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『耽美なわしら 1』ネタバレ感想 森奈津子【著】

耽美なわしら〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

超兄貴サイズの体格に白薔薇のごとき心をもつ大学生作家・矢野俊彦は、同性の百合小説作家・千里を「世界一美しい人」と崇拝していた。しかしある日、千里の作品に感動した漫画家の彩子が、彼を女性と思い込み、同性愛のターゲットにしてしまう。横暴で好戦的な美女・彩子に、クールな毒舌漫画家・志木、さらには小悪魔的な美少女・美穂に翻弄されながら、俊彦は愛する千里を守れるのか?伝説の恋愛コメディ、ついに復活。

【「BOOK」データベースより】

 

 

 

この文庫版が発売された当時に読んで、とても衝撃を受けた作品です。

表紙に描かれた主要登場人物はゲイ、レズ、バイ、ノンセクシャルと、誤解を恐れずに書くと一般とは少し違ったポリシーを持っています。

 

この作品は連載されていたものを集めたもので、初出が1995年ともう二十年以上前の作品になります。

そのため用語などは一部古い表現もありますが、内容としては全く古さを感じさせない。むしろ色あせることのない魅力がここには詰まっています。

 

あとがきで著者の森さんも書かれていますが、この作品が世に出た当時とはかなり情勢が変わり、ゲイやレズに世の中は寛容になり、有名人でそれをカミングアウトし、それを国民が受け入れるという図式さえ登場しています。

 

本作はコメディと掲げているように、とにかく面白い!

みんなそれぞれ譲れない主義を持っていて、それを臆せず主張できるところがかっこいいです。

 

この記事では、そんな本作の魅力となるキャラの紹介や、専門用語の解説などをしたいと思います。

個人的な感想を入れる上、ネタバレも含まれますので、未読の方はご注意ください。

 

あと、用語に関しては本書に登場するものを紹介しますので、あえて新しいものに置き換えたりはしません。

ご了承ください。

 

 

 

 

登場人物の紹介

 

ここでは主要登場人物である五人を紹介したいと思います。

 

 

矢野俊彦

 

十九歳。大学二年生。ゲイで、身長一九二センチの超兄貴サイズで、その体格にコンプレックスを感じている。ごつい体格だが、顔は整っている。

大学一年生の時に小説家としてデビュー。相原千里を崇拝していて、彼に悪い虫が寄ってくる度にヒヤヒヤしている。

見た目に反して優しい心の持ち主で、争いを好まない。しかし、その外見から知らない人からは恐れられ、その度に心を痛めている。

口には出さず、心の中でツッコミを入れることが多い。

 

相原千里

二十六歳。百合小説を書いているが、あまり売れていない。ペンネームは愛原ちさと。ノンセクシャル(他人に性的欲求を抱かない)。

アメリカ人と日本人のハーフで、非常に美しい外見をしていて、俊彦の理想そのもの。

年齢に対して精神的にかなり幼く、学生の頃から友人である志木にいじめられ、泣かされることもしばしば。

 

田中彩子

二十四歳。ギャグ漫画家で、ペンネームは田中サイコ。レズ。

美女だが非常に好戦的で、志木と喧嘩になることが多い。

また綺麗な若い女性を見つけるとすぐちょっかいを出すため、その度に美穂と揉めている。

 

林美穂

十八歳。志木のアシスタントをしていて、自身も漫画家として活動している。ペンネームは清原鈴子。

バイセクシャルで、彩子とお互いに惹かれているが、ちょっとした喧嘩で冷戦に突入することもしばしば。相手が女であればお姉様と慕い、男であれば下僕として扱うのが好き。

 

志木昴

二十四歳。漫画家で、この中で一番の売れっ子。バイセクシャル。

丸眼鏡が特徴の和風な美男子。完璧主義者ゆえに、彩子と喧嘩することも多いが、それでもお互いことを友人だと思っている。

 

 

専門用語について

 

抜けがあるかもしれませんが、作中に登場する用語について解説していきます。

 

 

ゲイ

男性同性愛者。

 

レズビアン

女性同性愛者。

 

バイセクシャル

両性愛者。

 

ホモ

「ホモセクシャル」の略。同性愛者のことだが、男性同性愛者という意味合いで使われてきた。差別的な意味はないが、差別的文脈で使用されることが多かったため、近年ではゲイと言い換えられている。

 

ノンセクシャル

誰に対しても恋愛感情や性的欲求を抱かない人のこと。

 

やおい

近年でいう「ボーイズラブ」のこと。男性同性愛を題材にした女性向けの漫画や小説などの俗称。

 

ネコ

女同士が愛し合う場合の、受け身の方。

 

タチ

ネコの反対で、男性役のこと。

 

スカタチ

「スカートをはいているタチ」の略。見かけは女っぽいが、攻めにまわる方を指す。

 

オネエ

「おかま」ともいい、女子の心を持った男性のこと。

 

真珠入り

真珠の入った陰茎を指す。

 

ノンケ

異性愛者のこと。

 

おこげ

男性同性愛者と一緒にいる女性。お釜(オカマ)にくっついている状態から、この名が付いた。

 

トランスセクシャル

性転換願望。

 

 

 

各章の感想

 

第一話 黒百合お姉様 VS. 白薔薇兄貴

 

各キャラが初出する章だが、全員キャラが濃すぎてあっという間にページをめくってしまいました。

女心という点でいえば、俊彦が一番可愛らしかったです。でも、みんなに振り回されて可哀そうというのも、本書の見どころです。

 

そして、彩子vs志木、彩子vs美穂と、かたっぱしからケンカを吹っ掛ける彩子が特にいい味を出していました。

千里の持ち味は、これからというところでしょうか。

 

 

第二話 同性愛者解放戦線の陰謀

 

彩子の妄想が暴走し、俊彦がひたすら翻弄されるところが良かったです。

彩子は本当に自分の欲求に素直で、とても好感が持てました。しかも意外に不器用ながら気を遣うこともできたりと、可愛らしい一面も見られました。

 

そして、千里の出生の秘密が明かされますが、かなり重たい。

もはや色々詰め込まれすぎて、逆に笑ってしまうのも頷けます。

 

でもまさか、『千里』という名前がコンドームから来ているとは……

 

 

第三話 エビスに死す

 

映画『ベニスに死す』をもじったタイトル。

俊彦の過去の恋愛歴が明かされますが、色々と苦労しているのは今と変わっていませんでしたね。

 

彩子の口ずさむ歌がモスラっていうのが、また時代を感じさせました。

歌詞も何言っているのか今でも分かっていないので、歌詞を見てもピンときませんでした。

 

 

第四話 それは詭弁というものだ

 

志木の過去が明かされる話。

マイペースな志木ですが、やはり苦労もしているのですね。

 

そして、ここで千里の意外な男らしさ?が発揮されます。

この千里も、彩子とは違いますが自分の欲求に素直で、恋愛感情抜きで人のことを好きと公言できるところが、とてもかっこよかったです。

 

最後は苦労してきた俊彦と千里がいい感じになっていたので、いい終わり方でした。

まあ、千里は俊彦の心情など一ミリたりとも分かっていないと思いますが。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

批判されやすい題材をここまで強烈に書き上げる圧倒的な力、そして問題としてではなく一つの生き方として描くこの作品は、本当に傑作だと思います。

 

一巻では美穂の出番があまりなかったので、次巻での活躍を期待したいと思います。

 

耽美なわしら〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

耽美なわしら〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

続編はこちらです。

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