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徹底ネタバレ解説!『そして二人だけになった』あらすじから結末まで!

そして二人だけになった Until Death Do Us Part (講談社文庫)

 

とてつもなく大きな橋を支える巨大コンクリートの塊の中に、国家機密とされるシェルタがあった。現代の最高技術で造られたこの密室に滞在することになった六人が、一人ずつ殺される。痺れるような緊張感の中、最後に残った二人。そして世界が反転する―。謎、恐怖、驚愕。すべてが圧倒的な傑作長編ミステリィ。

【「BOOK」データベースより】

 

本書が初めて書籍化されたのが1999年なので、二十年近く前のことになります。

しかし、読んでみても時代を感じさせず、むしろこれから訪れるかもしれない未来を描いたような話になっています。

 

五百ページ以上の長編ですが、さすがは森さん。

ユーモアあふれる会話は健在で、面白いくらいにあっという間に読めてしまいます。

 

ただ、これから読む方に一点だけ。

本書の評価は賛否両論で、何が真実なのか曖昧なまま物語は終了します。

 

そのため、自分なりにこうだったのでは?と折り合いをつけられないと、消化不良で終わってしまいます。

本書に限らず、森さんの作品は明快なミステリーというより、そこに潜む人間模様も含めての作品なので、すっきりしないことがよくあります。

 

森さんの作品が初めてだという方は、その点を頭に留めてお読みください。

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

入れ替わり

 

本書では名前が明かされない『僕』。

僕には異母兄がいて、名前は勅使河原潤(てしがわらじゅん)。

 

若き天才数学者で、父親はやり手の実業家。

見た目も良く、まさに全てを手にした天才です。

 

僕は母が死ぬ間際に教えてくれたことで父親が誰なのかを知り、ある時、潤に呼び出されて自分の代わりを務めてほしいと僕に持ち掛けます。

僕は目先の金のためにそれを了承し、見た目が似ていることを利用して盲目の彼のふりをすることになります。

 

一方、潤には森島有佳というアシスタントがいて、彼女もまた潤と同様、双子の妹(本書で名前が出てこない)に自分の代わりを務めてほしいとお願いします。

潤も有佳もこれを機に海外に移り住むつもりで、相手こそ明かしませんが、二人で一緒に暮らそうとしているのが予想されます。

 

妹は今の職場に不満があったため、これを了承。

こうして相手が入れ替わった偽物だと知らないまま、僕は潤、妹は有佳を演じることになります。

 

なお、これ以降、僕=潤、妹=有佳として記述します。

 

 

閉鎖空間での生活

 

入れ替わった二人が向かったのは、本物の潤が出資して建設したシェルタ、通称バルブ。

バルブはA海峡大橋のアンカレイジ内部に存在していて、その存在を知っている人間はわずかに過ぎません。

 

他に同行者が四人いて、彼ら六人はこの中で数か月暮らすことになっていました。

当然、外部に情報が流出するとまずいため、この計画に関係する人間だけが選ばれました。

 

物理学者の志田雄三、土木建造物専門の設計者の垣本壮一郎、土木工学が専門の大学教授・小松貴史、そして本来参加するはずだった医師の娘で同じく医師の浜野静子。

潤と有佳は関係者に加え、お互いに偽物だとバレないように振る舞いながら共同生活を送ることになります。

 

何もない、退屈な生活になることが予想されましたが、ここで想定外のことが起きます。

地震があったかと思うと、何者かによる妨害工作によって外との連絡手段が断たれ、またバルブのエマージェンシィ・モードが発動し、バルブから出られなくなってしまいます。

地震が原因となり得ますが、この程度の震度では発動するはずがなく、これも誰かによる故意的なものだと考えられました。

 

こうして六人は何らかの思惑をもつ誰か、もしくはこの場にいる犯人に怯えることになります。

 

 

 

密室で起こる殺人

 

そんな中で、まず志田の死体が発見されます。

刺し傷から、誰かによって殺されたものだと考えられます。

 

凶器は見つからず、また二つのボールが見つかり、それぞれ材質が木と粘土です。

 

犯人を捜すも手掛かりがなく、今度は停電が発生。

電気が復旧すると、今度は垣本の死体が発見されます。

 

死因は志田と同様で、彼の手にはまたしても二つのボールが握られていました。

しかし、材質は異なっていて、今度は煉瓦とモルタルでした。

 

そんな中、不安が限界を迎えた有佳は潤の部屋に忍び込み、寝ている彼にキス。

彼も起きてそれを受け入れ、二人はお互いに偽物だと気が付かずに男女の関係になります。

 

四人は朝、集合する時間を決めていましたが、小松が現れません。

不審に思って部屋に行くと、中に彼の姿はありません。

 

捜すと今度は小松の死体が見つかり、死因もこれまでと同様。

そして小松もまた手に二つのボールを握っていて、材質は鉄と鋼でした。

 

この時点で、残ったのは三人。

しかし、潤は目が見えないと浜野も有佳も思っているため、消去法でお互いが犯人ということになります。

 

浜野は有佳が犯人だと思い、部屋に籠城。

潤と有佳は浜野が犯人だと思い、警戒しながらも脱出方法を考えます。

 

潤は有佳に自分が偽物だと伝えようと何度も思いますが、なかなか伝えることが出来ません。

一方、有佳は毎日の業務のために、浜野に警戒しながらコントロール・ルームに向かいます。

 

観測されたデータに問題はありませんでしたが、モニタが次々に真っ暗になり、原因が断線によることが判明。

さらにドアの外から音がして、有佳は浜野が切断したと判断し、自分を守るために応戦する準備をして待ちます。

 

一方、なかなか戻らない有佳を心配した潤はコントロール・ルームに行きますが、部屋の入口に着くと照明が消えてしまいます。

さらに何者かの気配がしたので周囲を警戒しますが、抵抗する間もなく頭部を殴られ、気絶してしまいます。

 

有佳も停電で何者かの影に怯えますが、思い切って外に出ます。

そこには、倒れた潤がいました。

 

有佳は手当てをお願いしようと犯人と思われる浜野を探しに行きますが、うめき声が聞こえてそちらに向かうと、息絶える寸前の浜野がいました。

浜野は次は有佳の番だと言い、死亡。

 

幸い、潤は目を覚ましますが、殴られた衝撃で記憶があいまいになっていて、状況が飲み込めずにいました。

また、視力も著しく低下し、奇しくも本当の潤と同じ状態になっていました。

 

彼は有佳から事情を聞き少しずつ思い出していきます。

一方、有佳は潤が犯人だと考えていましたが、彼が犯人でも構わないと思っています。

 

有佳が浜野の殺害後、二つのボールが見つかったことを話すと、潤は聞く前にそれが金と銀であることに気が付き、ボールの謎を解きます。

記憶を取り戻した潤は自分が本物の潤の弟であることを明かした上で、ボールはマザーグースの中にある『ロンドン橋落ちた』という童謡を暗示していると説明。

 

しかし、意味は分からず。

このままこうしていても仕方ないため、二人は強硬手段で脱出することを決めます。

 

 

脱出と爆破

 

二人は緊急用の爆薬でドアを爆破し、外に脱出します。

ところが少しして、突然の爆発が起き、二人は爆風によってはぐれてしまいます。

 

そのまま別々に逃げ、潤は通りがかった車に、有佳はヘリコプターに助けられ、別々の病院に搬送されます。

後にあの爆風が、A海峡大橋が爆破されたことによって発生したことが判明します。

 

二人の前に特捜部の宮原が度々現れ、当時の状況を聞きます。

潤は自分が彼の弟であると自白しますが、本物の潤の行方は分かりません。

 

また今回の殺人事件について、世間には公表されておらず、潤と有佳は別々に監禁されてしまいます。

二人はバルブであったことを忘れることを条件に、彼らの監視下のもと、用意された北海道の住まいで一緒に暮らすことになります。

 

ある日、潤は湯沸かし器を修理しに来た業者のトラックに積んであった新聞から、A海峡大橋のアンカレイジが二つも爆破されていたことを知ります。

ようやく真実に気が付いた潤は、脱出して初めて有佳とキスをします。

 

そして、有佳も気が付きます。

バルブ内で一緒だった潤と、キスの感触が違うことに。

 

それは潤も同じで、つまり二人は脱出後に初めて会っていたのです。

そして、潤は本物と有佳と、有佳は本物の潤とバルブ内で一緒にいたことになります。

 

どうしてそんなことが可能なのか。

それはバルブが二つ存在し、二人は別々のバルブで過ごしていたのです。

 

中で本物の潤と有佳は連絡を取り合い、内部の状況、それから爆破まで全く同じ状況を作ります。

ただし、計画のメンバーが一緒だったのは有佳の方で、潤の方はそもそも殺人など起きていません。

 

本物の潤のふりをするため黒いサングラスをかけ、目が見えないことからじっくり観察することのできない彼を利用した計画でした。

つまり、殺人と爆破は本物の潤と有佳が実行したことになります。

 

しかし、動機が分かりません。

潤はこの仮説を宮原に話しますが、今となっては実証することは不可能であり、意味のないことでした。

 

 

 

他者から見た見解

 

ここで、宮原の視点に変わりますが、話が一転。

これまでの話は、全て潤と有佳の手記だったことが判明。

 

四名の殺人事件は本当でしたが、大橋崩壊は人為的ではなく、直下型の地震によるものだと訂正されています。

さらに戸籍上、潤には異母弟など存在せず、有佳にも双子の妹など存在しません。

 

しかし、潤と有佳は本当の兄妹で、母親が違っていました。

幼い頃は一緒に暮らしていて、有佳の母親が離婚すると、二人は別々に暮らすこととなりました。

 

ここからは推論になると宮原は前置きした上で、潤の中には無名の弟、有佳と無名の妹の人格が存在すると説明。

手記も、潤が弟と有佳の人格を通じて書いたものだったのです。

 

つまり、バルブに入ったのは五人で、有佳の存在は潤以外、誰も認知していません。

ただし、潤はこのことを自覚した上で、周囲との整合性を保ちつつ、全ての人格を維持していたのです。


これは僕の予想ですが、地震によって二つのアンカレイジが破壊されただけで、バルブはやはり一つしかなかったのではないでしょうか。

潤がいたバルブの話がとってつけた感じがありますし、自分の中で潤の弟と有佳の妹を演じているのであれば、一つあれば成り立ちます。

 

しかし、今回の事件によって本物の潤と有佳の人格が消え、残ったのは偽物の潤と有佳の人格のみ。

最近になって潤の人格は戻りつつあり、今度は盲目の彼の手を引く少女の人格も作り上げたようです。

 

 

結末

 

五年後、偽物の二人はようやく本物の潤と有佳に辿り着き、あの事件の真意を聞きます。

しかし、潤から明確な回答はなく、偽物の潤は偽物の有佳を退席させると、本物の潤と有佳を拳銃で殺害。

 

潤は有佳と二人だけになったことを実感し、死ぬまでずっと一緒にいることを改めて思うのでした。

 

 

考察

 

ラストについて、少し自分なりの考えを書きたいと思います。

手記の内容について、別の方のブログで潤も有佳も潤一人で演じていることを証明する違和感を紹介されていたので、そちらを参照ください。

 

最後に、本物と偽物の潤、有佳が対面しますが、これにはいくつかのパターンが考えられます。

 

① 潤の中に本物の有佳の人格も復活し、彼の脳内で全てが起きている

 

② 潤の他に本物の有佳も登場していて、潤は偽物の二人と合わせて三人分を演じている

 

おそらく①が正しいのでしょう。

これなら一人の脳内で起きていることなので、何でもありですし。

 

一方で、せっかく有佳も実在することが判明したのですから、ちゃんと登場させても良いのではないかと考えました。

もし②が正解ならば、実在する有佳を殺害することで脳内含めて全ての有佳を抹消することができ、初めて二人だけになれたのではないかと思います。

 

ただし、②だと実在する有佳は当然、潤の思い通りに動くことはできないので、ラストのように本物の潤を抱きかかえるようなことはできないですよね。

もしくは、実在する有佳も潤と離れたことが原因で複数の人格を有するようになり、同じ妄想を共有したりして。

 

かなり荒唐無稽な話ですが、ここまでくると何でもアリな感じがして妄想が止まりません。

あくまで正解は読者次第なので、この説明で落としどころが作れたというのであれば幸いです。

 

あと、キスの感触が違ったことについて、どうしてもうまい説明がつきません。

脳内で繰り広げているやりとりだから何であり、だとなんだかです。


 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

相変わらずの森節全開な作品でした。

 

最初はそのページ数から躊躇してしまいましたが、読み始めたらあっという間でした。

さすがは森先生。

 

オチに関しても、僕は良かったと思います。

まあ、それは森さんの作品に免疫があるせいかもしれませんが。

 

そして二人だけになった Until Death Do Us Part (講談社文庫)

そして二人だけになった Until Death Do Us Part (講談社文庫)