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衝撃の問題作をネタバレ解説!『人間の顔は食べづらい』白井智之【著】

 

人間の顔は食べづらい (角川文庫)

 

 

 

 

 

今回ご紹介する本は、白井智之さんの「人間の顔は食べづらい」です。

どうですか、このタイトル。日暮里の駅中の本屋さんで見つけた瞬間に手にとっていました笑

 

帯に書いてある「横溝正史ミステリ大賞史上最大の問題作」に偽りなしです。

いや、全部を読んだわけではないので言い過ぎなのは分かっていますが、それくらい外見も中身も衝撃的でした。

 

グロテスクな表現が苦手な方は注意が必要です。

書きたいことはたくさんありますが、まずはあらすじを。

 

 

【「BOOK」データベースより】

 

「お客さんに届くのは『首なし死体』ってわけ」。安全な食料の確保のため、“食用クローン人間”が育てられている日本。クローン施設で働く和志は、育てた人間の首を切り落として発送する業務に就いていた。ある日、首なしで出荷したはずのクローン人間の商品ケースから、生首が発見される事件が起きて——。異形の世界で展開される、ロジカルな推理劇の行方は!? 横溝史上最大の“問題作”、禁断の文庫化! 解説・道尾秀介

 

 

かなり奇抜な設定ですが、決してあり得ないとは言い切れない時代になってきています。

ニュースなどでよく耳にするIPS細胞によって様々な臓器の生成が期待されていて、いくつかの臓器では実験レベルですがすでに成功しているものもあります。

 

ただし、IPS細胞で自分のクローンが作れるわけではありません。

それでも人以外でクローンを作ったなんて話も聞きますし、未来へのかすかな不安を抱きながら読み進めました。

 

するとそんな不安はあっという間に吹き飛び、やけにリアリティのあるグロテスクなシーンの数々、常軌を逸した登場人物たちから目が離せなくなっていました。

タイトルで目を引いて中身は大したことないのでは? という疑いもありましたが、その心配はありませんでした。

 

詳しいネタバレはこの後にしますが、僕は柴田和志の仕事である育てたクローン人間の首を切り落として発送する、という内容に思わず考え込んでしまいました。

クローンとはいえ人間の命を奪うことに抵抗を覚えるのはもちろんですが、じゃあ牛や豚なら平気か? と聞かれると、それすらも僕には出来る気がしませんでした。

 

しかし、そういった誰もが嫌がることを仕事としてやってくれる人がいるからこそ、僕らは安全でおいしい食べ物を当たり前のように買うことが出来るのかと思うと、感謝の気持ちしかありません。

 

本の感想からはずれてしまいましたが、以下ネタバレです。

未読の方はご注意を!!

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結論から言うと、トリックの核は『入れ替わり』でした。

ある程度予想がついていたというのと、ちょっとご都合主義な感じもしたので大満足とはいきませんが、ミステリとしてしっかりと成り立っている点は非常に良かったと思います。

 

大物政治家である冨士山博巳の元に送られてきた自分のクローンの首なし死体と、本来送られてくるはずのないクローンの首。

このトリックをプラナリアセンターの発送部で働く和志になすりつけるために、以下の入れ替わりが行われていました。

 

 

柴田和志↔チャー坊(柴田和志のクローン)

 

冨士山博巳↔冨士山博巳のクローン

 

 

加えて風俗嬢である河内ゐのりの名前は、「守銭奴」という十年以上前に活動停止したノイズユニットの女性メンバーの名前からとられている。

これが伏線になっていることにもっと早く気が付くべきでした。

 

この物語は視点が入れ替わりながら進んでいきますが、本物とクローンが入れ替わりを整理すると以下の通り。

 

 

 

一 河内ゐのり

 

ホテルにいたのはチャー坊。見た目よりかなり若いと言っているのが伏線。実際は培養されて急速に成長しているので、実年齢はかなり低い。

 

二 柴田和志

 

三 河内ゐのり

 

ホテルにいたのは冨士山博巳のクローン。というか、本物は幕間くらいにしか登場していない。

 

四 柴田和志

 

五 河内ゐのり

 

六 柴田和志

 

七 柴田和志

 

会ったのは冨士山博巳のクローン

 

八 河内ゐのり

 

会ったのはチャー坊。本物同様、チャー坊も人格を使い分けているが、それは精神が未発達で、かつ読んだ本の登場人物の人格を取り入れているため。またゐのりの誘いを断ったのは、本物の和志が家に帰るまでに戻る必要があったから。また牧畜化は死ねという発言は、本物の和志に向けられた言葉。

 

九 柴田和志

 

和志を殴ったのは冨士山博巳のクローン。

 

十 河内ゐのり

 

会っているのはチャー坊。ゐのりから人間の肉を食べていることを告げられた時、同じクローンを食べてしまったことに耐えられず吐いたと推測される。

 

十一 柴田和志

 

ゐのりがすぐセックスしちゃう仲と発言しているが、風俗嬢のゐのりはチャー坊とはまだしていない。よって、この発言は出てこないため、おそらく「守銭奴」の本物の河内ゐのりだと推測される。

 

十二 河内ゐのり

 

チャー坊が秘密を隠していることに気が付いているが、本物の柴田和志のクローンだとは思ってもいない。

 

十三 柴田和志

 

十四 関係なし

 

十五 河内ゐのり

 

指名手配された本物の柴田和志の写真とチャー坊の顔が違うことに不信感を抱く。電話の相手はチャー坊。また柴田和志は無実だと断言しているが、これは本物のことを言っている?

 

十六 柴田和志

 

本物の和志が呼ぼうとしているのは、「守銭奴」の河内ゐのり。

 

十七 河内ゐのり

 

十八 柴田和志

 

前の章がミスリードになっていて、十七は風俗嬢のゐのりだが、十八に出てきて鉄パイプで殴られるのは「守銭奴」のゐのり。

 

十九 柴田和志

 

ここで本物の和志がいう河内ゐのりが、「守銭奴」の河内ゐのりだとカミングアウトされる。

 

二十 河内ゐのり

 

 

エピローグでチャー坊(レイ)と冨士山博巳のクローンから事件の真相が説明されているため、その部分は省略します。

最初はもっと入り組んでいるのかと考えましたが、しっかり読み込むと各章の視点は全て本物と風俗嬢のゐのりのものでした。

 

こういった事実を知った上で読み返すと、真相がより見えて面白いと思います。

読者をミスリードさせるために風俗嬢のゐのりと「守銭奴」のゐのりの設定が酷似しているのがアンフェアな気もしますが、それなりに納得のできる結末でした。

 

いかがでしょうか。

もし未読にもかかわらずここまでネタバレを読んでしまった方も、ぜひ一度読んでみてください。巧妙なミスリードに感心するはずです。

 

ただし、グロテスクな表現が苦手方はお控えください。

 

 

人間の顔は食べづらい (角川文庫)

人間の顔は食べづらい (角川文庫)