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徹底ネタバレ解説!『七回死んだ男』あらすじから結末まで!

七回死んだ男 (講談社文庫)

 

どうしても殺人が防げない!?不思議な時間の「反復落し穴」で、甦る度に、また殺されてしまう。渕上零治郎老人―。「落し穴」を唯一人認識できる孫の久太郎少年は、祖父を救うためにあらゆる手を尽くす。孤軍奮闘の末、少年探偵が思いついた解決策とは。

【「BOOK」データベースより】

 

 

 

ミステリーものとして有名な本作ですが、まず設定が一般的なミステリーと異なっています。

主人公である大庭久太郎には、ある特異体質があります。

 

それは『ある一日を合計九回繰り返す』というものです。久太郎はこの現象を『反復落とし穴』と呼んでいます。

久太郎は本来の読みである『ひさたろう』ではなく、『きゅうたろう』と呼ばれることがほとんどで、この現象の回数から名前が付けられたと思われます。

 

この『反復落とし穴』はある日唐突にやってきて、いつやってくるのかに規則性はありません。

多いときは一ヶ月で十数回落ちるし、少ないときは二ヶ月に一回程度と、かなりムラがあることが分かります。

 

また、同じ日が繰り返していると自覚できるのは久太郎だけで、他の人は久太郎がそれまでと違った行動をとらなければ、前回と全く同じ行動をとります。

 

本作はこの現象を下敷きにしたミステリーで、年始に親戚一同が集まった際に、遺言状で跡継ぎを指名するはずの祖父、渕上零治郎が朝起きたら死んでいて、原因を突き止めて回避するものの、次の周ではまた死んでいる。

また原因を突き止めて回避して......を繰り返し、『反復落とし穴』から抜けるまでに祖父の死を回避させることが目的となっています。

 

『七回死んだ男』とは、この祖父を指しています。

普通であれば、同じ人間が七回も死ぬのを見るのはかなりキツイです。ましてや久太郎は高校生なので、そのショックは測り知れません。

 

しかし、この久太郎は高校生とは思えないほど落ち着いている(悪くいえばじじ臭い)ので、そこまで取り乱したりはしません。

また周囲の人間が幼稚で浅ましいので話は至ってコメディで、ゲーム感覚で推理できるのが魅力かなと考えています。

 

今回は、そんな本作の推理を簡単にまとめてみたいと思います。

まあ、作中でご丁寧なことに何度も説明を入れてくれていますので、丁寧に読んでいればそれで十分かもしれませんが、読んで内容を整理したいという方の参考になれば幸いです。

 

 

 

 

登場人物

 

本書の冒頭で家系図が書かれているのであまり必要ないかもしれませんが、一応まとめてみました。

また各人物の説明に書かれた色は、零治郎に指定されたセーターの色を表しています。

 

 

渕上零治郎

今回、何度も亡くなるはめになる張本人。茶色。

 

渕上深江(故)

零治郎の妻。作中に登場なし。

 

大庭加実寿(かみじ)

渕上家の長女。緑色。

 

大庭道也

加実寿の夫。緑色。今回の挨拶には参加していない。

 

大庭富士高

長男。青色。実はルナとデキている。

 

大庭世史夫

次男。黄色。

 

大庭久太郎

三男。本作の主人公。赤色。

 

渕上胡留乃(ことの)

渕上家の次女。緑色。

 

鐘ヶ江葉流名(はるな)

渕上家の三女。緑色。

 

鐘ヶ江等

葉流名の夫。緑色。今回の挨拶には参加していない。

 

鐘ヶ江舞

鐘ヶ江家の長女。青色。

 

鐘ヶ江ルナ

鐘ヶ江家の次女。黄色。実は富士高とデキている。

 

槌谷龍一

零治郎の秘書兼運転手。黒色。

 

友理絵美

胡留乃の秘書。実は久太郎のことが好き。

 

キヨ子

渕上家の家政婦。着用なし。

 

宗像

零治郎の弁護士。着用なし。

 

 

 

渕上零治郎の死の真実

 

冒頭の説明の通り、零治郎は『反復落とし穴』にはまっている最中に何度も死にますが、それぞれ状況が異なっています。

ここでは、事件の真実を周回ごとに解説したいと思います。

 

繰り返されたのは本当は1月3日ですが、終盤に友理に説明してもらうまで、久太郎は1月2日が繰り返されていると勘違いしていました。

ここでは、正しい時間経過に則って書きたいと思います。

 

また死因についてですが、基本的には飲酒過剰が原因となっていて、ここでいう犯人とは、あたかも殺人にように装った人物のことを指します。

偽装した理由として、零治郎が新しい遺言状を書く前に亡くなると、去年書かれた友理に遺産を相続することになってしまうため、殺人として罪を友理になすりつけたいからです。

 

 

一周目

 

犯人:ルナと富士高

 

友理の持ってきた胡蝶蘭の花瓶で殴り、殺人を偽装した。

 

 

二周目

 

犯人:舞

 

零治郎のそばに転がっていた酒瓶で殴り、殺人を偽装した。

 

三周目

 

久太郎は友理に言われるまで気が付かなったが、実は寝ぼけて階段から誤って落ちて久太郎自身が死んでしまっていた。

そのため、久太郎の中では三周目で死んだことを寝ぼけていて把握しておらず、四周目のことを三周目だと勘違いしていた。

 

ただし、上記はあくまで予想であり、確認する術はない。

また零治郎が亡くなったかどうかも分からない。

 

 

四周目

 

犯人:世史夫

 

零治郎のそばに転がっていた酒瓶で殴り、殺人を偽装した。

 

 

五周目

 

犯人:加実寿

 

友理の持ってきた胡蝶蘭の花瓶で殴り、殺人を偽装した。

 

 

六周目

 

犯人:槌谷

 

友理の持ってきた胡蝶蘭の花瓶で殴り、殺人を偽装した。

 

 

七周目

 

ルナの落としたイヤリングに足を滑らせ、階段で頭を打って亡くなった。

 

 

八周目

 

零治郎を酒盛りの席に同席させるも、飲酒過剰によって亡くなった。

 

 

九周目(ラスト)

 

零治郎が屋根裏部屋でこっそりと酒を飲んでいることが分かり、酒を飲まないよう誓わせた。

これによって零治郎の自業自得による死は亡くなり、同時に『反復落とし穴』からも抜け出すことが出来た。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

こんなにポップに人が死ぬミステリーは初めてでした。

 

また富士高とルナの熱い交わりの描写がふざけているのかと思うくらい面白かったり、終盤で唐突に友理が久太郎のことを好きだということが判明したりと、そこに現実のようなリアリティはなく、零治郎の死を除けば完全にコントでした。

 

しかし、それこそがゲーム感覚で謎解きに没頭できる本書の魅力でもあります。

まだ未読がいらっしゃったら、ぜひ本書を読んでその面白さを発見してみてください。

 

七回死んだ男 (講談社文庫)

七回死んだ男 (講談社文庫)