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『赤い猫』ネタバレ感想 仁木悦子【著】

赤い猫 (ちくま文庫)

 

爽やかなユーモアと本格推理、そしてほろ苦さを少々。日本推理作家協会賞受賞の表題作ほか日本のクリスティーの魅力をたっぷり堪能できる傑作選。

【Amazon 内容紹介より】

 

「日本のクリスティ」の謳い文句につられて購入した作品です。

ミステリー好きを自称していましたが、仁木さんのお名前を聞いたのはこれが初めてでした。

 

三十年以上前に亡くなられた作家さんとのことで、僕を含めてその頃に生まれていない方はご存知ない方も多いかもしれません。

本作は表題の『赤い猫』を含めた短編で構成されているのですが、どれもシンプルにミステリとしての魅力に溢れていて、ミステリを夢中で読んでいた幼い頃の記憶が蘇ってきました。

 

時代背景もあり、多少古臭く感じる部分もありますが、無駄がなく平坦な言葉選びはとても読みやすく、ミステリの入門としても適していると感じました。

 

そこでこの記事では、そんな本書の魅力をお伝えするために、表題の作品についてご紹介し、さらに作者の仁木さんについてもご紹介したいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

仁木悦子とは?

 

仁木さんは1928年に生まれましたが、四歳の時に胸椎カリエスを発症して病床と車椅子での生活を余儀なくされました。

初めは童話作家として注目されていましたが、初の長篇ミステリ『猫は知っていた』がベストセラーとなり、推理作家としても活躍するようになります。

 

当時は寝たきりの女性作家として、本来注目されるべきポイントとはずれた形で注目を集めますが、やがてその実力が評価され、『日本のクリスティ』と呼ばれるまでに至ります。

体調のことがあり作品数こそ多くはありませんが、どの作品も力作揃いだそうです。

 

本書の解説で日下三蔵さんは、国産ミステリの歴史の転換点となった作家として『江戸川乱歩』『松本清張』『綾辻行人』を挙げていますが、そのうち松本清張よりも早く革新的な作品を発表していた作家として仁木さんのお名前を挙げていました。

 

アガサ・クリスティーといえば、ミステリ好きであれば知らない人はいないであろう作家であり、そこからも『日本のクリスティー』と称される仁木さんの実力がうかがえると思います。

 

 

 

赤い猫

 

では、実際に作品の内容について。

こちらは、本作の表題となった作品です。

 

沼手多佳子は勤めていた会社が倒産し、次の仕事を探していたところ、新聞で話し相手の女性を求むという広告を見つけ、応募します。

多佳子は古めかしい豪華な屋敷に向かい、主人である大林郁、この家の資産管理を任されている河崎という弁護士、家政婦の宝田フジエと面接し、見事合格。

 

こうして年老いた主人である郁に仕えることになった多佳子。

多佳子は初め、ほとんどの感情の宿らない郁に対して苦手意識を持っていましたが、郁を見直すきっかけとなった事件が起きます。

 

ある日の早朝、フジエが泥棒に入られたと騒ぎ出したのです。

調べてみると、脱衣室と浴室の間にある窓が開いていて、そこから泥棒が

侵入したのではないかと推測できました。

 

多佳子は入浴時にそこを開ける習慣があり、フジエからは多佳子のせいだと責められます。

そんな時、郁は多佳子のせいだと決めつけず、二人から事情を聞いて推理を始めます。

 

そして、今回の騒動はフジエが犯人であることを突き止めてしまったのです。

フジエは仕事を辞め、多佳子の仕事は増えてしまいましたが、この件以来、多佳子は郁と過ごす時間を楽しく感じるようになりました。

 

心を許し始めたある日。

考え事をしている多佳子に郁はたずね、多佳子は五歳の時に母親を何者かに殺されたことを打ち明け、郁に促されて当時の状況を知っている限り話します。

 

それでも情報は足りず、多佳子はかつて実家の下宿屋があった王子を訪れ、関係者から情報を集めます。

それを郁に報告すると、またしても与えられた情報から彼女は犯人を言い当ててしまうのでした。

 

タイトルは犯人の決め手となったあるものに関係してきますが、ここでは割愛します。

多佳子は郁に言われて、時効を過ぎているが気の済むまで犯人に制裁を下そうとも考えますが、郁の体調が悪化したことで中断。

 

そして、郁は亡くなってしまうのでした。

さらに郁の残した遺書には、遺産を多佳子に相続すると書かれており、多佳子は驚きます。

 

遺書には多佳子の母親を殺害した犯人が実は郁の息子である英太郎であることが書かれていて、多佳子はさらに驚きます。

郁は結局、生前にこのことを打ち明けませんでしたが、それは息子をかばうためではなく、娘のように気に入った多佳子にせめて死ぬまではここにいてほしいと願ったからでした。

 

全ての真実を知った多佳子。

自分もまた郁のことが好きだったと思い、涙するのでした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

短編であるにも関わらず、話の細部までしっかりと書き込まれ、これぞミステリだと言わしめるような話が詰め込まれた短編集になっています。

 

本作を読んで仁木さんに興味を持ったという方は、ぜひ他の作品にも挑戦してみてください。

新しい作品だけでなく、すでに世に出ている作品と出会って新たな感動を得られるというのは、小説の良いところだと思います。

 

 

赤い猫 (ちくま文庫)

赤い猫 (ちくま文庫)