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野崎まど『2』ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

2 (メディアワークス文庫)

 

数多一人は超有名劇団『パンドラ』の舞台に立つことを夢見る青年。ついに入団試験を乗り越え、劇団の一員となった彼だったが、その矢先に『パンドラ』は、ある人物の出現により解散してしまう。彼女は静かに言う。「映画に出ませんか?」と。役者として抜擢された数多は、彼女とたった二人で映画を創るための日々をスタートするが―。果たして彼女の思惑とは。そして彼女が撮ろうとする映画とは一体…?全ての謎を秘めたまま、クラッパーボードの音が鳴る。

【「BOOK」データベースより】

 

 

 

野崎まどさんの、この時点での集大成とも言える作品です。

集大成という文字通り、これまでメディアワークス文庫で出版されてきた作品の登場人物が一堂に会します。

 

この作品だけでも楽しめますが、全ての作品を読んでから本作を読んだ方が面白いのは言うまでもありません。

正直、敷居は決して低くはありませんが、それだけの価値がある作品ですので、その魅力について個人的な感想を入れながらご紹介したいと思います。

 

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

事前に読んでおく作品は?

 

先に申し上げた通り、野崎さんがこれまでにメディアワークス文庫で出版した作品を網羅しておくことが、この作品を十二分に楽しむための条件になります。

具体的な作品名は以下の通り。

 

・【映】アムリタ

・舞面真面とお面の女

・死なない生徒殺人事件~識別組子とさまよえる不死~

・小説家の作り方

・パーフェクトフレンド

 

あえて必須作品を挙げるのであれば、『【映】アムリタ』。

これだけは読んでおいてください。

 

というのも、アムリタで登場する最原最早という天才映画監督が本作でも登場し、物語の主軸を担うからです。

もちろん読んでいなくても支障はないのですが、前作を読んでいるからこそ「今度は最早は何を企んでいるんだ?」と予想しながら読めるので、よりおすすめです。

 

他の作品に関しては、それぞれの作品の登場人物が出てくるので、事前に読んでおくと思わずにやっとしてしまいますが、どういう人物かは本書でもしっかり説明されているので、読んでいなくても特に問題はありません。

 

 

超有名劇団『パンドラ』が崩壊するまで

 

本作の主人公は数多一人。

彼は役者で、超有名劇団『パンドラ』のオーディションを受けるところから物語は始まります。

 

三次審査に集まった十五人。

しかし、実際は三次審査なんてなく、この十五人は合格ということで、三か月後に劇団員の前で新人による劇を行うことに決まりました。

 

憧れの劇団に入れたことに皆が喜び、劇に向けて準備を始めます。

しかし、パンドラの劇団員の稽古を見た時、あまりのレベルの高さに誰もが自信を失くし、次々と去っていきます。

 

残ったのは数多を入れて三人。

三人はそれでも諦めずに三か月後に劇を行いますが、結果は散々たるものでした。

 

しかし、重要なのは結果ではなく、この悔しさをパンドラの一員として一緒に晴らすことであり、三人は無事にパンドラの一員となることができました。

 

ところが、時季外れの入団希望者の登場により、状況は一変します。

その人物の名前は最原最早。そう、『【映】アムリタ』で登場した天才、その人でした。

 

彼女はオーディションにて、『愛してる』。

この一言だけを発します。

 

しかし、それが誰から見ても正解だと分かる発声で、誰も真似することが出来ません。

圧倒的な才能にパンドラの劇団員たちですら自信を失くし、その日、パンドラは解散してしまいます。

 

そして、数多は最早にスカウトされ、映画を作ることになります。

物語は、ここからようやくスタートします。

 

 

最原最早の追い求める映画とは?

 

『【映】アムリタ』で、その映画を見た人間を、亡くなった恋人・定本に変えてしまうという映画を平然と作って見せた天才・最原最早。

彼女は数多という役者、それから類まれなる才能を持った人間たちを集め、新たな映画の制作を始めます。

 

ここからはまず、映画の制作に必要な人材を集めるところから始まりますが、徐々に背筋の冷えるようなスリルが漂い始め、最後に驚愕するところが本書の見どころとなっています。

 

ここでは、映画制作に欠かせない人物たちを紹介していきます。

 

 

スーパーハッカー・遠藤⊿、在原露からの情報提供

 

映画を制作するにあたり、お金はどうしても必要です。

しかし、無名の監督の作る映画に大金を提供してくれる人間など、そうそう見つかるわけがありません。

 

そこで最早が情報提供を求めたのが、友人でありスーパーハッカーである遠藤⊿です。

『小説家の作り方』に登場した人物ですが、本書では名前だけの登場です。またハッカーDと表記されることが多いです。

 

そして、ハッカーDの友人であるハッカーAこと在原露。

彼女も『小説家の作り方』の登場人物で、【答えをもつ者】、【answer answer】という頭が痛くなるような通り名を持つ、正真正銘痛い人です。

 

彼女には自分たちが遠藤⊿であるように装って実際に会い、世界一の作家を紹介してもらいます。

しかしその際に、最早が容赦なく彼女の痛さを指摘してしまったため、最後には落ち込んで本名である鈴木友子を名乗り出します。

 

最早の鬼畜さが分かる本書のバラエティー要素です。

 

 

舞面真面&みさきによる資金提供

 

遠藤⊿の情報提供によって、接触することが出来た人物。

それが舞面真面です。

 

彼は『舞面真面とお面の女』の登場人物で、表向きはしがない探偵事務所で働いていますが、実は舞面グループという超巨大企業グループの会長で、その存在を知る人物はほとんどいません。

遠藤がクラッキングして、初めてその存在を知ることが出来ました。

 

真面は最早たちの登場にもさして驚かず、彼女の説明を聞きながら思案します。

 

「これまでの映画が過去のものになる、そんな映画を作る」

退屈していた真面にとって、これ以上ない提案でした。

 

対して、この提案に噛みついたのが舞面みさき。

『舞面真面とお面の女』に登場するお面の女で、実は妖怪の類の彼女。

 

怪しい最早たちに対し、心を読むことができると数多、最早の順番で被っているお面を被せていきますが、最早だけは心を読むことが出来ず、逆にその化け物じみた才能に恐怖して別室に逃げ込んでしまいます。

最早の言う事が嘘ではないと判断した真面は、制作資金として一億円を提供するのでした。

 

桁違いな金額ですが、日本でも屈指の金持ちの彼にとって、大した金額ではないのでしょう。

 

 

紫依代の作る脚本

 

在原露(鈴木友子)から半分脅して紹介してもらった作家。

それが紫依代で、彼女も『小説家の作り方』の登場人物です。

 

最早は紫に映画の脚本を依頼しますが、最初は断られてしまいます。

映画の脚本を書くのも初めてということもあるが、自分の書く文章は誰にも読めないというのが理由です。

 

別室に閉じこもってまで抵抗する紫。

すると、最早は紫の脚本が読めると言って、その一節を諳んじます。

 

それは現実には発声できない、謎の言葉でした。

しかし、それを聞いた途端、紫の態度は一変し、脚本を作ってくれることになりました。

 

作業はあっという間に進み、その脚本を最早が二日で絵コンテにし、準備は整いました。

映画のタイトル。それこそが『2』でした。

 

 

ナタリーという女優

 

映画制作には女優も必要ということで、最早から紹介されたのがナタリー・リルリ・クランペラ。

彼女は最早と学生時代からの知り合いで、以前、最早と映画を撮ったことがあり、しかも最早の夫である二見遭一のことも知っているようでした。

 

『【映】アムリタ』を読んだ人であればここでおや?と感じると思いますが、前作のラストで記憶を消されたはずの二見が、なぜか最早と結婚していたのです。

どういう経緯があったのでしょうね?

 

そして、娘の最中ですが、彼女は『パーフェクトフレンド』に登場していて、最早とは違って至って普通の女の子です。

ただし、この最中こそが本書のカギを握っています。

 

 

藤凰学園での勉強

 

映画撮影に臨む面々ですが、撮影は思うように進みません。

理由は、ナタリーに対して主演男優の数多が格段に劣っているからです。

 

そのため、最早より役者の勉強をしてくるように、と言われ、向かったのが藤凰学園です。

この学園は『死なない生徒殺人事件』の舞台となっています。

 

数多はここで生物教師の伊藤と会い、彼から進化論などの授業を受けます。

映画制作を抜きにしても、この講義が個人的にはとても好きでした。

 

こういう先生に教えてもらっていたら、自分は生物がもっと好きになっていたのにと思わずにはいられませんでした。

そして、噂の死なない生徒から最早が教えてもらったこと。

 

伏せられていますが、『完全な子育ての仕方』だと後で分かります。

 

 

 

『2』の完成とその意図

 

こうして『2』は完成しました。

しかし、真面は最早の思惑に半分ではありますが気づいてしまいました。

 

最早が『2』を制作した理由。

それは『1』に見せるため、いわば『1』のために作った映画でした。

 

そして、その『1』とは娘である最中です

最早は創作を進化させるために、人を感動させるために極限まで進化した映画『2』、そして創作に感動するために極限まで進化させた『1』こと最中、この二つを引き合わせようとしていたのです。

 

この行為が危険だと判断した真面、みさきによって最中は殺されかけます。

しかし、みさきが殺そうとした相手は最中の友人である理桜でした。

 

最早にとってこの事態も想定の範囲内で、最中はすでに別の劇場で『2』の上映を見終えていて、結果として彼女は『天使』になりました。

そして、最初の劇場に戻ると、そこには死んだ最早の首が転がっていました。

 

 

最早が次に目指す映画とは?

 

ところが、物語はまだ終わりません。

天使となった最中だから分かった事実。

 

なんど、数多一人とは、二見遭一が演じていた男だったのです。

『2』を制作するにあたり、真面を警戒して、あえて最早と無関係であることを証明するために数多を演じていました。

 

しかも、ただ演じたわけではありません。

みさきに心を読まれないために、心の中まで演じていたのです。

 

そして、真面は事件が終わったと勘違いしていますが、実は『2』には先がありました。

なんと、死んだ最早は最早ではなく、映画によって最早の人格を植え付けられた死なない生徒だったのです。

 

そして、『パンドラ』の作家・御島鋳。

彼女こそが最原最早その人だったのです。

 

最早は、初めから神様を作るのに失敗すれば、天使が出来ると分かっていたのです。

そして、最早はそれに成功し、神様を作りました。それが、最中の兄である最後。

 

最早一人で神様を作り。

二見を始め優秀な人間が総動員して天使を作る。

 

最も効率の良い方法で神様と天使を作った最早が目指すもの。

それは『神様と天使の映画』を撮ることでした。

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。

どんでん返しが何度も起こる超展開。

 

天才と呼ぶにふさわしいその考えに、脱帽するばかりでした。

創作の先を見せ、さらにその先を予感させるラスト。

 

おそらくこの先は描かれることはないでしょう。

それこそもう人智の及ぶ範囲ではないのですから。

 

まさに衝撃的の一言。

どれだけ言葉にしたところでその衝撃は伝わりませんので、ぜひ本書を読んで体感してください。

 

後悔はさせません。

 

2 (メディアワークス文庫)

2 (メディアワークス文庫)

 

 

 

 

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