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『子どもたちは夜と遊ぶ 上』ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)

 

大学受験間近の高校三年生が行方不明になった。家出か事件か。世間が騒ぐ中、木村浅葱だけはその真相を知っていた。「『i』はとてもうまくやった。さあ、次は、俺の番―」。姿の見えない『i』に会うために、ゲームを始める浅葱。孤独の闇に支配された子どもたちが招く事件は、さらなる悲劇を呼んでいく。

【「BOOK」データベースより】

 

先日、ふと読み返したくなって読んだ作品です。

大学生の頃と今ではこうも受ける印象が違うのかと驚きました。

 

記憶よりもずっと闇が深いというか、辻村さんの作品の中でも読み進めるのが心情的に辛かったです。

でも、ラストでほんのわずかだけど救われる、そんな読了感が今も変わらず好きです。

 

今回は、そんな本作の魅力についてあらすじや感想を交えて書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

二年前 狐塚と浅葱

 

D大学は、他の大学と合同で『情報工学』に関する論文を募集していた。

サンフランシスコにある名門セーラ大学から交換留学生の話を持ち掛けられたことがきっかけで、結果次第でそれが決まるはずだった。

 

月子は狐塚孝太を追いかけて上京し、同じD大学の教育学部に入学。

今回の論文には狐塚と、同じ研究室に所属する木村浅葱が参加していて、その結果によって、狐塚と別れるかどうかが決まるはずだった。

 

運命の瞬間が訪れる。

しかし、驚きの結果が待っていた。

 

最優秀賞に該当者はおらず、狐塚も浅葱も優秀賞に選ばれた。

追記に、C大学の『i』と名乗る学生が投稿した論文に心当たりのある場合は名乗り出てほしい。そして、名乗り出れば事実を確認後、最優秀賞を与えるというものだった。

 

この『i』の登場は、これから始まる悲劇の序章に過ぎなかった。

 

 

第1章 ぐりとぐら

 

二年後、月子は教育学部児童心理学の教授でる秋山一樹のゼミに所属していた。

そして、友人である同じゼミの白根真紀。

 

狐塚は、月子の実習の見学に来ていた。

月子の実習は終わり、無事にA評価をもらう。

 

そこで、幼稚園の先生から『お化けトンネル』と呼ばれる廃工場の名前が挙がり、そこでは数年前に通り魔事件が起きたということだった。

以来、工場は立ち入り禁止になり、殺された女の子の幽霊が出るという噂から『お化けトンネル』と呼ばれるようになった。

 

狐塚と真紀、秋山は喫茶店に移動し、話は二年前のコンクールのことになった。

『i』の論文の出来は狐塚も浅葱も負けを認めざるをない出来で、しかし、結局『i』は現れず、二位の浅葱に留学の話が持ち掛けられたが、浅葱はそれを断った。

 

場面は変わり、誰かの夢の話。

双子の兄のことを藍と呼ぶ、その弟の夢。

 

彼は泣きながら藍を探すが、見つからない。

そして、夢の中、いつまでも藍を探し続ける。

 

さらに話は変わり、赤川翼と『藍』の出会い。

大学受験のための模試の結果が散々だった翼は憂鬱だった。

 

塾からの帰り道、大学生らしき男と出会う。それが上原藍だった。

彼はC大学の工学部に通っていると話し、翼はなぜか心を許せてしまう藍に自分の置かれた状況を話す。

 

ここじゃないどこかに行きたい。

そう言う翼に、藍はゲームを持ち掛ける。

 

その後、翼のものと思われる血で汚れた眼鏡を地面に置く『i』。

それこそがゲーム開始の合図であり、θという人物に向けて暗号を残した。

 

 

 

第2章 蝶とキャベツ

 

翼が失踪して二週間。

坂本警視は行方を追っていた。

 

高校三年生男子を誘拐とは考えづらい。

警察の第一印象としては、家出だった。

 

しかし、調査の過程で翼の掛けていた眼鏡が見つかり、そこから翼と同じ血液型の血が検出された。

事件性を感じさせる物だったが、坂本はこれは狂言であり、家出であると信じて疑わなかった。

 

場面は変わり、テレビでは翼の失踪に関するニュースが流れている。

すると、浅葱はなぜか翼の生死で賭けをしようと狐塚に持ち掛ける。

 

狐塚は生きている方に賭け、浅葱は死んでいる方に賭けた。

 

この頃、狐塚は就職活動をしていた。

またルームシェアしていてかつて同じ研究室にいた石澤恭司はSE職につくも、すぐに退職。今まで以上に遊んでいるようだった。

 

場面は変わり、浅葱の部屋。

翼のニュースを見ながら、浅葱は彼が死んでいて、それを『i』がやったのだと疑っていなかった。

 

メールには、『i』からθに向けられた暗号が書かれていた。

そう、θは浅葱のことだったのだ。

 

場面は変わり、月子は親友である片岡柴乃と会っていた。

柴乃が嫌がるからとネイルを切り落とし、少しでも遅刻すれば機嫌をそこねてしまう、とても親友とは呼べない女性。

 

柴乃は月子の全てを批判し、否定する。

しかし、それでも会うことは止めなかった。

 

場面は変わり、コンパニオンの仕事をしている森本夏美の前に、突然現れたハルキと名乗る男。

浅葱だ。

 

浅葱は言葉巧みに夏美を安心させて、部屋に上がり込む。

すると、浅葱はつけていたベルトで夏美の首を絞め、殺害した。

 

それは、『i』の暗号の答えである『夏』という文字が名前に含まれているからだ。

そう、これはゲーム。お互いに問題を出し合い、答えとなる人物を殺害していくという単純で残酷なゲーム。

 

浅葱は盗聴器を回収し、何事もなかったかのように立ち去ろうとしたが、偶然にもエレベーターで同じ研究室だった萩野清花と遭遇してしまう。

萩野の姉がこのマンションに住んでいるとのことで、浅葱も怪しまれないように嘘をつく。

 

しかし、ぶつかった拍子に落としてしまった盗聴器を萩野のちらりと見る。

浅葱は慌てて拾うと、逃げるように立ち去るが、後になって仕掛けた二つの盗聴器のうち、一つがないことに気が付く。

 

そして、森本夏美の死体が発見され、浅葱は『i』に次のゲームに向けた暗号を送るのだった。

 

 

第3章 お化けとやけど

 

秋山は杜撰な管理で問題となった子供のための私立施設の裁判の傍聴に行くという。

また、二年前のコンクールと似たものを実施し、セーラ大学への留学者を選ぶことが決まっていた。

 

しかし、それはコンクールに論文を出すわけではなく、普段の行いや成績から審査するというもので、おそらく狐塚か浅葱だろうと秋山は予想していた。

月子は狐塚が行くのはもちろん寂しいが、浅葱が行くことにもなぜか寂しさを感じていた。

 

月子は偶然、浅葱と会い、食堂で彼の食事に付き合うことに。

話は当然、留学のことになったが、途中で浅葱の目がニュースに釘付けになる。

 

月子も見るが、何がそこまで浅葱の興味をそそったのかは分からなかった。

浅葱はというと、『i』を自分の生き別れた双子の兄である藍だと考え、彼と会うためであれば、このゲームを続けることを決意していた。

 

場面は変わり、幼少期からの浅葱の話。

浅葱は幼少期、母親から虐待を受けていて、それに耐えかねた兄の藍が母親を殺害。

 

浅葱は施設(秋山が裁判の傍聴に行くといった『光のない家』)に入れられることになったが、そこもまた地獄だった。

彼はそこのリーダー格の少年に性的興味を持たれ、凌辱されたのだ。

 

浅葱はここを出たい一心で勉強し、中学卒業と同時に『光のない家』を出て、バイトをいくつも掛け持ちながら生活した。

しかし、痛みの記憶がなくなるわけではなく、D大学に入学後も、それを吐き出す必要があると考えていた。

 

そして、その矢先、人生の転機が訪れる。

大学四年の時、浅葱はコンクールで最優秀賞をとると確信していたが、蓋を開けてみると『i』という人物に破れていたのだ。

 

怒りに震える浅葱だったが、すぐにこの『i』の正体を突き止めようと考え、あらゆる手を尽くした。

三ヶ月、『θはいますか?』というタイトルで『i』からメールが送られてきた。

 

なんとか尻尾をつかもうとする浅葱だったが、逆にハッキングされ、データを全て奪われてしまう。

そして、浅葱が施設にいた頃のことを書いた手記も奪われてしまう。

 

しかし、数日後、意外にもまたしても『i』からメールが届く。

しかも自分が浅葱の兄である木村藍だと名乗ったのだ。

 

場面は変わり、今田信明の話になる。

彼は浅葱のいた施設にいた孤児だった。

 

そんな彼のもとを訪れたのは、施設で今田がひどい仕打ちをした男。

詳しい説明はないが、浅葱のこと。(※後述するが、藍の人格)

 

浅葱は、復讐といわんばかりに今田を殺害した。

そして、数日後、死体が見つかり、『i』はθ(浅葱)に暗号を送った。

 

 

第4章 月と萩

 

浅葱と月子の出会いが描かれる。

月子の派手な容姿と行動力に興味を持ち、つい声を掛けてしまった浅葱。

 

時間がないからと缶コーヒーでお茶をしながら話す。

結局、月子がどこの大学に通っているのかなどは教えてもらえなかったが、その二か月後に再会することになる。

 

研究室に萩野が訪れる。

浅葱に会いに来たようだが、彼はいない。

 

萩野は狐塚にみんなで餃子パーティーをしようと持ち掛けるが、その眼差しは強く、何かを秘めていた。

萩野が帰ると入れ替わるように月子が現れ、彼女は相変わらず萩野に憧れていた。

 

回想。

萩野が狐塚のことを好きであるというのが、周囲の認識だった。

 

それは萩野本人も認めているが、狐塚には月子がいる。

自分は彼のタイプではないと、萩野は諦めていた。

 

そしてその後、狐塚や萩野を経由して、浅葱は月子と再会する。

浅葱は、自分のいわば恋敵である月子に慕われる萩野を見ながら、素敵な恋人ができればいいのにと思っていた。

 

回想が終わり、浅葱は決心する。

萩野にこの間の落とし物を取りに行きたいと電話し、彼女のアパートに向かった。

 

少し前の回想。

浅葱は『i』とチャットで連絡をとるも、『i』はなかなか会ってくれない。

 

そんなある日、浅葱の携帯に留守電があり、それは施設にいた頃、浅葱を凌辱した男だった。

録音してあると、凌辱された時の音声も残されている。

 

その後、改めて電話があり、一回だけ好きさせてくれれば良いという要求に、浅葱は考えさせてほしいと時間をもらう。

帰ると、『i』にチャットで助けを求めた。

 

すると、僕がどうにかすると『i』は言い、姿を消す。

しばらくして、浅葱を強請っていた男が急死したと知った。

 

『i』の仕業だ。

彼は殺人を犯しても平気な自分を恐れ、浅葱と会うことをためらっていたが、浅葱が頼み込み、待ち合わせをすることにした。

 

しかし、『i』は来なかった。

そして、ここから二人のゲームが始まる。

 

復讐をあくまでゲームの一環だと装うために、二人は順番に計八人殺し、その後に会おうということになった。

 

また現時点に戻り、萩野を訪れた浅葱。

歓迎してくれるも、彼女はやつれていた。

 

拾った盗聴器、当時の浅葱の変装のような服装から、アパートでの殺人の犯人が浅葱ではないかと萩野は疑っていた。

しかし、まだこのことは誰にも話していないという。

 

浅葱は萩野を直接手にかけることをためらい、コーヒーに薬を入れて殺害することにした。

だが、トイレに行くと言って廊下で倒れていた萩野は苦しそうで、致死量には達していないようだった。

 

浅葱は覚悟を決め、腰につけていたベルトで萩野の首を絞めて殺害した。

その時、電話が鳴り、留守電が録音される。月子からだった。

 

萩野に会うことを楽しみにしている月子。

しかし、それはもうできない。

 

浅葱は、このゲームを続けるだけの覚悟などなかったと気づかされた。

その後、恭司が萩野の死体を発見し、みんなの知るところとなる。

 

月子はショックを受け、寝込んでしまう。

小学校教諭の試験に合格し、それを報告したかった。

 

しかし、その萩野が目覚めることは、もうない。

 

 

 

第5章 アイとシータ

 

秋山ゼミに顔を出さない月子。

真紀も心配していた。

 

そんな時、秋山の元に坂本刑事が訪れた。

坂本は、秋山の教え子だった。

 

場面は変わり、『i』が萩野を殺したのは自分たちだとウェブで公表していることを知った浅葱。

時は同じくして、狐塚は萩野の件で秋山の研究室に呼ばれた。

 

そこには坂本もいて、萩野含めこれまでの殺人が『iとθ』によって行われたことを説明してくれた。

あくまで『i』が勝手に行動を起こし、θはこの事実を公表したことさえ知らされていないというのが、秋山や狐塚の見解だった。

 

浅葱の手記も公表され、事件の背景には二人の負った心の、もしくは肉体の傷が原因としてあることが窺い知れる。

しかし、坂本が気になっているのはこれより先のことで、『i』がθに会おうとしない点だった。

 

『i』がθの兄でない可能性も考えられる。

このゲームは何かに見立てることによってお互いの犯行だと認識させ、やり取りしていることが分かった。

 

しかし、θは『i』に会うためにゲームを強要されていて、どんな条件でも飲まざるをえない。

秋山は、被害者が八人に達する前にどちらかが消耗してしまうと考えていた。

 

翼の失踪事件は関係ないようにも思えたが、現場に残された手書きのメモの筆跡が『i』のものと一致し、そこから接点が見えてきた。

しかし一方で、残忍な『i』が関わったにしては、失踪で済んでいることに疑問もあった。

 

場面は変わり、蛇島友美は買い物を終え、車で帰ろうとしていた。

そこに親切な青年が現れ、荷物を入れるのを手伝ってくれた。

 

礼を言い、車を発進させる友美だが、途中でハンドル、ブレーキが効かないことに気が付いた。

どうすることも出来ず、車はガードレールに衝突。

 

友美にまだ息はあったが、それよりもお腹の赤ちゃんのことが気がかりだった。

しかし、そこに追い打ちをかけるようにトラックが突っ込んできて、車ごと突き飛ばされた。

 

それは『i』による犯行であり、浅葱の元に彼からの暗号が届くのだった。

 

 

最後に

 

 いかがでしたでしょうか。

上巻にして、凄惨な殺人が何度も繰り広げられ、『i』に会いたいという一心で行っている浅葱の精神はすでに限界直前まで追い込まれています。

 

『頭の良い子供』という表現が何度も登場しますが、この物語を表すのにとてもぴったりな表現だと感じました。

体は大人でも、その根幹にある心は子供というか、まだ社会に染まっておらず、良くも悪くも純真なんですよね。

 

それゆえにこの物語を読み進めて行くことは、とても体力も精神も消耗します。

でも、それでも読み進めたくて仕方ない。

 

浅葱をはじめとして、誰もが大切なものを失い消耗していく中、その先に光は待っているのでしょうか。

結末については下巻に関する記事で言及しますので、ぜひ結末まで見届けてください。

 

子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)

子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)

 

 

下巻はこちら。

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