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徹底ネタバレ解説!『高校入試』湊かなえ【著】

高校入試 (角川文庫)

 

悪意は拡散する――。衝撃の結末が待ち受ける、『告白』以来の学校ミステリ! 
この作品を書けたことで、小説家として次のステージに一歩進むことができました。
――湊かなえ
県下有数の公立進学校・橘第一高校の入試前日。新任教師・春山杏子は教室の黒板に「入試をぶっつぶす! 」と書かれた貼り紙を見つける。迎えた入試当日。試験内容がネット掲示板に次々と実況中継されていく。遅れる学校側の対応、保護者からの糾弾、受験生たちの疑心。杏子たち教員が事件解明のため奔走するが……。誰が嘘をついているのか? 入試にかかわる全員が容疑者? 人間の本性をえぐり出した、湊ミステリの真骨頂!

【Amazon 内容紹介より】

 

高校入試の時のことをみなさんは覚えていますでしょうか?

僕は鮮明に覚えているのですが、受験する高校であればどこでも良いと思って意外と気楽に過ごしていた気がします。

 

それでも、もしあの時の自分に言葉をかけるとすれば、『高校入試に失敗しても人生に影響はないから、楽しんで臨みなさい』でしょうか。

でも、それは終わった今だからこそ言えるわけで、受験生からすれば文字通り人生をかけた闘いのはずのです。

 

本作は、そんな高校入試をテーマに、過去に高校入試で失敗した何者かが高校入試をぶっつぶすと予告し、様々な不祥事が巻き起こるというものです。

主に教師陣に視点が置かれ、今の学校体制の脆弱さ、問題点が浮き彫りになってくるところが見どころです。

 

一方で、登場人物が多いため、内容を把握しながら読み進めていくことが難しいという側面もあります。

そこでこの記事では、登場人物を整理しながら、あらすじや個人的な感想を交えて本作の魅力をお伝えしたいと思います。

 

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

登場人物

 

本作には二十三人もの人物が登場します。

しかもほんの少ししか登場しない人物もいるため、途中で混同してしまうこともあると思います。

 

そんな人のためにここで登場人物を整理したいと思います。

読み進める上での参考になれば幸いです。

 

また名前の横にドラマ化した際のキャストも表記しておきます。

その俳優を想像しながら読むと、見分けがつきやすいかもしれません。

 

 

春山杏子(長澤まさみ)

英語担当。帰国子女。大手旅行会社に勤めていたが、高校生たちにより近くから接するために教師になった。

 

的場一郎(山本圭)

舞台となる県立橘第一高等学校、通称・一高の校長。昔は優秀だったようだが、今は自分の立場を守るために保守的。

 

上条勝(清水一彰)

教頭。神経質だが、パソコン教室に通ったおかげでパソコン操作が年齢のわりに達者。

 

荻野正夫(斉木しげる)

情報処理担当。入試部長。教師からの信頼は厚い。

 

松島崇史(羽場祐一)

英語担当。息子の良隆が一高を受験するため、今回は受験の運営から外されている。

 

相田清孝(中尾明慶)

体育担当。みどりと衣里奈に対して二股をかけている。

 

小西俊也(徳山秀典)

英語担当。杏子に気のある素振りを見せている。

 

村井祐志(篠田光亮)

数学担当。松島のかつての教え子。

 

滝本みどり(南沢奈央)

音楽担当。相田と交際している。

 

水野文昭(阪田マサノブ)

社会担当。厳格で、昇進することしか頭にない。

 

坂本多恵子(高橋ひとみ)

英語担当。感情的になって誰かに当たることがよくある。

 

宮下輝明(小松利晶)

美術担当。水野とは一高時代の同級生。一高卒であることを誇りに思っている。

 

石川衣里奈(山崎紘菜)

一高の二年生。相田と交際している。

 

沢村幸造(入江雅人)

一高同窓会会長。一高OBであることを誇りに思っているが、それが行き過ぎて横柄な態度をとることがしばしばある。

 

沢村哲也(荒木宏文)

幸造の息子。一高を卒業するも、今はフリーターをしている。

 

沢村翔太(清水尋也)

幸造の息子。辺りに威張り散らしている。

 

田辺淳一(柾木玲弥)

受験生の一人。兄が受験失敗したことにある思いを抱いている。

 

田辺光一(中村倫也)

淳一の兄。受験に失敗し、その時のことを題材にしたドキュメンタリーを作成した。

 

松島良隆(高杉真宙)

崇史の息子。翔太から嫌がらせを受けていることにうんざりしている。

 

芝田麻美(美山加恋)

父親が県議。親からは一高を受験することを強要されていて、内心は友達と同じ高校を受験したかった。

 

芝田昌子(生田智子)

麻美の母。麻美の受験を全力でサポートしているように見えるが、人からの評価を気にしているだけで娘を見ていない。

 

徳原優介(倉貫匡弘)

杏子の勤めていた大手旅行会社の元同僚。

 

寺島俊章(姜暢雄)

杏子が教師を目指すきっかけをくれた人。しかし、とある事件がきっかけで精神をすり減らし、飲酒して道路に飛び出てて車に轢かれて亡くなった。

 

 

 

入試準備

 

本書は、一高に関する掲示板への書き込みと人物視点の繰り返しによって物語が進行していきます。

 

県立橘第一高等学校、通称・一高は県下有数の進学校で、その地域では一高を卒業することが最高峰であり、その後どんなに落ちぶれた人生を送ろうとその人は一生もてはやされる風習がありました。

そんな一高では高校入試を控え、教師全体がピリついていました。

 

というのも、過去に採点ミスが発覚し、例年以上に外部の目が厳しく光っているからです。

そこで今年は入試部長の荻野を中心に、より気を引き締めて臨むことになります。

 

帰国子女で、大手旅行会社から転職した春山杏子は、新人らしく熱意を持って高校入試の準備に励みますが、一高の伝統、そしてそれを取り巻く周囲の環境に戸惑います。

さらに様々な事情が絡み合い、ただの高校入試がとんでもない事態に陥ります。

 

音楽教師の滝本は、彼氏と二人で旅行するために北海道にある超有名リゾートホテル『インディゴ』の予約を杏子に依頼し、杏子は昔の同僚・優ちゃんにお願いして二人分の予約をとります。

みどりは学校内に彼氏がいますが、この時点では誰かは分かりません。

 

英語教師の松島は、息子の良隆が一高を受験するため、保護者からのクレームを回避する目的から受験の運営から外されます。

彼は、同窓会会長の沢村をはじめ、所詮は公立校である一高のことを『橘東大』と恥ずかしげもなく言ってのける卒業生たちに嫌悪感を抱いていました。

 

生活指導部長の坂本は以前から採点ミスを繰り返し、今回の入試に対して神経質になっています。

他にも様々な教師たちがそれぞれの思いを抱える中、翌日に控えた高校入試のために会場設営を始めます。

 

しかし、そこで異変に気が付きます。

職員以外立ち入り禁止の場所にあるロッカーの中から『入試をぶっつぶす!』と書かれたメモ用紙が発見されます。

 

しかもそこだけでなく、入試会場となる各教室からも同じ文字が書かれた模造紙が黒板に貼られていたのです。

生徒のいたずらだと思われましたが、念のために校長、教頭、荻野で構成される本部に報告がいきます。

 

その後も準備を進めて行きますが、杏子宛のラブレター、携帯電話が見つかり、携帯は坂本のものであることが判明します。

坂本の携帯は通勤用の車の中に置いていたはずなので、誰かが車から盗んだことになります。

 

坂本は過去の出来事から自分に恨みを覚えているだろう二年生の石川衣里奈を犯人だと決めつけますが、証拠がないため周囲が早まらないよう注意します。

イレギュラーな出来事が続き、一部の教師からは対策を考えるべきとの意見が出ますが、事なかれ主義の校長・的場は明日に備えて厳重に注意するようにとそれらしい言葉を並べ、問題を後回しにします。

 

こうして不安を抱えたまま、入試当日を迎えることになります。

 

 

本番当日、予測外の出来事

 

入試当日。

 

滝本は杏子から渡されたインディゴリゾートのゴールドカードを失くしてしまいます。

カードがなければ例え有名人でも宿泊することはできず、杏子はダメ元で優ちゃんにどうにかならないかお願いします。

 

今回、受験生でスポットライトが当たる人物は松島の息子・良隆の他に三人がいます。

 

まずは同窓会会長の沢村の息子である翔太。

彼は周囲に強く当たる嫌な性格をしていますが、一方で学力がギリギリですが親からは合格して当然だというプレッシャーをかけられ、精神をすり減らしています。

 

次に芝田麻美。

彼女の父親は県議会議員で、母親も受験ママのように娘を全力で応援している風に見えますが、周りの評価ばかり気にして娘を見ていません。

 

麻美は親の愛情を感じないことに不満を抱き、また中学の友達と受験校の違いから仲間外れにされることが多くあり、人との繋がりに飢えています。

 

最後に田辺淳一。

彼の兄は一高を受験しましたが不合格、さらに採点ミスが発覚した過去があり、受験のせいで人生が狂った兄を見て受験にある思いを抱いていました。

 

試験直前。

携帯が鳴ると受験妨害として失格にすると前置きした上で、受験生の携帯が回収されていきますが、麻美は持っていないと嘘をついて携帯を渡しませんでした。

 

試験は何事もなく順調に進む中、滝本はなんとかインディゴリゾートにカード無しで泊めてもらえる方法はないかと様々なキーワードで検索をかけていると、とある掲示板を見つけます。

そこには、一高のことだろうと推測できる書き込みが多数され、書いてあることが本当だとすれば、誰かが入試をぶっつぶすために何か仕込んでいることになります。

 

一同はそれを本部に報告しますが、曖昧な表現で一高のこととは断定できないから問題ないと突っぱねられてしまいます。

一方で、掲示板の存在が教師にバレたことが書き込まれ、明らかに校内にいる人間が書き込んでいることが分かります。

 

さらに問題はこれだけではありません。

在校生立ち入り禁止の中、衣里奈は中学の制服を着て校内に潜入し、彼氏である体育教師・相田と密会していました。

 

後で判明しますが、滝本の彼氏とは相田のことであり、相田は二股をかけていることになります。

相田は誕生日だから会いたかったという衣里奈の行動に肝を冷やし、同僚にこのことがバレないかと心配していました。

 

午後、一高に杏子の元同僚である優ちゃんこと徳原が訪れ、再発行したゴールドカードを持ってきます。

たまたま最初に対応したのが滝本だったため、彼女はそれを受け取ります。

 

色々なことがありましたが、試験は最後の英語を残すのみで、あと少しで問題なく終わるはずでした。

しかし、ここでさらなるトラブルが発生します。

 

 

着信音が鳴り響く

 

最後の英語の試験中、突然携帯の着信音が鳴ります。

発信源は麻美の携帯です。

 

すぐに没収され、麻美違反行為をしたとして退室を命じられますが、過呼吸を起こしてしまい、保健室に運び込まれます。

母親も駆け付け、荻野は携帯が鳴ったら失格であることを伝えますが、母親は納得しません。

 

さらに沢村会長は携帯が鳴って受験妨害があったにも関わらず何の補填もないことに腹を立て、校内に乗り込みます。

麻美の母親と合流してしまったため、事態はますます悪化します。

 

一方、インディゴリゾートのカードを盗んだのは衣里奈であることが判明します。

彼女は相田が他の誰かと付き合っていることを知った上で、それを妨害しようとしたのでした。

 

 

保護者の圧力

 

同窓会会長の息子に県議の娘。

説得が難航する中、麻美は黒板に貼ってある注意書きには、携帯が鳴ったら失格になるという文言はなかったと主張し始めます。

 

すると、他の教室のものには書かれているのに、麻美たちがいた教室の注意書きにはその文言がなかったことが判明し、事態はますます複雑になります。

場合によっては訴えるとまで言われて校長は怯み、携帯の件で麻美を失格にすることは取り消すと言ってしまいます。

 

麻美の母親はそれで一応納得しますが、合否に関係なく点数の開示請求をすることを宣言します。

『入試をぶっつぶす!』とはこのことだったのか?

 

一同はどうも釈然としないと思いながらも、採点に取り掛かります。

その前に、数学教師の村井が、試験中に見つけたと言って掃除用具入れの中から見つけた携帯を取り出し、杏子が持ち主であることが判明します。

 

坂本に続き、なぜ杏子の携帯が?

理由は分かりませんが、試験中に鳴らなくて良かったと思い、採点に取り掛かります。

 

しかし、トラブルはまだ終わっていませんでした。

 

 

足りない解答用紙

 

英語の答案用紙が一枚足りないことに、美術教師の宮下が気がつきます。

答案用紙がない受験番号は四六番。

 

また白紙の答案用紙が一枚混ざっていたため、諦めて白紙のまま提出したことを疑いますが、四六番は他の教科は軒並み高得点で、諦めたとは考えにくい状況にあります。

考えても分からず、他の教科の答案用紙の中から出てくることを期待して、採点を続けます。

 

一方、麻美の処遇に関しても頭を悩ませていました。

今更携帯が鳴ったことを理由に不合格にすれば、訴えられることは避けられません。

 

しかし、もしかしたら本当に点数が足りずに不合格かもしれません。

不謹慎ですが、そんな可能性にかけて採点を続けます。

 

そして採点が終了。

ミスも目立ちましたが、複数人による確認作業で事前に見つけて修正し、全ての教科の得点をパソコンに打ち込んでいきます。

 

結局、英語の答案用紙は一枚足りず、現場に居合わせた教師から荻野が聞き取りを行い、行方を探します。

一方、滝本が衣里奈が校内にいたのを目撃し、荻野に報告します。

 

得点の入力が終わり、合否判定は最悪のケースを迎えます。

白紙の答案用紙を提出したと思われる四六番は他の教科全てで最高得点をとり、このまま不合格にするには明らかに不自然です。

 

さらに麻美はギリギリ合格ラインより上ですが、四六番の結果次第では不合格になります。

さらにその一点上は沢村会長の息子・翔太であり、どう対処したところで問題が起きることは避けられそうにありません。

 

そんな時、再度沢村会長が学校を訪れ、その手には受験番号五五番、翔太の答案用紙が握られています。

しかし、翔太の答案用紙はちゃんとありますし、沢村の持ってきた答案用紙はなんと満点でした。

 

翔太はカンニング疑惑を持たれていて、得点も合格ギリギリです。

父親にお願いして、得点の高い答案用紙を用意させたのでしょうか?

 

しかし、その答案用紙はどこから入手した?

問題はそれだけでなく、沢村が学校に乱入したことが掲示板に書き込まれ、今も誰かに実況中継されていることが判明します。

 

そこに麻美の母親も再び登場し、二人とも掲示板の存在を知り、何事かと応接室に駆け込みます。

 

沢村は掲示板の書き込みを見て、あらぬ疑いを持たれぬように退室することを麻美の母親に提案しますが、母親はすでに疑いをかけられているのだから、学校が謝罪会見を開くべきだと譲りません。

一方、トップに判断を委ねた他の教師たちは、第三者が学校に潜んでいるのではないかと捜索しますが、空振り。

 

代わりに犯人はM先生だという書き込みがされ、それが真実なら自分たちの中に犯人がいることになります。

 

 

教師の中に犯人がいる

 

しかし、書き込みの信憑性は定かではなく、仮に正しいとしても、M先生に該当する教師がほとんどで、これだけで断定することは困難です。

一方、水野が沢村、麻美の母親を説得し、その場は切り抜けることができそうです。

 

二人がいなくなり、ようやく部外者抜きで今後の対策を練ろうとしますが、今度は翔太の答案用紙が二枚見つかったこと、そしてそれぞれの点数と合否判定が掲示板に書き込まれ、一同は騒然とします。

答案用紙は対策本部で保管しているため、何者かが潜入して答案用紙を盗み見たのです。

 

教師の間で犯人捜しが行われますが、なんとここで衣里奈が校内に潜んでいるのが見つかり、教師たちの前に連れてこられます。

校内の情報を書き込んでいたのは、彼女でした。

 

衣里奈のことを気遣い、杏子と相田が別室で話を聞くことに。

一方、田辺光一は掲示板の書き込みを見つけ、弟が入試をぶっ潰す計画を立てたことを知り、なぜそんなことをしたのかを問い詰めます。

 

杏子は慎重に衣里奈から話を聞くと、彼女はあくまで下っ端で首謀者は別にいること、ネットで知り合ったため誰が協力者なのかは知らないといいます。

さらに相田と付き合っていることを打ち明け、それを盗み聞きした滝本が乱入し、醜い言い争いに発展します。

 

しかし、そこで村井が何かに気がつき、杏子に事情を説明するよう要求します。

同時に的場から指示がでるから集まってほしいと荻野が招集をかけ、答案用紙の件とは無関係と思われる松島と衣里奈を先に帰します。

 

そこに滝本と同行し、残りは校長室に集合します。

そして、杏子は計画に加担したことを打ち明け始めます。

 

彼女は首謀者に英語の解答用紙を二枚配り、答案用紙が別の場所から発見される手伝いをしたのです。

それは、入試をぶっつぶすためでした。

 

具体的には、学校がどのように対処するのかを見たかったのです。

しかし、そこで見たのは保身のために動く醜い大人たちの姿でした。

 

杏子が入試をぶっつぶそうと考えた理由。

それはまだ大手旅行会社に勤めていた頃に話は遡ります。

 

杏子は高校生の修学旅行担当で京都を訪れ、同僚の徳原の大学の先輩である寺島と出会います。

生徒のことを一番に考える熱血教師で、修学旅行後も三人で飲みに行き、杏子は寺島に惹かれて交際を始めます。

 

そして、寺島に憧れて教師を目指すことになりますが、その前に寺島は飲酒による飛び出しで車に轢かれて亡くなってしまいます。

杏子は、直接の原因ではないが、高校入試が寺島を追い詰めたのだと考えていました。

 

当時、入試に落ちたことを苦に自殺した生徒がいて、後にその生徒の両親が開示請求をしたところ、三点分の採点ミスが見つかったのです。

採点ミスが無ければ、息子は死なずに済んだのでは。

 

泣き崩れる両親を前にしても、学校の都合で寺島は謝罪することすら許されませんでした。

このことはいつまでも寺島を追いつめ、結果として事故に繋がったのです。

 

ここで杏子の過去の告白は終わりますが、今回の計画に荷担したのはそれだけが理由ではありませんでした。

彼女は見てほしいと行って、教師たちに『ぼくの高校入試』というウェブサイトを見せます。

 

そのサイトは淳一が作成したもので、そこには光一が高校入試に失敗し、開示請求までしたことをドキュメントとして公開していました。

結果として、学校に不備はなく、ただ光一が英語の解答用紙に受験番号を書き忘れていたのです。

 

ドキュメントの最後は、受験番号は必ず書くこと、そして学校側にも入試とは、受験生の人生がかかっていることを理解してほしいという言葉で締め括られていました。

教師の大半はこのドキュメントのことは知っていましたか、その後サイトに誹謗中傷が集まり、光一の精神が不安定になったことまでは知りませんでした。

 

さらにそこには一高の教師も書き込んでいて、学校を糾弾するのはおかしいと繰り返し書き込んでいました。

それは、荻野でした。

 

彼こそ今回の計画の協力者の最後の一人であり、当時、ネットに書き込んだことを深く後悔していました。

 

そして、掲示板に『サクラチル』と書き込みます。

それは、計画終了の合図でした。

 

 

結末

 

計画の首謀者は淳一でしたが、荻野は自分が首謀者だと彼をかばいます。

淳一のもう一枚の答案用紙に翔太の受験番号を書き、見つかるように仕組んだのも彼でした。

 

結局、淳一は受験番号忘れということで不合格になります。

そして、掲示板に書き込まれた文字はピンク色に代わりに、桜の花びらが散るように崩れていくのでした。

 

合格発表当日。

良隆、翔太、麻美は無事に合格しました。

 

淳一がその結果を見届けると、計画の共犯者である杏子から声を掛けられます。

そこで杏子は初めて淳一が首謀者であり、荻野が彼をかばったことを知ります。

 

 

今回の責任をとって、荻野は辞職。

衣里奈は春休み中ですが五日間の停学処分。

 

光一は立ち直り、通信制の高校に通うことになりました。

また杏子も辞表を提出しましたが、同じ過ちを繰り返さないためにも教師を続けるべきだと的場に説得され、不登校の子供が通うフリースクールに異動することを選びます。

 

他に松島は良隆が入学するため橘第三高校に異動し、村井も常勤講師として三校に赴任します。

水野は教育委員会に異動し、相田は教師として修行し直すために県内一荒れている男子校。

 

多くの教師がいなくなり、それでも一高にはまた春が訪れます。 

生徒、教師それぞれが新しい春を迎えるのでした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

非常に視点の入れ替わりが激しく、内容を把握するのが大変な本書なので、内容の整理に役立てば幸いです。

 

そして、これだけの人物の心情を掘り下げ、それを物語として昇華する湊さんに改めて驚かされました。

 

高校入試 (角川文庫)

高校入試 (角川文庫)