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徹底ネタバレ解説!『また、同じ夢を見ていた』あらすじから結末まで!

また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)

 

「人生とは和風の朝ごはんみたいなものなのよ」小柳奈ノ花は「人生とは~」が口癖のちょっとおませな女の子。ある日、彼女は草むらで一匹の猫に出会う。そしてその出会いは、とても格好いい“アバズレさん”、手首に傷がある“南さん”といった、様々な過去を持つ女性たちとの不思議な出会いに繋がっていき―。大ベストセラー青春小説『君の膵臓をたべたい』の住野よるが贈る、幸せを探す物語。

【「BOOK」データベースより】

 

『君の膵臓を食べたい』で鮮烈なデビューを果たした住野よるさんの作品です。

前作でも思いましたが、本書は特に『読ませる力』のある作品でした。

 

現実にいるかのような自然な登場人物の設定、何気ない日常ですら楽しそうに描いてしまうその感性、前作のヒットがまぐれでないことを証明したと思います。

そして、本書には大きな謎が隠されていて、その事実に気が付いた時には二度読みせずにはいられません。

 

この記事では、そんな本書の魅力についてあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

あらすじ

 

本書の主人公は、小学生の小柳奈ノ花。

とても賢いけれど、「人生とは~」が口癖なちょっとおませな女の子。

 

奈ノ花は賢いゆえに周りの同級生を下に見ていて、そのせいで友達はいません。

また両親は共に遅くまで働いていて、彼女のことをほとんど構ってくれません。

 

そんな彼女ですが、素敵な友達が何人もいます。

まずは、ちぎれた尻尾の猫。奈ノ花は名前ではなく『彼女』と呼んで、まるで人間の友達のように心を通わせます。

 

次は、アバズレさん。

綺麗な大人の女性で、とても賢く、奈ノ花が来るといつもおいしいお菓子やアイスで出迎えてくれます。

 

アバズレさんとは、怪我をしたちぎれた尻尾の猫を助ける時に知り合い、その時からの付き合いです。

ちなみにこの名前ですが、表札に黒マジックで乱暴に書かれていて、奈ノ花はこれを彼女の名前だと思っていて、彼女もそれでいいと言っています。

 

それから、おばあちゃん。

おばあちゃんは一人で住んでいて、マドレーヌを焼くのが得意。

 

たくさんの本を知っていて、奈ノ花におすすめの本を教えてくれます。

 

またオセロの話の中で、奈ノ花には『先を見る力』があるといい、大人は過去を見る生き物だといいます。

この言葉は、後に大きな意味を持ってきます。

 

そして最後に南さん。

初めて会った時、彼女はカッターを手首に押し当てていました。

 

彼女は高校生で、南は本名ではなく、彼女の着る制服のスカートに『南』と刺繍されていたため、奈ノ花が勘違いしたのです。

南さんは小説を書くのが好きで、でもそれを恥ずかしくて誰にも打ち明けられずにいました。

 

しかし、奈ノ花が彼女の物語を読んで感動してくれたため、少しずつ無愛想の中に優しさを見せます。

 

奈ノ花よりも年上の友人ばかりの中で、奈ノ花には気になる同級生がいました。

それは、隣の席に座る桐生くんです。

 

彼は絵を描くのが趣味ですが、それを恥ずかしくて誰にも言えません。

奈ノ花は彼の絵がうまいことを知っているので、それを自慢したらいいと言いますが、彼はそれが出来ず、奈ノ花は彼のことをいくじなしだと思っています。

 

ある日、国語の授業で『幸せとは何か?』を考えることになります。

その授業は何回も続き、奈ノ花はペアとなった桐生くんと一緒に考え、ある時はアバズレさんたちに教えてもらい、真剣に考えていくことになります。

 

 

 

奈ノ花は授業参観の日に、両親の前で『幸せとは何か』について自分なりに出した答えを披露することを楽しみにしていました。

ところが、両親は出張に出ることになり、授業参観には二人とも出られないのだといいます。

 

奈ノ花は大きな声で怒り、お母さんもつい怒鳴ってケンカに発展。

仲直りできないまま南さんの元に向かいます。

 

彼女は『また、同じ夢を見てた』と口にして起き上がり、それから奈ノ花の話を聞きます。

すると、南さんはお母さんと仲直りするようしつこく説得し、しばらくして『奈ノ花』と教えていないはずの名前を口にします。

 

そして、仲直りしないとずっと後悔することになると大声を出しますが、それは奈ノ花に言った言葉だけではなく、自分に向けられた言葉でもありました。

彼女もまた親とケンカし、仲直りできないうちに両親を亡くしてしまっていたのです。

 

南さんの必死な訴えを受け止め、奈ノ花はお母さんと仲直りすることを約束。

すると授業参観当日、両親は午前中で仕事を切り上げて来てくれて、奈ノ花は、幸せとは『ここに今、お父さんとお母さんがいてくれることです!』と発表したのでした。

 

後日、奈ノ花は南さんにお母さんと仲直りしたことを報告しに向かいますが、いつも二人で待ち合わせていた場所は取り壊しになり、それ以降、奈ノ花は南さんと会うことは二度とありませんでした。

 

南さんと会えなくなっても不思議と悲しさはなかった奈ノ花ですが、衝撃的な事件が待ち受けていました。

ある日、スーパーで万引き犯が取り押さえられるところを目撃した奈ノ花。

 

翌日、学校に行くと、桐生くんのお父さんが万引き犯であると噂が流れていて、桐生くんは学校を休んでいました。

それから久しぶりに学校に来た桐生くんですが、父親は泥棒だとクラスメイトに馬鹿にされ、言い返さない彼に痺れを切らした奈ノ花はそのクラスメイトたちを逆に言い負かします。

 

しかし、『やめてよ!』と桐生くんはかばった奈ノ花を否定し、早退。

それ以降、学校に来なくなってしまいます。

 

どうすればいいのか、奈ノ花はアバズレさんとおばあちゃんにアドバイスをもらい、先生の代わりにプリントを届けに桐生くんの家に向かいます。

奈ノ花は、桐生くんは間違っていないから戦わなくちゃ、と彼女なりに励ましますが、桐生くんには受け入れられないどころかさらに関係は悪化し、心を閉ざしてしまいます。

 

一方、周りを馬鹿にして正論ばかり言う奈ノ花の味方をしてくれる同級生は一人もおらず、彼女は学校で孤立するようになってしまいました。

奈ノ花は放課後にアバズレさんを訪れ、自分の気持ちをぶつけます。

 

すると、アバズレさんは『同じ夢を見る』と話出し、ある女の子のことを語ります。

それは奈ノ花によく似て、だけれど自分を粗末にして人生を壊してしまった女の子の話、つまり自分のことでした。

 

アバズレさんは自分のようにならないためにも、誰とも関わりを持たないのはダメだと説得し、諦めなければ素敵な出会いがあるといいます。

そう、奈ノ花とアバズレさんとの出会いのように。

 

そして、会話の途中でアバズレさんもまた『奈ノ花?』と教えていない名前を口にし、アバズレなんて呼ばせてごめんと涙します。

意味が分からない奈ノ花ですが、桐生くんともう一度向き合う勇気をもらい、アバズレさんのアパートを後にします。

 

後日、登校前に奈ノ花は再び桐生くんの家を訪れ、今度は無理な説得ではなく、幸せとは何かについて話を始めます。

奈ノ花は桐生くんの絵が好きで、彼と幸せとは何かについて考える方が学校に行くより大事だと本心を打ち明け、桐生くんは奈ノ花が無視されているのは自分のせいだと謝ります。

 

そして、奈ノ花が味方でいてくれるなら学校に行けると言い、二人は学校に行きます。

相変わらず周囲は二人に冷たいですが、二人一緒ならもう大丈夫。

 

そして、彼は幸せとは『僕の絵を好きだって言ってくれる友達が、隣の席に座っていることです』と胸を張って言い、奈ノ花もまた幸せな気持ちになります。

このことを教えてなくて奈ノ花はアバズレさんのアパートを訪れますが、彼女の住む部屋には別の男性が住んでいて、アバズレさんとは二度と会うことはありませんでした。

 

 

 

その足でおばあちゃんの家に向かいます。

彼女は寝ていて、『また、同じ夢を見ていた』と話します。

 

それ以降、おばあちゃんは寝室で寝ていることが多くなり、奈ノ花は心配になります。

そしてある日、きっと今日で最後だからと言い、明日の『幸せとは何か』についての発表を前に、おばあちゃんは自分のことを話します。

 

おばあちゃんは幸せな人生を歩んできましたが、謝ることが出来ず、大切な人を失ってしまったのだといいます。

だから奈ノ花にはそうならないように、幸せになるために選んでほしいのだといいます。

 

奈ノ花は彼女の言葉を受け止め、家を後にします。

ところが帰り道、いつもついてきた猫の彼女はありがとうとさようならを合わせたような声で鳴き、おばあちゃんの家に残ります。

 

そして、奈ノ花は課題の発表日を迎えます。

無事に自分の考えを発表すると、放課後、担任のひとみ先生に自分には友達がいたことを伝え、それから図書室で待っていてくれた桐生くんに声をかけようとします。

 

しかし、その時に奈ノ花は気が付きます。

ああ、ここで終わりか、と。

 

そして次の場面では、『また、同じ夢を見ていた』という言葉から始まり、奈ノ花は南さんそっくりの頃を超え、アバズレさんの顔に近づく年齢になっていました。

彼女はちぎれた尻尾の猫に似たマーチという猫を飼い、小説を書いています。

 

デートだからとオシャレをすると、奈ノ花は大きなアトリエにいる彼のもとに向かいます。

彼は出来上がった作品にサインを入れるところでした。

 

外国人から怖がられるかもしれないと、『あなたを殺す=kill you=桐生』とは意味を反対にした『live you』というサインを入れます。

そして、大人になった桐生くんはこれを奈ノ花にプレゼントします。つまりプロポーズです。

 

奈ノ花は嬉しく思う反面、ちゃんと言葉にしてほしくて『いくじなしっ』と言うと、彼はちゃんと言葉にしてくれました。

そして、奈ノ花は彼のプロポーズにどう答えたのかは、薔薇の下で(秘密)。

 

 

『同じ夢を見ていた』とは?

 

まずはタイトルにもあるこの言葉について。

大人になった奈ノ花、南さん、アバズレさん、おばあちゃんが口にしますが、最後まで読んだ方はもうお気づきでしょう。

 

つまり、この四人は同一人物なのです。

もちろん最初から登場する小学生の奈ノ花も。

 

奈ノ花以外の人物は、奈ノ花が違う選択をした場合の未来の自分であり、彼女たちは夢の中で小学生の自分=奈ノ花のことを見ていたのです。

これはおばあちゃんが言っていた『大人は過去を見る生き物』からも分かると思います。

 

一方、奈ノ花には『先を見る力』があると言われていて、それはつまり、未来の自分=南さん、アバズレさん、おばあちゃんを見ていたのです。

こうして互いに『あなたは幸せですか?』と問い掛け合い、それぞれの幸せを見つけていったのです。

 

それぞれの詳しい解説は、後述します。

 

 

南さんの正体

 

南さんは、お母さんと仲直りできなかった奈ノ花の未来の姿です。

最後に、授業参観の日に飛行機事故があったことが明かされ、南さんの両親はそこに乗り合わせていて、彼女と仲直りすることなく亡くなってしまったのです。

 

一方、奈ノ花は南さんと約束し、お母さんと仲直りします。

その結果、両親は午前中で仕事を切り上げることになり、事故にあった飛行機に乗り合わせずに済んだのです。

 

 

アバズレさんの正体

 

アバズレさんは、同級生たちから無視され、他人との関わりを断ち切ってしまった奈ノ花の未来の姿です。

そして人生に意味などないと絶望し、自分を粗末に扱う。

 

そんな彼女だったから、悪意のある人間が表札に『アバズレ』なんて言葉を書いたのです。

最終的にアバズレさんは奈ノ花の正体に気が付き、『アバズレと呼ばせてごめん』と謝りますが、それはこんなに可能性を持った奈ノ花を今の自分のようにしてしまってごめんという意味が込められているのだと思います。

 

奈ノ花はアバズレさんの言葉に従い、諦めずに桐生くんを説得し、一緒に学校に通うことができました。

 

 

おばあちゃんの正体

 

おばあちゃんは、桐生くんに謝れずに、いつまでも隣にいることが出来なかった奈ノ花の未来の姿です。

彼女の家には桐生くんの絵が置いてありますが、彼は海外で暮らしていて、結婚はしていません。

 

おばあちゃんは自分の人生は幸せだったと言いますが、それでも謝れずに大切な人を失ったことを後悔していました。

一方、奈ノ花はおばあちゃんの言葉を受けて緊張する桐生くんの手を握ります。

 

これがきっかけとなり、二人はいつまでも隣にいる存在に変わったのでした。

 

 

猫の正体

 

最後に、いつも一緒にいてくれたちぎれた尻尾の猫について。

実は彼女は夢の中にしか登場しておらず、現実部分にあたる奈ノ花の家、桐生くんの家、学校には登場しません。

 

さらに終盤、ありがとうとさようならを合わせたような声で鳴いて、おばあちゃんの家に向かっていきましたが、これは夢がもうすぐ終わることを意味しています。

そして、その通りに学校で課題の発表を終えると、奈ノ花を夢から覚め、現実=アバズレさんの年齢に近づき、彼女の顔に似てきた奈ノ花に戻るのでした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

心温まるストーリーに、終盤に向けて散りばめれたピースが一つに合わさるあの驚きと感動。

 

ライトノベルのような扱われ方をしているので、手に取ることを躊躇してしまう方もいるかもしれませんが、本書は幸せが溢れた良作です。

どうしても本屋で買うのが恥ずかしければ、今は電子書籍という手もありますので、まずは読んでみてください。

 

また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)

また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)