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徹底ネタバレ解説!『リバース』あらすじから結末まで!

リバース (講談社文庫)

 

深瀬和久は平凡なサラリーマン。自宅の近所にある“クローバー・コーヒー”に通うことが唯一の楽しみだ。そんな穏やかな生活が、越智美穂子との出会いにより華やぎ始める。ある日、彼女のもとへ『深瀬和久は人殺しだ』と書かれた告発文が届く。深瀬は懊悩する。遂にあのことを打ち明ける時がきたのか―と。

【「BOOK」データベースより】

 

結末の後味の悪さがつい癖になってしまう作品の多い湊さん。

本作もそんな作品の一つです。

 

ただし、主に心情を綴る深瀬が男性で、男性目線で終始物語が進行するのが何とも新鮮でした。

男女限らず、誰の胸にも闇があるのだと、改めて思いました。

 

しかし、この深瀬という人物がこれ以上ないほど陰気というか内気なので、その考えが理解できない人は読み進める途中で挫折してしまうかもしれません。

そういう意味では、人を選ぶ作品でしょう。

 

僕は読書のリズムがつくまでは読んでいてしんどいと思うこともしばしばありました。

しかし、いつものごとく、途中からラスト一行に至るまで本当にあっという間でした。

 

それだけ魅力の詰まった作品です。

なので、出来れば頑張って読み進めて、最後の衝撃を味わってほしいと思います。

 

この記事では、そんな本作の魅力についてあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

平凡な日々

 

深瀬和久はニシダ事務機(株)の営業マンで、平凡な日常を送っていました。

昔から目立たず、友人たちのように熱い何かを持っているわけでもなく。

 

そんな日々に思考がマイナスに傾くこともありましたが、それでも人並みに幸せだと自分に言い聞かせます。

そんな彼にも唯一といっても良い趣味があり、それがコーヒーでした。

 

社会人の今ではコーヒー豆を自分で購入し、会社で社員全員に振る舞うほどの腕前。

豆はニシダに就職してから行きつけとなった『クローバー・コーヒー』で買っていて、唯一ともいえる憩いの空間を手に入れました。

 

また四か月前、深瀬と同じく『クローバー・コーヒー』と常連となった越智美穂子と知り合い、やがて二人は付き合うことになります。

それで十分幸せなはずでした。

 

そんなある日、深瀬は美穂子と待ち合わせるために『クローバー・コーヒー』にいましたが、彼女は先に深瀬のマンションに着いてしまったということで、深瀬も向かいます。

マンションで会った美穂子はどこかいつもと違う雰囲気で、何か思い詰めているようでした。

 

そして美穂子は、深瀬に後ろめたいことはないかと聞きます。

何の話かと聞き返す深瀬ですが、美穂子の働く『グリムパン』に送られてきた手紙を見て絶句します。

 

そこには『深瀬和久は人殺しだ』と書かれていました。

いたずらともとれる文章ですが、深瀬には思い当たることがありました。

 

美穂子は深瀬が話すまで納得しない様子。

覚悟を決めた深瀬は、ゆっくりと話し始めます。

 

それは、忘れられない過去と後悔でした。

 

 

忘れられない過去と後悔

 

大学四年生の夏、深瀬はゼミ仲間の村井、谷原、浅見、広沢と一緒に斑丘高原にある村井の叔父の所有する別荘に行くことになりました。

当日、昨夜事故に遭った村井が参加できなくなってしまいましたが、構わず楽しんできてほしいと言われ、四人は予定通りに出発します。

 

浅見、広沢が運転し、免許を持っていなかった深瀬は、何か手伝おうと得意だったコーヒーをいれて彼らをサポートします。

こういったイベントに慣れていない深瀬は最初こそ来たことを後悔しますが、徐々にその空気に当てられ、心から旅行を楽しみます。

 

途中の昼食で、深瀬は名物の水蕎麦を提案しますが、広沢だけがカレーが食べたいと別の店に言ってしまいます。

しかし、広沢ならばおかしなことではないと誰もが思い、何のトラブルもなく別荘に着きました。

 

その頃、台風が近づいてため、楽しみにしていたバーベキューは中止となってしまい、仕方なく食事を作って別荘内で食べます。

深瀬、広沢がお酒を飲めないと言うと、谷原が不機嫌になり険悪なムードとなりますが、広沢は飲むと言い出し、それまでの雰囲気が嘘のように穏やかな時間が流れます。

 

料理を食べ終わった頃、事故に遭った村井から連絡が入り、なんと近くの駅までもう来ているから迎えに来てほしいのだという。

しかし、運転の出来る浅見と広沢はすでにお酒を飲んでいて、運転すれば酒気帯び運転になってしまいます。

 

谷原はタクシーで来るよう村井に伝えますが、村井の待つ駅にタクシーはほとんど訪れず、仕舞には誰のおかげで別荘を借りられたと思っているのだと怒り出します。

収集がつかなくなり、仕方なく浅見に運転を依頼する谷原。

 

しかし、将来教師を目指す浅見にとって飲酒運転など出来るはずもなく、すごい剣幕で断ります。

しかし、村井を説得することも難しいと判断した浅見は、なんと広沢に運転を依頼します。

 

深瀬は止めようしますが、広沢は何てことのないように運転を引き受け、一人で村井を迎えに行きます。

何もできない深瀬は、せめてもとコーヒーを淹れ、広沢を見送ります。

 

三人は空いた皿を片づけ、村井のための夜食を作りながら帰りを待ちますが、一時間経っても広沢たちは戻ってきません。

村井からも連絡が入りますが、広沢はまだ着いていないという。

 

嫌な予感が走ります。

入れ違わないようにと深瀬を残し、谷原と浅見は別荘にあった自転車で広沢の通るはずの道を下ります。

それからしばらくして浅見から連絡が入り、なんと車が谷底に落ち、燃えていると言います。

 

後に炎上する車から遺体が発見され、それが広沢だと判明しました。

 

 

 

犯人捜し

 

美穂子に真実を話した深瀬ですが、美穂子は決して深瀬を許してはくれませんでした。

深瀬たちは、広沢が飲酒していたことを警察や広沢の両親に隠していたからです。

 

それ以来、深瀬は美穂子と会っておらず、『クローバー・コーヒー』にも行けなくなりました。

そんなある日、浅見が教師をしている楢崎高校から注文が入り深瀬が向かうと、浅見にも同様のいたずらがあったことが判明します。

 

さらに今度は村井からも連絡が入り、彼にも同様の手紙がきたことが分かります。

二人は居酒屋で会い、犯人が誰なのかを考えますが、思い当たる人物はいません。

 

罪を暴こうとしているのは誰なのか?

不安を抱えながら生活を送っていると、さらなる悲劇が起きます。

 

谷原が線路に突き落とされたのです。

命に別状ありませんでしたが、何者かが命を狙っているのは明白でした。

 

四人は過去を遡り、誰がこんなことをしたのかを考えます。

そこで深瀬は、犯人捜しをさせてほしいと三人にお願いします。

 

それは自分こそは広沢の親友だと思っていたのに、彼のことを何にも知らないことを知り、広沢とはどんな人物かを知りたくなったからでした。

 

 

広沢を知る

 

まず深瀬は、以前にも訪れたことのある広沢の実家に向かいます。

温かい両親に迎えられ、広沢のことについて聞きます。

 

両親から伝わる広沢の人物像は、深瀬の知る広沢でした。

さらに両親の紹介で地元の広沢の旧友を紹介してもらい、一本の糸を手繰り寄せるようにして広沢に近づいていきます。

 

そんな中、広沢の両親の元に広沢の高校時代の友人から連絡が入り、手紙を送りたいから大学のゼミ友達の連絡先を教えて欲しいと言われ、谷原の住所を教えたことが判明します。

その友人は、古川と名乗っていたそうです。

 

さらに糸を手繰り寄せると、別の広沢の友人からも古川の名前が出てきます。

これは何かあると思った深瀬は東京に戻り、古川に会います。

 

古川はどこか深瀬に似ていて、彼もまた広沢の親友でした。

同じ大学には入れませんでしたが、広沢を追って東京に上京し、ほぼ毎日のように会っていました。

 

そんなある日、広沢には昔好きな子がいて、古川はその子と再会します。

そのことを広沢に伝えると、広沢から彼女にアプローチし、二人は付き合うことになりました。

 

それでも広沢と古川の仲は変わらず、それからは三人で出掛けるようになります。

しかし、ある時、広沢に比べて古川があらゆる点で劣っていて、それに合わせてくれる広沢が可哀そうになり、古川は広沢を拒絶します。

 

それ以来、広沢とは死ぬまで会っていないといいます。

また、手紙の送り主は古川ではありませんでした。

 

しかし、この時点で、深瀬の頭の中にはある人物が浮かんでいました。

 

さらに状況を確認するために谷原と同じ野球チームに所属する池谷に、谷原が線路に落ちた当時のことを聞いてみると、谷原は当時飲酒運転をしようとしていて、マネージャーの女性に止められて電車で帰ろうとしていたことが判明します。

残念ながらマネージャーの連絡先は分からないという池谷ですが、広沢の卒業アルバムを見せると、そこにはマネージャーが写っていました。

 

 

 

真相

 

一ヶ月ぶりに来店した『クローバー・コーヒー』。

待ち合わせていたのは、美穂子でした。

 

深瀬は広沢について調べたノートを美穂子に見せ、人を辿って美穂子に行きついたことを伝えると、美穂子は真実を語り始めます。

広沢の三回忌の法事で深瀬たち四人を見かけていた美穂子。

 

彼女は同窓会で広沢の話を聞けたことが嬉しかった一方、誰も大学時代の広沢のことは知りませんでした。

また、古川がいなくなったことで広沢はショックを受けていて、その頃から二人の関係はギクシャクし始めたといいます。

 

付き合えば付き合うほど自分は広沢を知らない、受け入れてもらっていないと感じた美穂子は、徐々に自分は広沢とは不釣り合いだと感じるようになっていました。

それは深瀬も古川も同じであり、同じような人間が広沢の魅力にすがっていたのです。

 

だから美穂子は深瀬と同じように、知らない広沢を知るためにゼミ仲間の四人に近づくことにしました。

そう、谷原の野球チームのマネージャーは美穂子であり、『クローバー・コーヒー』で深瀬に会ったのも決して偶然ではなかったのです。

 

みんなの話を聞くうちに、広沢はいい大学生活を送ったのだと納得でき、地元に帰る予定でした。

しかし、広沢が特別な友達だと言った深瀬のことが気がかりであり、それが理由でこっちに残ったのだという。

 

しかし、谷原の飲酒運転未遂の一件で、広沢の事故について何も気にしていないことを知ってしまい、抱き着かれそうになって突き落としたのだという。

谷原は突き落とされたことを覚えていませんでしたが、それだけ酔っぱらっていたということです。

 

全てを洗いざらい話し、これからのことを考える深瀬と美穂子。

それぞれ同じ思いを広沢に寄せていることが分かり、二人は事故の真相を両親に打ち明け、それから広沢のことをもっと知ろうと決意します。

 

こうして、二人の関係は修復されました。

これで物語は終わるはずでした。

 

 

でも本当は……

 

『クローバー・コーヒー』でいつものようにコーヒーを飲む深瀬と美穂子。

そこで広沢が蕎麦アレルギーだったと美穂子から知らされ、ようやく斑丘高原での行動の意味を知った深瀬。

 

それからマスターの勧めで、様々な種類の蜂蜜をコーヒーに入れて楽しむことになります。

おすすめを聞くと、マスターは蕎麦の蜂蜜を勧めてくれます。

 

一口食べてみると、深瀬はその味に覚えがありました。

そう、斑丘高原の道の駅で、深瀬が買った蜂蜜です。

 

そして、思い出します。

村井を迎えに行く広沢に対し、深瀬が渡したコーヒー。

 

そこには、蕎麦の蜂蜜が入っていました。

つまりは、深瀬が広沢を殺害したのでした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

いい話に見せかけて、最後に絶望のどん底に落とす手腕はさすがとしかいいようがありません。

 

タイトルの『リバース』ですが、これは因果の逆転(リバース)を表しています。

本当であれば事故という結果があり、飲酒が原因だったという構図ですが、最後に深瀬だけが真実に辿り着いてしまいます。

 

それは、美穂子を奪うために恋敵を殺したというものです。

これは深瀬一人しか知らないため、誰とも共有できません。

 

せっかく美穂子との関係を修復したのに、それを壊す真実を深瀬は彼女に打ち明けられるのか?

それとも幸せのために黙っているのか?

 

これからの深瀬のことを考えると、不憫でなりません。

もちろん、広沢を止められなかったことは深瀬にも落ち度はありますが、それでも彼だけがここまで苦しむのは理不尽以外の何物でもありません。

 

こういうと犯罪を許しているように聞こえるかもしれませんが、このまま真実を秘匿し、美穂子とは幸せになってほしいです。

まあ、心が持てばの話ですが…

 

リバース (講談社文庫)

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