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徹底ネタバレ解説!『感染領域』あらすじから結末まで!

【2018年・第16回「このミステリーがすごい! 大賞」優秀賞受賞作】 感染領域 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

 

九州でトマトが枯死する病気が流行し、帝都大学の植物病理学者・安藤仁は農林水産省に請われ現地調査を開始した。安藤は、発見した謎のウイルスの分析を天才バイオハッカー「モモちゃん」の協力で進めるが、そんな折、トマト製品の製造販売会社の研究所に勤める旧友が変死。彼は熟さず腐りもしない新種のトマト“kagla(カグラ)”を研究していたが…。弩級のバイオサスペンス、登場!

【「BOOK」データベースより】

 

2018年第16回『このミステリーがすごい!』大賞 優秀賞 受賞作です。

過去の受賞作だと第4回の『チームバチスタの栄光』は御存知の方も多いのではないでしょうか。

 

また最近では第15回の『がん消滅の罠 完全寛解の謎』がドラマ化されるということで話題になっています。

さらに本作の著者『くろきすがや』は菅谷淳夫さんと那藤功一による作家ユニットで、本作でデビューを飾ったとのことです。

 

個人的にはこの大賞で受賞する医療、またはそれに類似するテーマを題材とした作品に外れはないなと思っています。もちろん本作もです。

 

魅力的、だけど難解な題材を分かりやすく説明し、それを国家規模での大きなスケールに発展させ、魅力的な登場人物たちの活躍によって未曾有の危機を脱する。

どの作品においても、大筋ではこういった話になっています。

 

なので小説が苦手だという方でも、ドラマを見ているような感覚で読めますので、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

ただし、ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

元恋人からの依頼

 

山際教授の研究室に所属する特任助教の安藤仁。

彼は過去にデータ改ざんについて告発したことで恩師を自殺に追いやったとして『学界のユダ』と呼ばれ、蔑まれています。

 

そんな彼の元に、元恋人であり農林水産省で異例のスピードで出世を続ける里中しほりから依頼が舞い降ります。

それは、九州で起きているこれまでに見たことのないトマトの病変の調査でした。

 

同じ日程で山際研に多額の研究費用を提供してくれている日本最大の種床メーカー『クワバ総合研究所』との打ち合わせも入っていたが、安藤はこれを延期し、里中と共に現地に向かいます。

 

病変の確認された農家には、本来緑色のはずの葉や茎が赤変したトマトがあり、二人は調査を進める中で、ピノートというメーカーの防虫剤の関与が疑わしいことを突き止めます。

ウイルスの感染拡大を防止するために全てのトマトの焼却処分を依頼し、サンプルを東京に持ち帰ってさらなる調査を続けることにしました。

 

ただし、植物には獲得免疫系がないため、ワクチンというものが存在せず、今回のウイルスの感染拡大を防止するというミッションが困難を極めることは明白でした。

そこで安藤は、天才ハッカーのモモちゃんにウイルスの分析を依頼し、共同で課題に当たることにします。

 

その夜、クワバにいる旧友、倉内から延期になった打ち合わせに関する連絡が入ったが、倉内は直接話したいことがあること、そして夜遅いにも関わらずこれから誰かに会うことを告げ、忙しなく電話は切れます。

そして、これが倉内との最後の会話になりました。

 

 

旧友の変死と残された研究

 

打ち合わせのために安藤がクワバ総研を訪れると、なぜか入場が制限されていました。

総研副所長の牛山の口添えで中に入れてもらうと、昨夜、倉内が亡くなったことが判明します。

 

安藤も容疑者として警察から事情聴取されます。

殺されるような原因が倉内に見当たらず、しかも最後に電話で話したのが安藤であり、かつ過去の告発の件から犯人ではないかと疑われてしまいます。

 

そんな中、大事な話があるとして休日の競馬場に呼び出された安藤。

待っていたのはクワバの会長である鍬刃太一郎と総務課長であり、安藤とも面識のある宇野和也でした。

 

彼らは安藤に頼みがあるといって、トマトの木と未熟な緑色のトマトを見せます。

一見、なんの変哲のないトマトですが、宇野によるとこのトマトはいつまでも熟さない品種なんだと話し、名前をカグラといいます。

 

様々な品種を掛け合わせていく中で偶然生まれたカグラ。

カグラの研究の責任者は倉内で、鍬刃はこの研究を安藤に依頼したいのだといいます。

 

安藤は里中からの依頼もあるためこの依頼を受けるか迷いますが、旧友の無念を晴らすためにこの依頼を引き受けることにします。

サポートとして、この研究に従事していた久住真理が手伝ってくれることになり、カグラの原木は安藤のいる帝都大学に送られることになりました。

 

 

 

ウイルスの感染拡大

 

一方、里中からウイルス感染が拡大し、愛媛と山口でも同様の被害があったことを知る安藤。

しかし今のところ感染源は特定できておらず、里中は引き続き調査しているとのこと。

また倉内殺害について、警部圧迫による窒息死だと判明するも事件性はなく、警察の調査も行き詰っていました。

 

安藤はというと、倉内の無念を晴らすために久住と共にカグラの分析に取り掛かります。

久住の説明によると、一般的なトマトは成熟するにつれて葉緑体のクロロフィルが赤い色素のリコピンに置き換わるところを、カグラはそれが起きないのだといいます。

 

また、トマトの実の内部で光合成を行っているといいます。

倉内たちは、カグラの細胞核DNAが特殊な酵素を生成し、葉緑体の代謝を制御しているのではないかと考えました。

 

また久住には気になることがあり、倉内はカグラの実験ログをノートにつけていましたが、クワバの部長である一ノ関がノートの一部を破り捨てたところを目撃したのだといいます。

幸い、事前にその部分のコピーはとってあり、そのページには『1211』という謎の数字が書かれていました。

 

倉内の真意は分かりませんが、今は分析が先です。

別の日、モモちゃんの分析の途中経過を里中に伝える安藤。

 

すると、たった一日で被害は関西まで広がっているといいます。

驚くべき感染スピード。分析を急ぐ必要がありました。

 

研究室に戻ると、久住から培養しているカグラの細胞に例の謎のウイルスがコンタミ(雑菌混入)してしまったとの報告を受けます。

感染防止のために破棄しようとする安藤ですが、そこでカグラの根、葉、茎だけが赤変していないことに気が付きます。

 

一方、カグラの実は赤変しています。

つまり、謎のウイルスにはカグラを成熟させる力が備わっていることになります。

 

同時にモモちゃんの分析から、このウイルスは葉緑体のクロロフィルをリコピンに置き換える力が備わっていることが判明しました。

それが葉や茎まで赤変していた理由です。

 

モモちゃんはこのウイルスを『スレッドウイルス』と名付けます。

そして次の課題は、カグラで作られるクロロフィルがリコピンに変わるのを阻止する酵素を特定することでした。

 

安藤はこれを『カグリオン』と仮称し、久住と共に分析を始めます。

時は同じくして、帝都大学の試験圃場が荒らされているのが発見されました。

 

幸い、カグラの原木は植え替えていなかったため被害を免れますが、嫌な予感が安藤の脳裏をよぎります。

またかつての告発騒動の時、『HUNDRED-ELF』という人物からデータ改ざんについて情報提供があり、安藤はその人物はピノート社幹部のアレックス・エルフではないかと考え調べたこともありましたが、ニュースで報道される彼の姿を見て、別の嫌な予感が走っていました。

 

一方、久住の努力によりカグリオン特定まであと一歩というところまで来ましたが、安藤は帰り際、何者かによって腰骨あたりから何かを注射され、意識を失ってしまい、そのまま拉致されてしまいました。

 

 

拉致

 

安藤は気が付くと、見知らぬ小学校と思しき教室で椅子に両手両足を縛られていました。

そこに目出し帽を被った三人の男が現れ、どうやらカグヤの原木を探しているようでした。

 

安藤は白を切りますが、男たちは安藤を痛めつけ、何としてでもカグラの原木がある場所を吐かせようとします。

帝都大学の圃場を荒らしたのも彼らだと推測できました。

 

安藤は意地でも教えるかと耐えますが、今度は指を詰めようと男たちが言い、窮地に立たされます。

その時、何度も倒されたことで木造の椅子が壊れ、安藤は必死になってその場から逃げます。

 

追ってこないことを確認すると里中に連絡し、彼女の信奉者の高峰が経営する個人医院で診てもらうと、幸い肋骨が折れた程度で、命に別状はありませんでした。

安藤はそのまま里中に家まで送ってもらうと、久住にカグラを狙う何者かによって拉致・暴行されたことを伝え、部屋から出ないよう命じます。

 

それから安藤は二日も寝込みましたが、その間は里中が看病をしてくれて、さらに久住の保護まで手配してくれました。

 

安藤は宇野に連絡をとると、宇野はカグラの原木の所在をしつこく聞いてきますが、誰も信用できないと判断した安藤はその所在を明かしませんでした。

実際には安藤の自宅の庭に植わっていましたが、このまま帝都大学にあると思わせた方が良いと判断したからです。

 

また意図せず訪れた同棲のような里中との生活の中で、二人の思いが途切れていないことがうかがえました。

 

少し回復すると、安藤はクワバ本社に向かい、隠し事がないか問い質します。

すると、実はクワバは近年、産業スパイの被害を受けていて、そこから守るためにカグラを安藤に預けたことが判明します。

 

また倉内の残した『1211』とは、産業スパイを指し示すものでした。

つまり、倉内は最初からその存在を知っていたことになります。

 

また鍬刃、宇野は社内に残された証拠から一ノ関を疑っていて、そのためわざわざ部外者である安藤に依頼したのだといいます。

これだけ危険な目に合えば研究を辞退するのが普通ですが、逆に火が付いた安藤は研究を続けることにしました。

 

鍬刃はそれを喜んで了承してくれますが、今回の一件で久住は精神的なダメージを負ってしまい、研究から退くことになりました。

優秀なスタッフがいなくなったことは痛手ですが、安藤に選択の余地はありません。現状で研究を続けることにしました。

 

 

ウイルスの正体

 

モモちゃんの解析により、スレッドウイルスには未知の遺伝子が二つあることが判明します。

また通常、増殖するにはポリメラーゼという酵素がなければ遺伝情報であるDNAやRNAを複製できないのですが、スレッドウイルスにはそのポリメラーゼがないといいます。

 

しかし、現にスレッドウイルスは感染拡大を続けています。

それを可能にしたのが未知の遺伝子の一つで、pol構成遺伝子と呼ばれるものでした。

 

これはエイズウイルスの一部で、逆転写酵素をコードしている遺伝子のことです。

つまり、この遺伝子によって感染先のDNAに自らの遺伝情報を書き込み、宿主の中でスレッドウイルスを増殖させていたのです。

 

しかし、これまで植物のウイルスにおいて、逆転写を行えるものは一種も見つかっておらず、そこから出される結論は一つ。

スレッドウイルスは、遺伝子操作されていたのです。

 

ここまで分かったところで里中から連絡が入り、大学の研究室で落ち合う二人。

里中は感染源が分かったといい、それはなんとクワバの種子でした。

 

西から順番に広がっているように見えたのは、夏秋トマトの墦種時期が気温線に沿って北上するためでした。

農林水産省はクワバの種子を店頭から強制撤去するつもりですが、クワバはトマト種子の最大手。撤去したところで、すでに日本全国にトマトがすでに埋まっています。

 

さらにそこに安藤の持つ情報が提供され、事態はより深刻になります。

スレッドウイルスが逆転写によってトマトの花粉にまで自身のRNAを書き込み、それが全国に飛散すれば最悪、地球上全ての植物の全滅すらもあり得ます。

 

しかも、トマトの花の開花まであと二週間。

それまでに対応策を見つけなければいけないと、状況は最悪でした。

 

しかし、安藤はあるアイディアを思いつきます。

おそらくスレッドウイルスは何かを遺伝子操作して作られているため、元のウイルスが必ずあるはず。

 

その元のウイルスが分かれば、対応策を考えられるかもしれないと考えたのです。

データベースとの照合は里中に任せると、安藤はカグラの解析に戻ります。

 

久住の残したデータからカグリオンがマイクロRNAであることが判明していて、少しずつ光明が見えてきました。

しかし、翌日、安藤の名を騙った何者かがウイルスが遺伝子操作を受けていることやクワバとの関係性についてリークし、ニュースは騒然としていました。

 

 安藤は休職処分となりますが、山際教授の助けによりマスコミに見つからずに大学を脱出します。

またその時に、久住は安藤のことが好きだったが、自分に好意を向けてくれないため身を引いたことが明かされます。

 

 安藤はモモちゃんと合流し、状況を整理します。

今回の騒動の元となったクワバの信用はがた落ちし、株価も暴落。

 

ネットでは、ピノートがクワバを買収しようと企んでいるのだと噂されていました。

しかし根拠が全くないわけではなく、ピノートは強い農薬と、その農薬に強い遺伝子組み換え作物をセットで売りつけることで有名だったため、今の状況にも合致します。

 

その時、里中から連絡が入り、スレッドウイルスと遺伝子指紋が完全に一致したウイルスがあったと言います。

保有者はグラッドストーンで、ピノートが遺伝資源管理のために作った事業体だということが判明します。

 

これらのことから、ピノートはスレッドウイルスが日本中に蔓延した後に颯爽と登場し、スレッドウイルスの特効薬を用いて日本を救済。

そのまま日本の市場を独占しようと考えていることは容易に想像できました。

  

 

感染拡大を食い止める方法

 

実験の結果、カグリオンにはやはりスレッドウイルスに犯された植物を治癒する力が確認されました。

カグリオンを大量に生成すればなんとかなるかもしれないと、希望が見えてきました。

 

しかし、トマトの開花までに間に合わせるには、モモちゃんの有する機械では解析速度が足りないと言います。

しかし、同時にモモちゃんには当てがあるということで、安藤はモモちゃんに任せます。

 

その時、宇野から鍬刃が何者かによって拉致されかけたという連絡が入ります。

安藤を襲った連中と見て間違いなさそうでした。

 

幸い鍬刃は無事でしたが、もはや一刻の猶予もありません。

安藤はモモちゃんの指示に従い、とある人物に出会います。

 

待っていたのは武田十介、ノーベル賞を受賞するのは時間の問題とも言われている天才でした。

しかも、モモちゃんの双子の兄だといいます。

 

武田がいうには、エイブリーという量子コンピューターを用いれば、膨大な計算もあっという間に終わるといいます。

おまけにエイブリーの開発者はモモちゃんでした。

 

モモちゃんは開発者として自分の名前がクレジットされることを拒んできましたが、安藤の頼みを叶えるためにそれを了承し、使用にこぎつけたのだといいます。

こうして、エイブリーのテストランとしてスレッドウイルス、カグリオンの解析を行うことになりました。

 

その後、安藤は鍬刃と会い、カグラをウイルス対策に利用する許可をもらい、さらにこれまでの騒動について自分の推理を披露します。

カグラの原木が狙われてきたが、そもそも帝都大学にあることを知る人物はほとんどいません。

 

そこで安藤が犯人として挙げたのが、宇野の名前でした。

帝都大学への移植を提案したのは宇野であり、その後もカグラの行方を執拗に聞きたがっていたからです。

 

情報は久住から業務連絡として毎日報告を受けていて、そこでカグラにスレッドウイルスに対する力が発見されたため、奪取を目論んだのです。

さらに宇野が最近 スティックシュガーを持ち歩いていることから糖尿病ではないかと考え、そこから安藤の意識を奪ったのはインスリン注射による低血糖症状だと判明しました。

 

鍬刃にも同様の手段をとりましたが、鍬刃も糖尿病だったため効き目がなかったのです。

安藤は宇野を逮捕するつもりはありませんでしたが、スレッドウイルスの恐ろしさを知らなかった宇野は現状に怯え、事件に関与していることは明白でした。

 

宇野は警察に身柄を預けられ、安藤は武田の研究室に向かい、エイブリーを用いた解析を始めます。

まずはカグリオンの効果からで、GGPSを作れなくする効果があることが判明します。

 

GGPSはクロロフィルがリコピンに置き換わる際に重要な役目を果たしますが、カグリオンはGGPSを作るための遺伝子に蓋をし、その作用を阻害していたのです。

続いて、スレッドウイルスから発見されたもう一つの未知の遺伝子について解析します。

 

結果、その遺伝子はスレッドウイルスの病原物質で、GGPS遺伝子のスイッチを強制的にオンにする働きを持っていることが判明しました。

武田はこの遺伝子をELPと名付け、今後の対策を考えます。

 

しかし、スレッドウイルスに感染したトマトにカグリオンを投与するにあたって、課題もありました。

安藤は最後に詰めに入ろうとしますが、突然牛山から連絡が入り、研究を中止するよう言われます。

 

事情を聞くと、久住が誘拐されたことが判明しました。

 

 

 

巨大組織との対峙

 

警察の捜査により、宇野には借金があり、暴力団から金を借りていたことが判明し、久住を誘拐したのもその暴力団であることは推測できました。

すると誘拐犯から連絡が入り、安藤がカグラを指定場所に持ってくるよう指示されます。

 

久住を人質にとられては選択肢などなく、安藤は牛山の運転で品川埠頭公園野球場に向かいます。

安藤一人でグラウンドに入ると、そこには久住、安藤を襲った男のうち二人、そして見知らぬ背の高い男がいました。

 

久住の開放を条件にカグラを渡そうとする安藤ですが、途中で頭から麻袋を被せられ、逆に人質にされてしまいます。

すると背の高い男は、英語でスレッドウイルスをばらまいた犯人になってもらうと言われます。

 

しかし、顔を見なくても安藤はこの男の正体を知っていました。

その男とは、ピノート社のアレックス・エルフだったのです。

 

そして、対応策もすでにとっていました。

アレックスの連れの男にメールが入り、そのメールを確認した途端、アレックスの顔が青ざめます。

 

アレックスは激昂して安藤に暴行を加えますが、カグラを置いて逃げ出してしまいます。

メールの送り主はモモちゃんで、事前に安藤が指示していたものでした。

 

そして、倉内の残した『1211』の意味が判明します。

『2』とは『to』のことで、『1から11へ』。

 

1はスペイン語でウーノで、宇野を示し、11はドイツ語でエルフ、つまりアレックスを示しています。

アレックスはクワバの種子にスレッドウイルスを混入させ、クワバの信用を失墜させようとしていたのです。

 

なんとか窮地を脱した安藤は、ようやく最後の大仕事に取り掛かります。

 

 

結末

 

タイムリミットまであと一週間というところで、安藤、武田、里中、モモちゃんは集まり、対応策を考えます。

一つ目の問題点として、カグリオンの持つマイクロRNAが不安定ということですが、これは武田の助言により解決します。

 

二つ目の問題点として、カグリオンによってスレッドウイルスを抑制する効果があっても、投与をやめるとたちまちスレッドウイルスが猛威を振るってしまうということ。

これはカグリオンのマイクロRNAをトマトのDNAに書き込んでしまうことで、トマトが永久にカグリオンを作り続けることで解決できますが、それは遺伝子操作であり、倫理的に許されることではありませんでした。

 

しかも植物にはウイルスに感染すると、同時に同系統のウイルスには感染しないという特性があり、この手法はとれません。

おまけにスレッドウイルスに感染したトマトのみを選別するのは難しいという三つ目の問題点も残されていて、万事休すかと思われました。

 

仮に全てのトマトにカグリオンを投与した場合、スレッドウイルスに感染していれば元に戻りますが、問題のないトマトであれば逆にカグリオンの効果で成熟はストップしてしまい、食用としては使い物にならなくなってしまいます。

しかし、安藤は閃きます。彼は最強のカグリオン、カグリオンゼータを作ろうと言います。

 

それは悪玉のスレッドウイルスと善玉のカグリオンの両方の機能を持たせたもので、これを無差別にまけば、健康なトマトはスレッドウイルスとカグリオンの遺伝子を持つようになります。

つまり、普通のトマトの遺伝子を操作し、普通のトマトにしてしまうのです。

 

そして、やがてカグリオンゼータ感染トマトの花粉がばらまかれ、世界中のトマトはいずれ全てカグリオンゼータに感染し、スレッドウイルスとカグリオンの遺伝子を持つことになります。

あとはすでにスレッドウイルスに感染したトマトを焼却処分すればいいのです。

 

もはや迷っている時間はありませんでした。

全員で作業に移ります。

 

そして数か月、植物を絶滅に追いやろうとした狂気の科学者として安藤は世間を賑わせます。

安藤は世界を動かすために、「自分が誤ってスレッドウイルスをまき、その責任をとるために解決方法を発見した」と発表し、実行に移したのです。

 

しかも、カグリオンゼータを散布した後で。

これには日本が騒然としますが、特別措置として安藤の無罪放免が決まりました。

 

その後、アレックスや暴力団員たちは逮捕されますが、クワバの相当のダメージを負っていました。

鍬刃からは、所長に一ノ関が就任すること、彼がノートを破ったのは安藤にだけは産業スパイの存在に気付かれたくなかったからだと聞かされます。

 

さらに宇野は鍬刃と妻ではない、別の女性との間に出来た子供であること、さらに久住も鍬刃の娘であることが判明しました。

場面は変わり、日本を離れるというモモちゃん。

 

安藤は、前にデータ改竄を糾弾したのはモモちゃんだと気が付いていました。

モモちゃんの本名は百蔵で、糾弾したハンドルネームは『HUNDRED-ELF』。

 

ELFはELEPHANTの略で、つまり『百象』。

モモちゃんが安藤に優しいのは惚れているからではなく、自分のせいで学界から追放された安藤への罪滅ぼしだったのです。

 

そして、研究室の荷物を片付けていると、里中が現れます。

安藤が公安から解放されたのは、里中のおかげでした。

 

別れ際、里中は安藤に抱き着き、辛くなったらいつでも言ってほしいと言い残し、去っていきます。

関係が戻ったわけではないけれど、切れたわけでもありません。

 

安藤は今から再び里中に依頼を持ち込まれることを考えていて、その時はきっと断れないことを知っていました。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

簡潔にまとめたせいで専門的な話が分かりづらいかもしれません。

 

しかし、そこはぜひ本書を読んで確認してもらえればと思います。

きっと後悔させません。それだけの魅力を本書は持っていますので。

 

終わり方からして、続編も十分に期待できそうでしたので、気長に待ってみたいと思います。