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『耽美なわしら 2』ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

耽美なわしら〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

愛原ちさとこと千里の書く少女小説を愛しながら、本人が能天気な男であることを許せず、危険な妄想を膨らませていく彩子。いっぽう千里は、ある誤解から志木の恋人であると宣言してしまう。「世界一美しい人」に迫る危機と、さらに巨大化する自らの超兄貴体形に焦る俊彦は、あろうことか当の千里に火傷を負わせてしまう。失意のどん底に叩き落とされた俊彦は千里との別れを決意するのだが…。伝説の恋愛コメディ第2巻。

【「BOOK」データベースより】

 

 

 

1巻に続き、2巻の感想などを書いていきたいと思います。

勢いはとどまるところを知らず、むしろ登場人物たちが前作以上に好き放題やってくれています。

 

自分のセクシャリティを認めているからこその強さ。

一見ふざけているように見えて、誰もが真剣に自分の感じていることが正しいと主張するその姿は、素直にかっこいいと思えました。

 

そんな本作の魅力を、少しでも皆様にお伝えできればと思います。

 

 

 

 

各章の感想

 

第五話 二つの性別を持つ男

 

彩子メインの話。

忙しいというか慌ただしいというか、彩子は常に動いたり考えたりしないと死んでしまうのかな? と思うくらい、ドタドタしています。

 

彩子は、千里の書く少女漫画の大ファンです。

またレズなので、千里の担当の宮沢さんにも目をつけていましたが、彼女が人妻だと知ったことで、その恋は儚くも未遂に終わっています。

 

彩子は千里の書く最新の少女漫画を読み、妄想をこじらせて、愛原ちさと(千里のペンネーム)という架空の女性を作りだしてしまいます。

しかし、彩子の妄想の邪魔をする人間が現れます。それは、相原千里そのひとです。

 

実際の千里は見た目こそ美しいが、男だし子供っぽいし、とにかく喜怒哀楽が激しい。

彩子の妄想の中の愛原先生とは似ても似つきません。

 

しかし、愛原先生が生み出す作品とは、すなわち千里が描いているわけで、彩子としては応援しなければいけない立場にあります。

彩子は現実と妄想の狭間で苦しみ、一人で勝手に葛藤するという話です。

 

みんなそれぞれ悩みはありますが、彩子の悩みは本人こそ本気ですが、傍から見ればこの人は何をしているんだ? と言いたくなるようなものばかりで、そのくだらなさが実に素晴らしいです。

キャラとして僕は彩子が一番好きなので、このドタドタした感じはたまりませんでした。

 

 

第六話 ある夏の日の過ち

 

志木の家にすっかり居着いてしまった千里。

そんなある日、志木の帰りが遅れるということで、志木の代わりに原稿を受け取りにくる人物を出迎えることにした。

 

すると、やって来た人物は礼儀を知らない男で、しかも志木と千里の間を疑い出す始末。

これに腹を立てた千里は、タカオと名乗る人物に怒りをぶつけ、なぜか恋人であると嘘までつきます。

 

ところが、その最中に新たな来訪者。

そしてその人物こそが志木の言っていた高尾だったのです。

 

じゃあ、この人は? と混乱する千里ですが、これがなんと志木の弟の鷹雄だったのです。

青ざめる千里。当の鷹雄は悪びれる様子もなく、誤解したまま帰ってしまうのです。

 

志木にとっても、千里にとっても災難な一日となりました。

 

普段喧嘩の絶えない志木と千里ですが、お互いを貶されると黙っていられないところが、仲の良さを表していますよね。

これで千里がゲイ、もしくはバイであれば、このカップリングが誕生していたかもしれませんね。

 

 

 

第七話 風邪と共に去りぬ

 

有名な作品にかけたタイトル。

このくだらなさ、たまりません。

 

千里は俊彦に買ってもらった金魚を飼う事にしましたが、正しい飼い方を知らない千里は金魚を水槽から取り出して頬ずりするなど、その場にいたら卒倒しそうな無茶なことを平気でやってのけます。

そして、この件で志木と喧嘩した千里は志木の家でご飯を食べることが出来ず、栄養失調が原因で風邪を引いてしまうのです。

 

ここで志木と美穂のやり取りがありますが、美穂は最年少とは思えないほどしっかりしているし、年長者にも言いたいことは言う気の強さを持っているんですよ。

あの志木をたじろがせるなんて、さすが美穂です。

 

ですが、そのしっかりした性格が災いして、美穂メインの話が生まれないのかもしれません。

一度、彩子と本格的に喧嘩し、仲直りまでを描いた話が読んでみたいなと思いました。

 

あと、ヤケセックスってすごい語呂ですよね。

志木なら、それこそ溺れるくらいするんでしょうね。

 

その後は、ひたすら千里のダメっぷりが描かれていて、俊彦の人を見る目の無さが露呈してしまいます。

しかし、美しさというのは、ただそれだけで他の点なんてどうでもよくなってしまうんでしょうね。

 

俊彦は可哀そうですが、頑張ってもらいたいものです。

 

 

第八話 巨人の図星

 

超兄貴サイズの俊彦ですが、本人の意に反してさらにサイズアップしてしまいます。

これに焦った俊彦はこれ以上背を伸ばさないためにアドバイスを求め、結果として睡眠時間を削って成長を食い止めようと試みます。

 

ところが、睡眠不足が原因で千里にやけどを負わせてしまい、またしても悲劇のヒロインになってしまうという話です。

相変わらずな俊彦ですが、そろそろ千里の性格を理解してもいい気がしますけどね。恋は盲目というやつでしょうか。

 

ただ、そんな状態が長く続くわけもなく、結局は千里の隣にいることが幸せであると悟った俊彦は、また愛する人と一緒にいることを選びました。

だけど、成就する気配は一向にありません。俊彦、頑張れ。

 

 

第九話 彼が彼女になる日

 

彩子がヤケクソで案を出し、何かの間違いで通ってしまった作品『耽美なゾンビ』の制作現場から話は始まります。

不覚にも読みたくなってしまいました。

 

十二指腸プレイとか、幅が広そうですよね。

ただカラーだったらと思うと、吐き気が止まりません。

 

そして、またしても彩子の妄想が爆発し、今度は千里を女に性転換させると言い出します。

俊彦はこの人、また無茶言ってる、と呆れますが、当の千里は破格な金額を提示され、満更でもありません。焦る俊彦。

 

その後、志木の部屋に恋人の一人である晃次が現れますが、そこには上半身裸の千里がいて、恋人ではないかと疑われ、暴力まで振るわれます。

しかし、それを千里が撃退。志木は自分よりも男らしいと一応千里を褒めると、千里はすっかり嬉しくなってしまいました。

 

結果、性転換の話はなくなり、千里は男として生きていくのでした。

しかし、千里の話し方のせいで、新たな火種が生まれてしまいます。

 

終わりに新たな始まりを予感させる、そんな話でした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

この記事を書いている2018年1月現在、続編は出版されていませんが、森さんはその気なれば続編を書きたいと考えていて、そのために巻数を数字にしたのだとあとがきで書いていました。

 

そんな日が来るのでしょうか。

あまり期待するのもなんですが、ここで終わらせるには魅力的なキャラクターばかりです。

 

ぜひ、森さんには納得のいくまで、この世界を描ききってほしいなと思います。

そう願いながら、これから森さんの別の作品にも挑戦してみたいと思う今日この頃でした。

 

 

耽美なわしら〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

耽美なわしら〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)