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『金魚姫』ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

金魚姫 (角川文庫)

 

恋人にふられ、やりがいのない仕事に追われていた潤は、夏祭りで気まぐれにすくった琉金にリュウと名をつけた。その夜、部屋に赤い衣をまとった謎の美女が現れ、潤に問いかける。「どこだ」。どうやら金魚の化身らしい彼女は誰かを捜しているようだが、肝心な記憶を失い途方に暮れていた。突然始まった奇妙な同居生活に、潤はだんだん幸せを感じるように。しかし彼女にはある秘密があった。温かくて切ない、ひと夏の運命の物語。

【「BOOK」データベースより】

 

荻原さんの作品はこれで二度目です。

夏に読むのにぴったりだと思って手に取った作品ですが、予想以上に引き込まれました。

 

序盤はファンタジー要素やキャラ設定が目を引きますが、話の事情が見えてくるにつれて感情移入がより深くなり、最後は明るくも切ない気持ちで一杯になりました。

夏祭りなとで感じる切なさが好きな方にはおすすめです。

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

死にたい男と金魚

 

江沢潤は転職してメモリアル商会という仏壇と仏具を取り扱う会社に入社しますが、これが絵に描いたようなブラック企業。

さらに恋人の亜結と別れ、鬱病にかかってしまいます。

 

そんなある日、潤は食事をとろうと夜店に出向き、そこでなぜか金魚すくいに目を引かれ、自分の人生をかけることにします。

見せ玉である出目金がとれなければ、死のうと。

 

すると、水の中にはさらに大物の鮮やかな琉金がいて、潤は琉金に狙いを定めます。

無謀に思えた挑戦でしたが、なんと潤は無事に琉金をすくいあげ、水草と一緒に袋に入れて持ち帰ります。

 

まさかとれると思っていなかったため、飼い方が分かりません。

潤は本屋で飼育のガイドブックを買おうと考えますが、あったのは『金魚』という古めかしい本だけで、仕方なくそれを購入します。

 

ペットショップはすでに閉まっていたため、亜結が置いていったアンティークの瓶を水槽代わりにして琉金をもらった水草と一緒に飼います。

ところがその夜、かすかな物音に気が付いた潤は目を覚ますと、出した覚えのないシャワーが出しっぱなしになっていました。

 

さらに床には空っぽのえびせんの袋。

いくら酔っているとはいえそんなことをするとは思えずにいると、潤はあるものを見つけて驚愕します。

 

部屋に長くまっすぐな黒髪をしたずぶ濡れの女が立ち、潤は睨んでいたのです。

潤は幻覚を見ているのだと何度も目を閉じますが、女は消えず、どこへやったと意味不明な言葉を繰り返します。

 

何度目を閉じても女は消えず、ついに潤は気を失ってしまいます。

 

 

幽霊が見える

 

翌朝、女は消えていました。

しかし部屋はひどく荒れていて、自分でやったと思うには無理がありました。

 

出勤時間もあり、一旦、女のことを忘れて出勤する潤。

今日もメモリアル商会では人格を否定され、仕事をとるまで休むなと恫喝されます。

 

午前は電話セールス、午後は外回りでの営業です。

しかし、飛び込みでそう簡単に買ってもらえるわけもなく、潤はすぐに疲弊します。

 

そんな時、潤はふと金魚と水替えと餌やりをしなければと思い立ち、仕事用の携帯はアリバイのために霊園の墓石の香炉に隠し、急いで家に戻ります。

帰り際に金魚の飼育セット一式を購入し、潤は琉金のことをリュウと名付け、買ってきた水槽に移します。

 

するとリュウが消え、代わりに昨夜の女が現れ、潤にえびせんを要求します。

話を聞くうちに、どうやらこの女は潤がすくった琉金であることが判明します。

 

当然、潤は混乱しますが、仕事を放り出してきているので長居することもできず、女を家に残して霊園に戻ります。

携帯を取りに行くと、お墓の前に老婆がいて、生け花を整えていました。

 

潤が素直に謝り、自分がセールスマンであることを話します。

すると老婆は仏壇が欲しいから後日うちに来て欲しいと言い、お金は額縁の裏にタンス預金があることを教えてくれます。

 

偶然にしろ仕事がとれ、リュウが欲しがっていたえびせんを持って帰宅する潤。

するとやはりリュウは人間の姿で現れ、しばらくここに住むのだといいます。

 

翌日、潤は言われた住所を訪れ、出てきた女性に昨日の老婆とのことを説明しますが、女性は怪訝な顔をします。

なんと老婆は女性の母親で、三週間前に亡くなっていたのです。

 

潤は信じられず、服装など事細かく伝えると、どれも女性の母親を示すことばかりであり、預金も確かに額縁の裏にありました。

それで女性は潤の言うことを信じ、老婆は

の欲しがった仏壇を買ってくれるのでした。

 

その後、同じ霊園でもう一つ案件がとれ、どうやら潤は幽霊が見えるようになったようでした。

原因はリュウかと思い、家に帰ると彼女のことを聞きます。

 

しかし、リュウはほとんど何も覚えておらず、覚えていないほど年を重ねたのだといいます。

話す言葉から出身は日本でないことが推測され、見た目は二十歳かそれ以下。

 

リュウにも死者が見えるようで、潤に幽霊が見えるのも彼女の影響で間違いなさそうでした。

 

 

 

リュウの事情

 

幽霊が見えるようになって以降、潤は順調に仕事がとれるようになります。

また現代のことを何も知らないリュウを連れて出かけ、人としての喜怒哀楽を思い出していきます。

 

しかし、リュウは人の姿を長時間保つことができず、常に水を携帯し、金魚の姿に戻る必要がありました。

そんなある日、テレビで蘭鋳品評会のニュースが流れ、リュウはそこに映る黒いらんちゅうが知っている人間に似ているのだといいます。

 

リュウのことを考えると、他に人間に化けられる金魚がいてもおかしくはありません。

ということで、潤はリュウの熱意に押されて金魚の品評会に出向きます。

 

リュウがお目当ての黒いらんちゅうを探して先に行く中、潤は見知らぬ中年の男に声を掛けられます。

彼が言うには黒いらんちゅうは正統ではなく、中国金魚を扱っている業者なら扱っているかもしれないと教えてくれます。

 

男の差し出す名刺には金魚研究家の長坂常次郎と書かれていて、それは潤の買った本『金魚』の作者と同じ名前でした。

彼はリュウが金魚であることを一目で見抜き、全てが必然だと言って姿を消します。

 

代わりに何もなかった水槽に頂天眼という金魚が泳いでいました。

これ以降、潤は度々彼の言葉を思い出すことになります。

 

家に戻る時、誤って焼酎の残ったペットボトルの水の中に入れてしまったため、リュウは酔っぱらってしまいます。

意味不明な言葉を口にする中で『王凱(わんかい)』という人の名前を口にします。

 

それはかつての恋人であり、潤はそのことを知りません。

 

 

元恋人との再会

 

メモリアル商会は業績不振から東京支社をたたみ、長崎に支社を作り、社員の半分を首にするという噂が立ちます。

潤は最近の業績が良いこと、出身が長崎であることから社長に気に入られていました。

 

そんな時、家に亜結が訪れます。

潤は街中で男と一緒にいるところを見かけたことを話すと、その男とはすでに別れたのだと言います。

 

その時、高校の友人から亜結について書かれたメールが届き、潤は絶句します。

一方、亜結はその男に騙されたことを話すと、姿を消してしまいます。

 

メールの内容。

実は亜結は仕事で情報漏洩をしてしまい、それを苦にして電車に向かって飛び込んで死んでいたのです。

 

彼女は死んでから、潤に別れを告げに来たのです。

潤はまだ未練のあった亜結の死に涙するのでした。 

 

 

 

水草を探す

 

リュウとの生活にも慣れたある日、金魚の姿をしたリュウが腹を上にして動かなくなってしまいます。

あれこれ手を尽くすうちに、リュウの体調不良の原因が腐ってしまった水草にあることが判明します。

 

水草を取り除くとリュウは元気を取り戻しますが、あの水草を捨てるなと言ってききません。

潤が調べてみると、その水草はオキチモズクだと分かりますが、九州のごく限られた清流にしか生育していない幻の水草であり、絶滅危惧種なのだといいます。

 

そんな時、社長の長崎視察についていくことになり、前乗りしてリュウと一緒にオキチモズクを探すことを決める潤。

生息地をめぐる中で、偶然にもオキチモズクを見つけることに成功します。

 

宿泊するホテルでオキチモズクを消毒すると、リュウと一緒にいれます。

目的のものも見つけ、社長たちと合流するまでの間で長崎を観光する二人。

 

リュウは長崎にきて様々なことを思い出し、またリュウが長崎常次郎のもとで飼われていた琉金であることが判明し、リュウが長い間生きてきた、もしくは何度も生まれ変わっていることが分かります。

またリュウはお店で売られていた一匹の金魚から記憶を吸い取り、その金魚が自分の知るヂイというフナの子孫にあたること、そして自分の記憶を取り戻します。 

 

 

よみがえる記憶

 

リュウは王凱を殺害されたこと、千年以上生きていること、どのようにして金魚になったのかを語り、彼女は王凱を殺害した劉顯の血が流れるものに復讐するために蘇ったのでした。

潤はリュウのために何ができると問いかけ、彼女は抱かれることを選択します。

 

いつの間にかリュウに好意を持っていた潤は彼女の魅力に逆らうことなどできず、二人は一つになるのでした。 

 

 

真実

 

リュウと一つになり、彼女に好きだと告げた潤。

二人はさらに観光し、潤の実家にも寄ります。

 

母親に対してわだかまりを抱いていた潤ですが、リュウのおかげで母親と向き合うことができました。

しかし、旅の終盤、リュウは潤に別れを告げます。

 

彼女は劉顯の血を継ぐものを探していて、直系の者が日本に流れてきたから追っていきのだといいます。

潤はある時からメモリアル商会の社長がそれにあたるのではと予想し、読者もそう思っていたと思います。

 

しかし、リュウが探していた人、それは潤でした。

彼女は潤の母親を見て、また母親の家系の墓に来て、それを確信します。

 

リュウは何度も違えば良いと願い、しかし期待は裏切られ、潤を殺そうと首を絞めます。

しかし、リュウに潤を殺すことはできず、一緒にいたかったと言い残し、崖の下に流れる川に飛び込みます。

 

潤は必死でリュウを探し、ようやく琉金となったリュウを見つけ、一緒に帰ります。

しかし、リュウは潤の前で二度と人の姿に戻ることはありませんでした。

 

 

結末 

 

社長を迎えに行かなかったことでメモリアル商会をクビになり、長崎の斎場に就職した潤。

その間に吉枝という女性と結婚し、彼女との間に楊河という息子をもうけ、今は塾の講師をしながら主婦をしています。

 

あれからもリュウを飼っていましたが、ついに寿命を迎え、リュウは死んでしまいます。

潤はリュウのお墓を作ろうと言い、楊河もついてきます。

 

その時、実は楊河が夜目を覚ました時、何度もリュウが人間の姿に戻っていたことが分かり、いつも楽しそうだったという様子を聞いて潤は涙します。

復讐を終え、ようやく眠ることが出来たのだと。

 

潤は赤く染まった空を眺め、夕暮れ時には心がざわめくのだろうと思うのでした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

二人が心を通わせるまでの描写が丁寧に描かれ、お互いが望む形とは違ったかもしれませんが、ちゃんと幸せになってくれたことが本当に嬉しかったです。

 

あとメモリアル商会の部分も力を入れて書かれていたので、見事に騙されてしまいました。

夏に読むにはぴったりの切なくて、でも心が温まる素敵な物語でした。

 

金魚姫 (角川文庫)

金魚姫 (角川文庫)