南と島田は、角島に近いS町を訪れ、付近の住人や漁師から話を聞きます。

しかし、なかなか有力な証言は得られません。

 

帰ろうとしたその時、二人は一人の若者に声を掛けられます。

彼は父親と共に推理小説研究会のメンバーを角島に送った本人で、今度の火曜日に迎えに行くのだといいます。

 

また彼によると、今ぐらいの気候であればモーターボートで本土と島を行き来することも可能だということが判明します。

 

 

四日目

 

 

ルルウが目覚めてホールに出ると、他の四人はすでに起きていました。

カーの部屋にはご丁寧にも『第二の被害者』と書かれたプレートがつけられています。

 

抽斗にあるプレートを処分した方が良いと考えますが、中には六枚残されていました。

つまりプレートはもう一組あり、犯人が持っているものと推測されます。

 

また浴室から血まみれの手首が発見され、それはオルツィではなくカーのものであると判明。

しかし、切り取る理由が分かりません。

 

昼食後、五人は青屋敷の焼け跡に向かい、そこにあると言われている地下室を探します。

すると焼け落ちた壁の一部に動かした跡があり、持ち上げると地下室へと向かう階段を発見。

 

エラリィが初めに中に入りますが、不意に彼は体勢を崩して中に落ちてしまいます。

ポウが入口を調べると、足元にテグスが張ってあるのを見つけます。どうやらエラリィはこれにつまづいてしまったようです。

 

テグスをよけて下に降りると、エラリィは足を挫いていたものの無事でした。

地下室を調べると、中には何もないものの、床は掃き清めたように綺麗で、誰かがいたことが分かります。

 

屋敷に戻る五人ですが、アガサはますます精神的に追い詰められます。

そこで夕食後、ポウは睡眠薬を飲んで休むことを勧めます。

 

アガサは拒否しますが、ポウが先に飲むことで安全を確認し、自分も口にして部屋に戻ります。

残された四人は推理を続けますが、いくら考えても犯人は分からず、必要な人は睡眠薬をもらって休むことにします。

 

 

本土

 

昨日の守須の態度が気になりつつも、江南と島田は紅次郎に会いに行きます。

一昨日の予定を聞くと、家にいたが、締切間近の論文のために居留守をつかっていたといいます。

 

島田は単刀直入に千織が紅次郎の娘ではないかと聞きますが、当然、紅次郎はこれを否定。

しかし、島田は引き下がりません。

 

安心院で政子に会ったこと、青司が生きている可能性があることを伝えます。

しかし、青司はあんなにも愛していた和枝をなぜ手にかけたのか、それは嫉妬以外にあり得ない。

 

さらに青司は千織のことをあまり可愛がっておらず、一方、紅次郎には和枝との熱愛の噂があります。

千織を愛せなかったのは、自分の娘ではないからではないか。

 

また、青屋敷が燃える前日の夜。

普段滅多に酒を飲まない紅次郎が島田を誘い、さらに酔いつぶれて『和枝、許してくれ、私を許してくれ』と繰り返していたのを島田は聞いていました。

 

紅次郎の顔色が変わります。

さらに島田は続けます。

 

事件前日の夜の時点で、紅次郎は事件の発生を知っていた。

つまり、青司から直接連絡があったのだと。

 

和枝の死体には左手首がありませんでしたが、青司が切断し、紅次郎のもとに送り付けたのです。

それを受け取ったのが青屋敷が燃える前日ですが、紅次郎はスキャンダルを恐れて通報することが出来ず、ショックを酒でまぎらわしたのだと。

 

島田は紅次郎が通報しなかったことも罪の一つなのではといい、紅次郎はついにこれらの事実を認めます。

ここで場面は変わり、守須は江南に会うために彼のアパートを訪れますが不在で、向かいのコーヒーショップで待つことに。

 

すると彼のバイクを見つけた江南たちがやって来ます。

江南の部屋に移動し、紅次郎から聞かされた話、あの事件は青司が図った無理心中だったことを説明します。

 

紅次郎は一夜だけ和枝と関係を持ち、彼女は千織を身籠ります。

青司は二人の関係を疑っていましたが、一方で自分が和枝の最良の伴侶でないことに気が付いていました。

 

だから生まれた千織を自分の娘だと信じることで、和枝との関係を保とうとします。

しかし、唯一の繋がりである千織が亡くなってしまったことで、紅次郎と和枝の関係は疑惑のまま残ってしまい、青司はついに和枝を殺害してしまいます。

 

あの夜、紅次郎が青屋敷に電話をすると青司が出て、これらのことを認め、自分も一緒に死ぬことを仄めかしていました。

紅次郎が青司の生存を否定する理由がこれです。

 

また和枝の左手首について、紅次郎は庭に埋めたのでした。

これであの日の事件のかたがつきましたが、手紙の謎と吉川の行方の謎が残ります。

 

江南は死体が見つからない以上、海に落ちて潮に流されたのだろうと推測。

これで探偵の真似事はやめ、推理小説研究会のメンバーが戻ってきたら事情を聞くことで話がつきました。

 

 

 

五日目

 

目覚めると、ふいに中村千織が青司の娘だと気が付くルルウ。

またアガサは自分の顔色が悪いことを気にして、いつものローズのリップから赤に変えます。

 

ヴァンが目覚めると、洗面所のドアが不自然に開いていることに気が付き、中を確かめるとそこにはアガサの死体がありました。

彼は言う事のきかない体を引きずってポウを起こし、このことを伝えます。

 

ポウは状況を把握し、他のみんなを起こします。

アガサの死因は、匂いからして青酸による毒殺でした。

 

またルルウが起きてこないので呼びに行くと、部屋には『第三の被害者』と書かれたプレートがかけられていました。

つまり、アガサは四番目の被害者で、その前があったのです。

 

部屋に入ろうとすると、ドアには鍵がかかっていて、ポウは外の窓を破って中に入りますが、ルルウの姿がありません。

アガサの死体を見て体調を悪くしたヴァンを玄関に残し、エラリィとポウは手分けしてルルウを探します。

 

すると、青屋敷跡の方からエラリィの呼ぶ声がして、二人は合流します。

そこには、ルルウの死体が横たわっていました。

 

死因は石か瓦礫による撲殺だと思われます。

ポウが調べたところ、死後五~六時間が経過していました。

 

ポウはルルウの死体を十角館に運ぼうとしますが、エラリィは地面の足跡に注目します。

昨日の雨の影響で足元は柔らかくなり、いくつかの足跡が残されています。

 

しかし、この時はさほど気に留めなかったため、ルルウの死体を持って三人は十角館に戻ります。

アガサについてもしっかり調べたところ、毒は二本ある口紅のうち赤い方に塗られていたことが判明します。

 

三人は改めて状況を整理します。

プレートの通りいくのであれば、残ったのは最後の被害者、探偵、殺人犯人ですが、誰も自分が犯人だとは名乗り出しません。

 

そこでもう一度最初の殺人から状況を整理していくと、カーが亡くなった時のカップのことを思い出します。

本当に目印はなかったのかと見てみると、十角形のカップの中に一つだけ十一角形のカップがあることが判明。

 

これが目印になるため、誰にでも犯行が可能ということになります。

三人はお互いを疑い出しますが、突然雨が降り出し、エラリィは足跡のことを思い出して外に飛び出し、二人もついて行きます。

 

ルルウの死体が横たわっていた場所。

三人は雨で足跡が消えてしまう前に記憶し、十角館に戻ると図を描きます。

 

すると自分たちやルルウの足跡を除外した結果、残ったのは犯人と思われる足跡のみ。

しかし、犯人の足跡は階段とルルウの死体の往復しかしておらず、しかも階段の下には海しかありません。

 

深さや季節を考えると、泳ぐなど考えられません。

また地上を歩いて戻ればいい話なので、犯人は何らかの理由で海の方に戻らざるをえなかったということになります。

 

つまり犯人は外部の人間で、船を使ったと考えるのが自然です。

船の隠し場所が問題に挙がりますが、エラリィはたためるゴムボートを使用したと考えていました。

 

確かにゴムボートでは本土との行き来は難しいですが、この島のすぐ近くには猫島という無人島があり、犯人はそこでキャンプを張って潜んでいたというのです。

そして、ルルウに自分の姿とゴムボートを発見されてしまったため、殺害したと。

 

エラリィは犯人が青司だと決めつけていました。

そして千織の父親であることにも気が付いていて、それなら動機もあると。

 

その時、タバコを吸っていたポウが苦しみだし、そのまま息を引き取ります。

こちらも青酸による毒殺で、ポウのタバコのストックのうち、一本に青酸が混ざっていたのです。

 

これで残ったのは二人。

ますますエラリィは青司が犯人だと決めつけ、彼なら十角館のマスターキーを持っているからどの部屋にも好きに入れると主張します。

 

そして、ヴァンは十一角形のカップの存在に注目し、十一番目の部屋があるのではと推測。

青司はその部屋から機会をうかがっていたのではと。

 

そこで二人が探すと、厨房の床下の収納庫の底板に穴があり、そこに十一角形のカップを合わせると見事合致。

地下の隠し部屋へと続く階段が出現します。

 

二人は降りていきますが、強烈な異臭に顔をしかめ、驚愕します。

そこには半ば白骨と化した人年の死体がありました。

 

そしてその夜、十角館は燃え上がるのでした。

 

 

六日目

 

電話の音で目が覚めた守須。

電話の主は十角館が燃えたこと、そしてそこに来ていた全員が死んでしまったことを告げます。

 

守須は慌てて江南に電話をかけ、状況を説明。

二人はS町に向かい、島田も呼びます。

 

守須は状況からやはり青司が生きているのではと疑いますが、島田は紅次郎を疑っていました。

彼ならば動機はあるし、手紙は青司が犯人だと思わせるためのカモフラージュだというのです。

 

江南は、紅次郎がずっと別府にいたと反論しますが、島田は漁師の息子から聞いた『エンジン付きのボートなら島との往復は難しくない』という話を持ち出し、紅次郎にも可能だったと発言。

さらに紅次郎は論文執筆のために居留守をつかっていたと話していたが、実は本当にいなかったのではと疑います。

 

自分に手紙を宛てたのも、自分も被害者であると思わせる狙いがあります。

そこに島から警察の船が戻ってきたため、三人は警察に合流。

 

今回の捜査は島田の兄、県警捜査一課の島田修が担当していて、今回の事件について教えてくれます。

死体は一部を除いて焼かれる前に死んでいて、一体は焼死で、自殺との見方が強いです。

 

焼死体は松浦純也という人物のもので、これがエラリィだと判明。

ここで初めて島田は推理小説研究会の一部のメンバーにはニックネームがあったことを知り、江南と守須の名前も聞きます。

 

江南は名前の通り、ドイル。

一方島田は、守須の名前から『モーリス』だと推測しますが、違いました。

 

彼はヴァンと呼ばれていたのです。

 

 

 

七日目

 

この事件は新聞などで大々的に報じられます。

また紙面に実名が掲載されたことで、それぞれの実名が判明します。

 

ポウ=山崎喜史

カー=鈴木哲郎

エラリィ=松浦純也

アガサ=岩崎杳子

オルツィ=大野由美

ルルウ=東一

 

さらに地下室から白骨化の進んだ変死体が発見され、行方不明となっていた吉川のものであるとの見方が強まっていました。

 

 

八日目

 

警察は推理小説研究会の会員を十人ほど部室に呼び、事情を聞きます。

江南、守須もいますが、島田はいません。

 

ここで守須は、自分の伯父に頼んで十角館に行けるように手配したこと。

また青屋敷での事件もそうですが、部屋数の関係で辞退したことを説明します。

 

実は客室は七つありましたが、一つはとても使える状態でなかったことが判明。

修は事情聴取を続けますが、守須の頭の中は千織のことでいっぱいでした。

 

彼はみんなに内緒で彼女と付き合っていました。

そして、千織の命を奪った六人に復讐しようと今回の計画を思いついたのです。

 

ここで守須が犯人だと確定しますが、あくまでこれは独白のため、他の人は彼が犯人などとは知りません。

ここからは、事件の全貌を守須が独白します。

 

守須は六人への復讐の機会をずっとうかがっていて、千織の父親が青司であることも聞かされていました。

そこに伯父が十角館を手に入れたと知らされ、今回の計画を思いつきます。

 

こうして彼は晴天で波が穏やかな日を選んで、日程を決めます。

まず守須はメンバーには自分も同行しているように思わせ、島外の人間からは自分以外の六人しか島に渡っていないように見せる必要がありました。

 

そこで彼は青司の名前を偽って手紙を出します。

これは告発の意味もありますが、もう一つ、江南を動かく意図がありました。

 

好奇心の強い彼ならば、この手紙を見て調べ、自分に相談にくるはずだと。

手紙を投函すると、伯父に借りた車に伯父のエンジン付きのゴムボート、ボンベなどを積み、海岸に一旦隠します。

 

車を戻すと、一度自宅に戻り、夜に今度はバイクで海岸へ移動。

隠しておいたボートで島に上陸し、十角館の使えない部屋を先に確保し、寝袋で休みます。

 

翌日、六人が島を訪れます。

この日、守須は体調不良を理由に先に部屋に戻りますが、その間に自宅に戻ります。

 

仮病だと医学部のポウに見抜かれる危険があったため、彼は水断ちをして、風邪に似た症状をわざと引き起こしたのです。

自宅に戻ると、自分が家にいたことを証言してもらうために江南に電話をかけますが、繋がりません。

 

すでにかかってきた可能性もありますが、後でどこへ行っていたのかを聞かれてもいいように、彼は三枚の磨崖仏の絵を用意していました。

それは昨年の秋、傷心に任せていた時に出会った風景で、彼はその記憶を頼りに同じ構図で描き、季節を早春に置き換えたのです。

 

そして読み通り、江南は守須の家を訪れ、島田も合わせて二人の証人を得ることに成功します。

また二人は過去の事件に目が向いていたため、そちらに注力するよう誘導します。

 

その後、二人が帰ると仮眠をとり、夜明け前にはまた島に戻ります。

そして、メンバーが起きてくる前にプレートをテーブルに置きます。

 

二日目の夜、彼は再び家に戻り、水分補給をして体力の回復に努め、江南たちの報告を聞きます。

そしてわざと否定的な態度をとり、翌日以降、彼らが連絡してこないよう誘導。

 

これでここに戻ってくる必要はもうないため、夜明け前に島に戻ると、以後、島に残ります。

まずはオルツィを手にかけますが、守須は彼女の指輪を気にしていました。

 

オルツィは千織と仲が良く、あの指輪は守須が千織にプレゼントしたもので、形見として受け取ったのではないかと。

そして、指輪の裏には二人のイニシャルが彫られていたため、いずれオルツィは事件の犯人と動機に気が付いてしまいます。

 

そこで守須はオルツィ殺害後、指輪をとろうとしますが、指がむくんで外せません。

しかし、指だけ切断すると目的がバレてしまうため、手首ごと切り、和枝殺害の見立てとすることで青司の影をほのめかします。

 

アガサの口紅に青酸を塗っておいたのは二日目のことで、急いで行ったため一本にしか仕込むことが出来ませんでした。

本当はオルツィの死体発見の前後を予想していましたが、思わず時間がかかってしまいました。

 

第二の殺人について、守須は島に来た日に十一角形のカップに気が付き、利用することを決めます。

毒薬は理学部の実験室から盗み出したもので、カップに事前に塗り、三日目の夕食前に戻します。

 

もし自分のもとに毒のついたカップがくれば飲まない予定でしたが、その心配はなく、カーが犠牲者となりました。

夜明け前になって解散すると、みんなが寝静まった頃にカーの部屋に入って手首を切断すると、浴室に放り込んでオルツィの手を切断した理由のカモフラージュをします。

 

その後、今度は青屋敷跡に向かいます。

彼は伯父から地下室の存在を聞かされていて、荷物をそこに隠していました。

 

エラリィが地下室に犯人が隠れている可能性を疑っていたため、床を掃き清めて誰かがいるように演出。

ポウの荷物からテグスを盗み、階段に張ります。

 

案の定、エラリィがこれにひっかりますが、守須はこれで死体を稼ごうとは考えていませんでした。

この夜、アガサのヒステリーが契機となって早く部屋に戻ることができたため、ダメ押しのアリバイ工作のために本土に戻り、江南のアパートを訪れます。

 

五日目、無事に島に到着しますが、その現場をルルウに目撃されてしまいます。

そこで追いかけて、手近な石を投げつけて彼の動きを止め、転がった石で殺害。

 

足跡には気が付いていましたが、ルルウが叫んだため誰かが来る危険性もあり、仕方なく海の方からボートで脱出し、様子をうかがいます。

誰も来ないことを確認し、入り江に戻ってボートを隠します。

 

十角館に戻ると、ルルウの部屋に『第三の被害者』のプレートをつけ、眠りにつきます。

少し寝てから起きると、アガサの死体を発見するのでした。

 

これで残るは二人。

エラリィが足跡のことを言いだしたので焦りますが、彼は青司が犯人だと決めつけ、助かります。

 

ここでポウがタバコ入れを回してきたため、自分の手元にくると二本とり、一本を吸って、一本はポケットにしまいます。

代わりに事前に用意していた青酸カリを仕込んだタバコを戻します。

 

そして、ポウはそのタバコを吸って亡くなりました。

残ったのはエラリィ一人。

 

彼は青司が犯人だと決めつけていたため、焦る必要はありません。

エラリィは自らの推理で十角館の隠し部屋を探り当て、青司が犯人であるという考えを強めていきます。

 

そこで吉川の死体を見つけ、守須はエラリィに最後まで付き合うことにします。

外へと繋がる秘密の通路も見つけ、二人は上に戻ります。

 

そこで守須は睡眠薬入りのコーヒーを飲ませて、エラリィを眠らせることに成功。

彼を部屋のベッドに運び、逃げる準備を整えると、青屋敷跡の地下室から灯油を運び込み、埋めておいたオルツィの左手から指輪をとると、彼女の死体に戻します。

 

そして、犯人の証拠となりうるものは全てエラリィの部屋に入れ、館中、そしてエラリィ自身にも灯油をかけ、火を放つのでした。

翌朝、伯父からの電話で目が覚めると、江南たちと合流したのでした。

 

最後に、会合は終わり、警察はエラリィが犯人であるという考えに疑いを持っていませんでした。

これで復讐は終わったように見えました。

 

 

結末

 

海岸にて、守須は復讐を終えたにもかかわらず、心の中の千織の幻影が消えてしまったことで虚無感に襲われていました。

そこにマンションの管理人から居場所を聞いた島田がやってきます。

 

あの事件からだいぶ経ち、警察はすでに捜査を打ち切っています。

そのことについて意見を聞かれ、守須は島田を警戒します。

 

島田はあれからも事件について知らべていて、守須は真実を知られたのではと彼の話を止め、無視して水辺に降り立ちます。

すると、足元にキラリと光るものを見つけます。

 

それは彼が海に投げた、事件の詳細を書いた紙片の入ったガラス壜でした。

彼は審判が下ったのだと観念します。

 

壜を拾うと、近くにいた一人の男の子を呼び止め、島田にこの壜を渡すようお願いするのでした。

 

 

まとめ

 

本作の肝は叙述トリックと思い込みにあります。

推理小説研究会のメンバーにはミステリーにちなんだニックネームが与えられていて、江南と守須にもあります。

 

江南は名前の通り、コナン・ドイルからとってドイルと呼ばれていたため、守須もモーリス・ルブランだと思い込みます。

だからヴァンとは別人だと思い込まされます。

 

さらに、島と本土の往復など出来ないという先入観があるため、犯人は七人の誰か、もしくは青司だと考えます。

また守須の視点からも、自分は無関係だという感情が見られたため、勘違いは必須です。

 

ただ途中からあからさまに態度がおかしかったため、薄々感づいた人もいるかもしれません。

あとは他のブログでも挙げられていましたが、タバコの銘柄もヒントになっています。

 

推理小説研究会にはタバコを吸っているメンバーが複数いますが、それぞれ銘柄が違っていて、よく読むとヴァンと守須のタバコの銘柄が同じことに気が付きます。

描写が細かいので、気になった人もいたかもしれません。

 

一方、守須と千織の関係を推測することができなかったと思いますので、動機という面からは守須が犯人だと決めるのは難しかったと思います。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

デビュー作ということもあって粗も目立ちますが、一行でこれまでの認識がひっくり返るあの衝撃は忘れられません。

 

ミステリー好きにはもちろんですが、これからミステリーを読んでみたいという方にもぜひ読んでほしい名作です。

 

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

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