百本文庫~夜更かしのお供に~

つい夜更かししてしまう本を紹介しています。

『もうひとりの魔女』ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

もうひとりの魔女 (メディアワークス文庫)

 

「今年は最悪の夏休みだ。わたしはこの夏に、やり残していることがある」一度死んでも生き返ることができ、その際にひとつの願いを叶えられるという不思議な木の実を手に入れた六人。二度目の死を迎えてこの世から消えていなくなったもの。別の誰かに成り代わったもの。自分を殺した相手への復讐心を募らせるもの。各々の願いがもたらした因果は絡み合い、予想だにしない展開を迎える。そして永き時を生き続け、子供らの行く末を見届けた魔女は、何を願う。

【「BOOK」データベースより】

 

『もうひとつの命』の続編になります。
もしよろしければ、復習がてらにこちらも合わせてどうぞ。

www.hyakuhon.com

 

前作では、一度死んでも生き返ることができ、その際にひとつの願いを叶えてくれるという不思議な木の実を手に入れた六人の少女の願いが描かれていましたが、本作ではそこで生き残った藤沢と魔女に主に焦点が当てられています。

登場人物がすっきりした(死んだ)ため、内容も非常に分かりやすくなっています。


この記事では本作の魅力についてあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 


藤沢と生き残った少女

 

唯一木の実を食べず、かつ生き残った藤沢。
魔女は相変わらず藤沢の部屋に居候しています。

『もうひとつの命』のラストで、魔女が死んで花になったような描写がされていますが、本作では平然と生きています。


考えられるとしたら、魔女が花になるまでの期間を描いたのが本作かもしれません。

また足の裏の虫刺されが二つに増え、昨日も掻いてなかった?と藤沢に呆れられています。


『もうひとつの命』のラスト直前でも足の裏の虫刺されを書いているので、その翌日からのスタートだと思われます。

そんなある日、出かけている母親から電話があり、藤沢が出ると露骨に安心します。


理由を聞くと、藤沢が海に流されて消えたという情報が母親の耳に入ったのだと言う。

藤沢はよく分からないと誤魔化しますが、心当たりならあります。


稲村は二度目の死後、藤沢なりたいと願って藤沢の容姿で生まれ変わったのですから。

話通りなら、稲村はこれで死んだことになります。


そして、藤沢は魔女の口車に乗せられ、七里に会いに行くことになります。

殺した相手に会いに行くなど正常な判断ではありませんが、生まれ変わった七里は一切の記憶を無くしているので、藤沢に殺されたという事実すら覚えていません。


実際に七里の家に行くと、確かに彼女は藤沢のことを覚えていませんでした。

正確には藤沢の姿をした稲村を知っているので、会ってすぐは双子か何かと勘違いしていましたが、藤沢は自分が七里を殺したことまで含めて事実を話します。


しかし、生まれ変わった七里は殺された事実を淡々と受け入れ、さらに今は藤沢のことが嫌いではないと話します。

七里はまたと言って藤沢を見送りますが、藤沢はもう彼女に会うつもりはありませんでした。


しかし、家に戻ると、またしても魔女に諭されます。

実は七里の本当の願いとは、藤沢と仲良くすることではないのか。


そのまま生まれ変わってしまうと絶対に仲良くなれない、だから一切の記憶を消したのではないのかと。

藤沢は納得のいくようないかないような気持でしたが、それからも七里から部活やデート?に誘われ、新たな時間を重ねていきます。

 


稲村の残した思い

 

デートの時、稲村のことが気になってたずねると、場所を変えようと七里が提案し、二人は海に向かいます。
そこで七里の語る稲村の最後の姿は、痛々しいものでした。

 

七里が目覚めると、目の前に藤沢の姿をした稲村がいて、記憶がないことを話すと、稲村は七里を思い出の地に色々と連れまわします。
しかし、何も分からない七里の不安は増すばかりで、また味の好みなども変わっていたようで、稲村は徐々に冷静さを失っていきます。

 

そして結局、元の海に戻ってくると稲村は突然苦しみ出し、七里が人を呼ぼうとした目を離した隙に海に向かって走り出したのです。
それが、生まれ変わった稲村の末路でした。

 


 

 

七里の考える復讐

 

海で稲村のことを話した後、稲村のことを思ったのか、記憶をなくす前の自分のことを思ったのか、七里は本人の意思に反して泣き出してしまいます。
さすがに罪悪感を覚えた藤沢は、七里に肩を貸して好きなだけ泣かせます。

 

それが落ち着くと、今度は七里が友達になってほしいと藤沢にお願いします。
自分を殺した人間と友達になろうという神経が理解できない藤沢ですが、七里はこう言います。

 

藤沢のことは気に入ったけれど、自分を殺したことは許してはいけない。
だから、藤沢と友達になって、自分が死ぬときに、死ぬほど辛い思いをさせるのだと。

それが七里なりの復讐でした。


それに対し藤沢は心の底から面白いと感じ、二人は握手を交わします。

七里は赤い木の実の効力が切れるであろう七年後、藤沢を悲しませてみせると決意するのでした。


藤沢は自宅に戻るとこのことを魔女に報告しますが、ある異変に気が付きます。

魔女の腕に植物の蔓が絡みついていたのです。

 


魔女について

 

ここにきてようやく魔女の視点から物語が語られます。
彼女は飢え死にしそうだったある時、赤い木の実のなる木と出会い、その実を何十個と口にしたのです。

 

しかし、途中で他の生き物がこの木を避けていることに気が付き、よくないものを食べたのではないかと不安になりますが、飢えには勝てずにその後も木の実を食べ続けます。
それから下山し、魔女は結局飢えて息絶えますが、すぐに何事もなかったかのように生き返ります。

 

不審に思った魔女は、赤い木の実を捕まえた鳥の口に無理やりねじ込み、その首をへし折ります。
すると、死んだはずの鳥は首がねじ曲がったまま飛び立ち、ようやく赤い木の実の効果、自分のしてしまったことに気が付きます。

 

しかし、今さら数えようにもいくつ食べたかなど分かりません。
そこから魔女は生と死を繰り返し、その度に人間らしさを失っていきます。

 

それでも魔女は死を望み、一度は木の実を食べることを拒絶しますが、すぐに怖くなってしまい口に入れます。
しかし、もう飲み込む力は残されていませんでした。

 

これで本当なら死ぬはずですが、どうやらこの時に小学校の野外学習で山を訪れていた藤沢に発見され、またしても生き永らえたようです。
それからの魔女は『もうひとつの命』で語られた通りです。

 

腕に植物の蔓が巻き付いた魔女は、どうやら残りの命が少なくなってきたようです。
それでも魔女は藤沢と過ごす時間を楽しみ、時々過去のことを思い出しながらも気にしないようにします。

 

そしてある日、魔女は藤沢の家を出て行くことを決めました。
藤沢には内緒で。

 

家から出ると、近所のおばさんにどこかで見たことがあると言われますが、それもそのはず。
魔女は、死んだ藤沢の妹の生まれ変わりなのですから。

 

前作からそうだと考えていましたが、ここにきてようやく魔女の口から聞くことができました。

 


運命の出会い?

 

魔女は藤沢の元を離れ、再び赤い木の実のなる木がある山に戻ってきました。
使われていない小屋を根城に、その日暮らしを始めます。

 

このまま誰とも会わずに暮らそうと思っていた魔女ですが、ここで思わぬ出会いを果たします。
川に向かおうとしたところ、倒れている女の子を発見します。

 

発見してしまったからには放っておくこともできず、魔女は女の子を小屋に連れて帰ります。
目覚めると、女の子は夏休みを利用して一人でハイキングに来ていると言いますが、表情からそれが嘘であることは明白でした。

 

しかし、魔女は深くは聞かず、女の子をここに泊めてあげることにします。
その翌日、女の子は、実は二歳の時にいなくなった母親を探しているだと話します。

 

女の子いわく、母親の気配をこの山に感じたのだと。
そして、魔女の発する花の香りが懐かしいとも。

 

この時点で、母親が赤い木の実を食べて蘇り、その効力を失って死んでしまったということが予想できます。
魔女は思うところがあったのか、翌日帰るという女の子の母親探しに協力してあげることに。

 

しかし、女の子が母親の顔を覚えていないと言ったことでこの話はなくなり、代わりに二人で山を散歩することにします。
そして、辿り着いたのが赤い木の実のなる木でした。

 

ただならぬ気配に怯える女の子ですが、その木から魔女の発する花の香りがすることに気が付きます。
そんな女の子に対し、魔女は一緒に気を切り倒してほしいとお願いします。

 

かくして二人はノコギリで交代交代に木に傷をつけ、ついに倒します。
魔女はいつか死が訪れることを思いながら、それでもこれが今回の願いだったのかもしれないと考えるのでした。

 

小屋に戻ると、魔女はとんがり帽子を女の子にあげ、女の子は山をあとにします。
そして、魔女は次の場所に引っ越すことを決めるのでした。

 


結末

 

女の子との出会いすら、生き返る前の思い出となってしまったある日。
魔女は意識混濁の中、街を歩いていました。

 

すると、危うく車に轢かれそうになったところを、年齢を重ねた婦人に助けられます。
婦人の頭の上には、とんがり帽子。

 

気を付けるようにと婦人に注意され、二人はそのまま離れていくはずでしたが、なぜか夫人は魔女の元に戻ってくると、匂いをかいでやっぱりと呟きます。
夫人は魔女を自宅に連れ帰ると、ある人物と会わせます。

 

その人物とは社会人となった七里の娘、魔女が山で出会った女の子でした。
七里の娘もまた、顔こそ違うけれど、匂いで魔女であることを確認します。

 

名前こそ明かされませんが、この婦人こそ藤沢なのでしょう。
彼女が言うには、七里は花になる少し前に娘を産み、消えていったのでした。

 

夫にも事情は説明してあり、藤沢は後見人として七里の娘の面倒を見てきたようです。
娘が下山した後、とんがり帽子をかぶっていたことから事情を聞いて山に行ったようですが、魔女とはすれ違いになってしまったようです。

 

魔女はなぜ自分を連れて帰ったのかと聞くと、藤沢は答えます。
勝手に消えたから、勝手に連れ戻したのだと。

 

すっきりとした藤沢の表情に、魔女は不思議な感情を抱きます。
藤沢の知っている人物ではないはずなのに、そのやりとりに安らぎを感じます。

 

魔女が藤沢にお風呂を貸してほしいと頼むと、掃除ぐらいしなさいよと注意されます。
そして、「ちゃんと掃除できたら、褒めてあげるから」、それはかつて姉から妹に放たれた言葉でした。

 


最後に

 

いかがでしたでしょうか。
赤い木の実によって叶えられた願いなどろくでもなく、魔女もまたそうなのではと思っていましたが、最後になってようやく報われたことに言葉では言い表せない感動を覚えました。

 

藤沢の願いも叶ったことですし、いいこと尽くしです。
無念にも死んでいった彼らのことを除けば、ですが。

 

また魔女の記憶が前後するおかげで正確には物語が把握しきれていないので、今後じっくり読み返し、新しいことが分かれば記事を更新したいと思います。

 

もうひとりの魔女 (メディアワークス文庫)

もうひとりの魔女 (メディアワークス文庫)