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書評書いてます。年間100冊の紹介が目標。好きなジャンルはミステリー、恋愛、青春。

死ぬことの怖さ『心中探偵 蜜約または闇夜の解釈』ネタバレ感想 森昌磨【著】

心中探偵 蜜約または闇夜の解釈 (幻冬舎文庫)

 

死にたい。でも一人じゃ死ねない―。並外れた美貌と知性を兼ね備えながらも心中を渇望する華影忍が理想の女性と巡り会い、遂には闇夜に服毒心中を敢行。だが翌朝、自分だけ目覚め、死んだ相手は見知らぬ財閥の令嬢に成り代わっていた…。殺人疑惑がかけられる中、忍は盟友の若き大学教授、通称“黒猫”の助けも借りて事件の真相を探り始める。

【「BOOK」データベースより】

 

 

 

『黒猫』シリーズでお馴染みの森昌磨さんが描く、これまた魅力的なキャラクターノベル。

読み終えてから知ったのですが、主人公の華影忍はすでに他作品に出演していて、その後の話にあたるそうです。

 

四季彩のサロメまたは背徳の省察

四季彩のサロメまたは背徳の省察

 

 

単行本でしか発売されていないということで、僕が手にするのはいつになるのやら…。

気になります。

 

しかし、本作単体でも面白いです。

いや、かなり面白いです。

 

早速その魅力をご紹介したいと思います。

 

 

 

 

魅力的なキャラクター

 

森さんの作品は本作に限らず、登場するキャラクターたちの魅力が持ち味の一つになっています。

 

並外れた美貌と知性、絶対的な地位を手にしながらも、死を望む主人公の華影忍。

中学生の頃から忍に惚れて結婚したにも関わらず、ないがしろにされ、しかし最後には求められてそれを許す道子。

活字に憑りつかれ、プライベートを置き去りにした、しかし道子に惚れている忍の担当編集者、溝渕。

 

一見、忍の身勝手さが目立ちますが、時折、忍でさえ驚くほどの行動力を見せつける溝渕は、なるべくして忍の担当になったような気がします。

彼がいれば、忍はなんだかんだいって生を選ぶし、小説を書き続けて、いずれは大物になるかもしれません。

 

また、妻の道子ですが、彼女も覚悟が決まり過ぎていて、これ以上忍に似合う女性はいません。

どんな扱いをされようが、愛されなくても自分は忍を愛すると決めた強さと、忍がいなくなることを怯える弱さが、危ういバランスで均衡を保っていて、いつか忍と補完しあって本当の幸せを見つけてほしいなと切に願っています。

 

 

 

黒猫と付き人が登場

 

『黒猫』シリーズでお馴染みの、黒猫と付き人も登場します。

黒猫は忍の高校時代の後輩で、今回の事件の捜査に協力しますが、黒猫らしいというか、皮肉の利いた話し方に逆に安心を覚えました。

 

しかし、忍も彼の過去を知っているだけあって、いつも付き人にしているような上から目線はさせてもらえません。

いつになっても、先輩と後輩は変わらないということですね。

 

あと付き人と遭遇した忍は、彼女が自分になびかないことを理解しながらもちょっかいを出すシーンは、思わず逃げてー! と叫びたくなりました。

忍が事件のことで頭がいっぱいで良かったです。

 

 

叙述トリック

 

詳しいネタバレは避けますが、これにはしてやられました。

忍の視点から得た情報が、全てを説明しているとは限りません。当たり前のものとして、あえて記述していないこともあります。

 

そこに今回の事件のカギがありました。

 

「なかなか寝顔はかわいかったですよ。ごきげんよう」(p.141)

 

ボディガードで物腰が柔らかいのは分かりますが、この部分だけがどうしてもひっかっていました。

僕の感覚も捨てたものでもなかったようです。

 

真相は、ぜひ本書を読んで確かめてください。

 

 

死とはなんなのか

 

忍は生きることに執着がなく、死を望んでいますが、果たしてそうなんでしょうか?

拒否の言葉とは裏腹に、最後には道子を求めてしまう心にこそ、忍の本心が隠されているのかもしれません。

 

そして、最後に見せつけられる、死の本当の恐怖。

予想を裏切る結末に、あなたは戦慄するはずです。

 

 

最後に

 

いかがだったでしょうか。

『黒猫』シリーズなど、森さんの作品に触れたことがあるという方も、そうでない方にもおすすめできる作品です。

 

少しでも気になったという方は、ぜひ本書を手にして、読んでみてください。

 

 

 

森さんの作品が気になる方はこちらもどうぞ。

(シリーズものの途中なので、読み始めるなら一巻からお読みください)

 

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