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徹底ネタバレ解説!『豆の上で眠る』あらすじから結末まで!

豆の上で眠る (新潮文庫)

 

小学校一年生の時、結衣子の二歳上の姉・万佑子が失踪した。スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。喜ぶ家族の中で、しかし自分だけが、大学生になった今も微かな違和感を抱き続けている。―お姉ちゃん、あなたは本物なの?辿り着いた真実に足元から頽れる衝撃の姉妹ミステリー。

【「BOOK」データベースより】

 

最近はまっている湊かなえさんの作品です。

姉妹ミステリーがいまいちピンと来ませんでしたが、要は二年間行方不明だった姉が本物かどうか、この一点が物語の核です。

 

ミステリーといいますが、そこまで謎解き要素があるわけではありません。

途中から結末が分かってしまう方もいると思いますが、湊さんの作品を楽しむポイントは結果というよりも、そこに至るまで、至った後の登場人物の心理描写にあるのではないかと僕は思います。

 

今回もさすがというか、後味が悪いです。

でも分かっていても読んでしまうのは、それだけ湊さんの作品が魅力的だからでしょう。

 

この記事では、そんな本作の魅力についてあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

姉の失踪

 

大学二年生の結衣子は夏休みに実家に帰省し、入院中の母親のお見舞いに行こうと考えていました。

本当は週明けに向かう予定でしたが、バイト先の人たちが気をつかってくれたおかげで予定が少し早まり、でもそれを家族には伝えていません。

 

帰省する道中、結衣子の頭の中には過去の思い出が溢れてきますが、それは決して楽しい記憶ではありませんでした。

実家近くの駅に到着し、母親の入院する病院行きのバスをカフェで待っていると、姉の万佑子が友達と一緒にこのカフェに歩いてくるのを見つけます。

 

結衣子が二人に手を振ると、二人はそれに気が付きます。

ふと、万佑子ではない、友達の右目の横に豆のさや形の傷跡があることに気が付きます。

 

それは結衣子が小学一年生、万佑子が小学三年生の時に出来た傷でしたが、どうして万佑子ではなく友達にその傷跡があるの?

結衣子は二人がカフェに入ってきたら聞こうと思っていましたが、二人は飲み物をテイクアウトし、結衣子を残して行ってしまいます。

 

結衣子は慌てて追いかけますが、途中で貧血で倒れてしまい、駅の救護室に運ばれました。

万佑子は付き添いを拒否し、先に出て行ってしまったと伝えられます。

 

姉は何か隠し事をしている。

そう感じていた結衣子は、万佑子に連絡をとらず、実家に向かいます。

 

実家に向かう途中、昔よく遊んだ場所を眺めながらある事件のことを思い出します。

それは、姉が失踪した事件のことでした。

 

結衣子が小学一年生の時、万佑子と一緒に神社の裏山に秘密基地を作りました。

万佑子は疲れたから帰ると言いましたが、結衣子は他の子に秘密基地に勝手に入られるのが嫌で、まだ残ると主張し、二人はそこで別れます。

 

しかし、それが結衣子が最後に見た万佑子の姿でした。

 

 

 

姉が戻るまで

 

結衣子が家に戻ると、万佑子がまだ帰っていないことに気が付きます。

最初は家の中、近所を探すだけでしたが、見つからないうちに嫌な予感が走り、警察を呼んでの捜査に発展してしまいます。

 

身代金誘拐とも考えられましたが、犯人からの連絡は一切なく、万佑子の行方を知るための手がかりも少ない。

両親や親族が藁にも縋る思いで万佑子を捜索する中、結衣子は先に帰してしまったことへの罪悪感を募らせていきます。

 

ここで視点が変わり、現在の結衣子は実家で母方の祖母が書いた事件に関するノートを見つけ、徐々に当時のことを思い出していきます。

 

万佑子の誘拐以後、誘拐防止のために集団登下校が始まり、周囲から気を遣われる結衣子。

また当時、何年も誘拐・監禁されていた女の子が見つかったことがニュースとなり、その女の子が見つかったのは家から一キロも離れていない場所でした。

 

母親は、万佑子は変態に誘拐されたのだと決めつけ、周囲の目など気にせずに万佑子が連れ去られたと思われるスーパーで張り込みをします。

それに対して良からぬ噂が立つとさすがに母親も自重しますが、捜索を諦める気など全くありません。

 

次の手として考えたのは、結衣子を使うことでした。

自分が行って警戒されることがあっても、子供の結衣子ならば大人たちの警戒も緩みます。

 

そこで母親は、猫を飼うことにしました。

結衣子は『ブランカ』と名付け、万佑子の代わりのように可愛がりましたが、これも母親の策略の一つでした。

 

母親は定期的にわざとブランカを隠すと、結衣子にブランカがいなくなったから探してきてほしいと言い、自分が怪しいと思った住宅を探しに行かせます。

初めは本当にブランカがいなくなったのだと必死に探していた結衣子ですが、周囲の人から自分は犯人捜しの片棒を担がされていることを聞かされ、母親にそのことを問い詰めますが、母親はあっさりとそれを認め、むしろ積極的に捜査に協力させるようになりました。

 

事件から一年が経ち、結衣子は母親の捜査を手伝わされたせいで、クラスメイトの親族を誘拐犯として疑ったとして無視されるようになります。

それからクラスメイトたちの行動はエスカレートし、いじめにまで発展してしまいました。

 

万佑子の失踪から二年、事態は急変します。

両親の元に警察から連絡が入り、神社の鳥居の下で女の子が保護されたというのです。

 

慌てて両親が確認に向かうと、その女の子は万佑子でした。

万佑子は衰弱し、記憶喪失の疑いがありましたが、無事に帰ってきたことにホッとする一同。しかし、犯人はまだ逮捕されていません。

 

 

姉に感じる違和感

 

二週間が経ち、ようやく面会できるということで病室を訪れる結衣子ですが、そこにいる女の子が誰なのか分かりませんでした。

確かに万佑子の面影はあり、二年経ったらこう変わると言われれば納得もできそうな範囲でしたが、それでも違和感が拭えません。

 

万佑子が回復して家に戻ってくることになりましたが、ブランカに触るなりアレルギー反応が起こり、万佑子が猫アレルギーだと判明します。

結衣子は最後まで反対しましたが、万佑子と一緒に暮らすためにブランカは他所にもらわれることになりました。

 

ブランカという心の拠り所を失い、万佑子が本物だと信じられない結衣子は、何度も万佑子に本物しか知らない質問をし、カマをかけます。

即答できるものもあれば、言葉に詰まることもありましたが、翌日にはちゃんと正解が返ってきて、目の前の万佑子が本物だとますます証明されていきます。

 

しかし、それでも結衣子は、目の前の女の子が万佑子だと信じられませんでした。

それは親族の誰もが感じていたことで、母方の祖父がある日、当時はまだ珍しかったDNA鑑定を提案します。

 

娘を疑われて母親は激怒しますが、意外にも当の本人である万佑子がそれを望み、検査をします。

結果、両親の子供である可能性が極めて高いという結果が出ました。

 

親族はそれで安心したようでしたが、結衣子と祖母はそれでも疑っていました。

しかし、そんな祖母もノートにこう記しています。

 

しかし、戻ってきたあの子は、顔も、体型も、声も、子どもの頃の春花そのものではないか。

 

春花とは結衣子の母親のことで、DNA鑑定をせずとも万佑子が両親の子供であることに疑う余地はありませんでした。

しかし、結衣子は現在に至るまで、万佑子のことを疑っています。

 

 

 

真相

 

現在の話。

実家に父親が帰宅。

 

彼が風呂に入っている間に、結衣子は父親の携帯を開き、万佑子からのメールをチェックします。

そこにはこう書かれていました。

 

結衣子、私のこと何か言ってた? 遥と一緒にいるところ、見られたかも。

 

遥とは、おそらくさっき見かけた姉の友人のことです。

この文面から、姉が何か隠し事をしていて、父親もそれを知っていることは明白でした。

 

また、事件には続きがあり、実は犯人は逮捕されたのです。

万佑子が行方不明になってから三年八か月も経ってから、岸田弘恵という女性が自首してきたのです。

 

自分が万佑子を誘拐したのだと。

母親になってみたかったという弘恵だが、決して誰でもいいというわけではありませんでした。

 

弘恵は父親の中学、高校の同級生で、当時人気のあった父親に思いを寄せていました。

その思いは叶いませんでしたが時は経ち、当時、病院の産婦人科で働いていた弘恵は、父親と再会しますが、父親は弘恵のことを覚えていませんでした。

 

そこから弘恵の思いは暴走を始め、彼の子供を自分のものにしたいと思うようになっていきます。

しかし、一度は諦め、病院を辞めた弘恵ですが、八年後、偶然父親の子供である万佑子と出会ってしまい、ついに連れて帰ってしまいました。

 

当然、帰りたいと泣き出す万佑子ですが、弘恵の話を聞くうちに弘恵の子供だと信じるようになった万佑子は、それから二年間、弘恵と生活します。

しかし、日に日に母親の顔に似ていく万佑子に気持ちが落ち着き、これまで嘘をついていたことを伝え、記憶喪失を装うよう指示しました。

 

罪悪感があったわけではありませんが、変質者に誘拐されたと周囲から言われる万佑子を考えると可哀そうに思い、自首したという弘恵。

これだけ事実が並べば、万佑子が偽物であると疑う結衣子の方がおかしいと思われても不思議ではありませんが、それでも結衣子は万佑子のことを今でも疑っています。

 

そこで結衣子はある手を考えました。

父親の携帯から万佑子に対して、結衣子が手首を切ったとメールを送ったのです。

 

案の定、万佑子は遥と一緒に駆け付け、すぐに結衣子が送ったのだと気が付きます。

そこで結衣子は、なんと遥に対して万佑子ちゃんなんでしょ、と言い放ちます。

 

万佑子は否定しますが、結衣子はさらに言います。

万佑子と両親が親子であることは間違いないが、そもそも失踪前の万佑子と失踪後の万佑子が同一人物であることを確かめる必要があるのだと。

 

これに対し、万佑子は黙っていましたが、あっさりとこの事実を認め、本物の万佑子って何? と問いかけます。

結衣子は、失踪前の万佑子だと答えますが、「じゃあ、私は誰なの?」と言う万佑子の言葉に、何も言えません。

 

結衣子は、目の前にいる万佑子は弘恵の子供だと思っていましたが、実際は本当に両親の子供だということが判明します。

万佑子の口から、真実が明かされます。

 

万佑子は元々『遥』という名前でしたが、小学三年生の時、母親から病院で取り違えていたことを打ち明けられ、本当の名前は万佑子だと言われます。

万佑子はここにいたいと駄々をこねますが、ある日、本当の子供(遥)も一緒に暮らすことになり、母親の愛情が遥に移っていくのが分かりました。

 

それが決め手となり、万佑子は記憶喪失を装い、結衣子のいる本物の家族に戻りました。

結衣子が疑っていることも知っていて、その都度遥と連絡をとり、自分が万佑子であることを証明し続けていきました。

 

だから万佑子にとってDNA鑑定は渡りに船で、結果が出てようやく安心することが出来ました。

しかし一方で、いつまでも結衣子に疑われていることが辛かったといいます。

 

万佑子の話は終わり、結衣子はいくつかこの場にいる人たちに質問をします。

すると、父親もこのことを知っていたこと、遥の母親は弘恵ではなく、弘恵の姉である奈美子だということが判明します。

 

遥こそが、結衣子の求めた万佑子だと分かりますが、それに対して遥は、今でも結衣子のことを妹だと思っているなどと言いますが、万佑子と結衣子は本当の姉妹だから問題ないとも言います。

どこか吹っ切れた様子で、遥の語る真実。

 

万佑子と遥を入れ替えたのは弘恵でしたが、動機は弘恵が話したこととは全く異なっています。

弘恵の姉である奈美子は生まれつき心臓が弱かった。

 

そんな奈美子は立川という男と知り合い、結婚寸前までいきましたが、交通事故で立川が亡くなってしまいます。

両親も交通事故で亡くして奈美子だったため、立川の両親からは死神扱いされ、自殺も考えます。

 

しかし、お腹に立川との子供が宿っていることが分かり、なんとか思いとどまりますが、今度は病院の検査でお腹の子供の心音に異常があると診断され、生きる気力を失ってしまいます。

そこで弘恵は自分の勤める病院の産婦人科での再受診を勧め、検査の結果、異常な心音は確認できなかったが、ノイローゼ気味だった奈美子はそれを信じませんでした。

 

そこで弘恵は、元気な赤ちゃんを自分が与えれば良いと考え、まだ生まれる前の万佑子(今の姉)に目を付けます。

母親に陣痛が始まると、弘恵は奈美子に陣痛促進剤を投与し、同じ日に子供を産ませます。

 

そして、万佑子と遥を入れ替えたのです。

罪悪感はありましたが、元気に育つ遥(今の姉)を見て喜ぶ奈美子を見て、自分のしたことは間違っていなかったのだと思っていました。

 

しかし、ある日、血液検査で遥の血液型がA型であることが判明します。

奈美子、立川共にO型だったので、あり得ない事態です。

 

弘恵は自分がやったとは言わずに取り違えがあったかもしれないことを伝え、後日、万佑子と入れ替わっていたことを伝えました。

一目でいいから見たいと思っていた奈美子は、万佑子(今の遥)を偶然見かけ、家まで送ろうかと行って車に乗せたという。

 

アパートに連れて帰ると、万佑子(今の遥)を奈美子が誘拐してきたと勘違いした弘恵が二人に真実を伝え、二年間、一緒に暮らしたのでした。

 

 

本物とは

 

結衣子はうまく話が飲み込めず、なぜついていったのかと遥に聞きますが、遥は自分がこの家の子ではないと薄々気が付いていて、奈美子に抱きしめられた時、自分はここにいなければいけないと感じたのだといいます。

それに対し結衣子は、あんなに愛情を注いでくれていた両親を平気で裏切った遥のことを許せませんでした。

 

結局、結衣子の待ち望む『万佑子』は幻想であり、本物など最初からいなかったのです。

両親も、万佑子、遥も、みんな許せない。

 

結衣子は家を飛び出していました。

道中、犯人を見たという当時の証言は嘘であったこと、ブランカがもらわれて一年後、交通事故で亡くなっていたことを知り、どれだけ自分が騙されていたのかを知ります。

 

その足で交番に向かうと、岸田弘恵に訊きたいことがあるのだと若い駐在にいます。

しかし、この時点で結衣子は混乱していて、冷静ではありませんでした。

 

これらの事実を知って、結衣子が一番知りたいこと。

それは、本物とは何か、でした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

まさに悲劇ですよね。

 

しかし、大多数の人間は自分のエゴも含んでいるため、完全なる被害者というわけではありません。

そういう意味では、結衣子こそが最大の被害者だったのかもしれませんね。

 

この後について何も語られていませんが、おそらく家族として暮らすことなどできないでしょう。

それどころか、自殺することだって考えられます。

 

結局、不幸って連鎖するんですよね。

湊さんの作品ではいつも描かれていることですが、この読了感、いつまで経っても慣れそうにないし、でも求めてしまうのだと思います。

 

豆の上で眠る (新潮文庫)

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